表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/387

14.職業

 再びログイン。


「おはよう」

「丑三つ時は朝なのか?」

「寝ておきたからには朝だろう」

「おはよー」

ゲーム進行的にはいいのだけれど、三時間しか寝ないのはやはり調子が狂う気がする。


 宿で早いどころか夜食かもしれない朝食を食べながら装備を新しくするか否か相談。

 あと2レベルということでこのままゆくことになった。

 

 本日はナッツの入ったパンと焼きトマト、マッシュポテト、厚切りベーコン、サラダ、オレンジと牛乳だ。この辺の料理なら出来るようになっている、評価4以上ならこれよりも旨いはず。

 だがしかし、宿が用意してくれた料理って三割り増しよく見えるよな!



 そして現在、フィールドボスと戦っている。

 真っ赤な、牙が四本ある体高が三メートル以上ありそうなイノシシ、チョトツの王だ。

 森の黒オオカミの場所で夜の狩りをしていたら予想外のエンカウント。このボスはファストの街のフィールド全体を巡回している。盾はともかく他は装備新しくしとけばよかった!


「宿ボーナス付きだし頑張れ」

物欲を糧に耐えろと言いながらお茶漬が回復してくる。レオの治癒の回復量がまだ少ないのと私が柔らかいせいでお茶漬も回復に回らざるを得ないのだ、あと時々全体攻撃がある。

 こう、剣士固有スキル無視して強化系取りまくってました、すみません。


「本職の方で会いたかったぜ!」

慌てたのか開戦直後に私に『ファイアランス』をぶち当てた前科一犯のシンが呪文の枕詞のように泣き言を叫びながら魔法を放つ。


 火魔術だけを上げているため、火に限れば私よりレベルが高いシンが今のダメージディーラーだ。が、スライムほどじゃないがどう見ても火に耐性あるぞ、コイツ!


 ペテロは満遍なく上げているため色々使えるが威力は低い。

 シーフは背後から当てるとダメージが増えるスキルか補助スキルが多く、菊姫は正面から受ける職に戻ることを想定しているため背後からの攻撃に補正がかかるものは取っていない。


 そうです、火力が足りないのだ! なのにお茶漬が攻撃に加われない、加わったとしてもコンボを繋げる前に回復に回らざるを得ない。


 チョトツの王が両方の前足を振りかぶり、地面に勢いよく叩きつける、全体攻撃のスタンプだ。

「あああ゛、全体回復欲しいいいい!」

レオが頑張って回復を配っている。

 全体攻撃二回食らうと元剣士でHPもVITも高い菊姫以外が沈み兼ねないので、レオはずっと回復魔法を唱え続け、お茶漬が他の攻撃も受けている私を回復する。

 MP回復薬無くなったら詰む感じがそこはかとなくする。


「せめて回復量もっと欲しいいいい!」

一回かけてもフルにならないから手数で頑張らねばならないのだ。かわりにMP消費も低いみたいだが。


「『鉄球』! 回復効果ってMID依存ですよ、元シーフに厳しい」

「回復~これ、ステ振りぬいても始まりが治癒士か拳士かで同じモンクでも大分違うのになるね」

「私も未だHPよりMPのほうが大分多い、ステにVIT振ってないのもあるが!っつ!!」

話しながらチョトツの王の牙を受け流す。


「いい加減にちね!!!!」

菊姫が怒りのクリティカルを出してチョトツの王は漸く沈んだ。


《チョトツの王の肉×4を手に入れました》

《チョトツの王の牙×2を手に入れました》

《チョトツの王の皮×4を手に入れました》

《チョトツの王の魔石を手に入れました》

《力の指輪を手に入れました》


「終わったでち〜」

「もう拳士に戻る~~!」

「魔力の指輪が」

「私は力の指輪だった」

「装備落とすんだな、オレは精神の指輪だ!」

「わたちは、俊敏の指輪でし」

「僕も力の指輪。ボスは装備落とすってさ」

「俺も知力」

「その職で使うステのがでてるっぽいね」


 指輪交換するかと言う話もでたが、低いステータスを補うのもいいし最初のボス撃破記念にそのまま持つことにした。

 そして気になったので、菊姫に現在――レベル23だ――のHPを聞くとステ振りSTRとVIT同じくらいで817という答え。それでも種族エルフのせいで多いほうではないそうだ。レベル20のころは700にとどかないくらいだったかな、とのこと。


「神殿か〜」

「移動だ〜」

太陽が昇り朝日が照りつける中、街へと帰還した。

 取り敢えず戻ると荷物整理を兼ねてギルドに行くのは定番だ。夜の森の中は黒オオカミ大量発生だったので20レベルくらいまでの経験値稼ぎなら森がやはり効率よさそうだ。1000回は遠いと思っていた依頼報告もクリア、ランクもDに上がった。



「転職したら寝る〜ねみぃ〜」

「おー!」


 剣術がレベル5になった時に職業に魔法剣士がでたのでレベル20の要件を満たした時に、迷わず選んで無事魔法剣士になった。

 レベル20以降は5レベル上がるごとに転職できるようになるが、戦闘スキルの取得にかかるポイントは最初の二職、もしくは一職の系統以外は一律5SPとなる。

 レベル20前に治癒士についたことがあれば、【毒治癒】を取るとSP1で済むのだが、20以降に治癒士になって取得しようとするとSP5かかるのだ。そのうち強いスキルが出てきたらSP20とかかかるのかもしれんが今の所5SPである。


私→魔法剣士

お茶漬→聖法士

菊姫→戦士

シン→魔拳士

ペテロ→密偵

レオ→密偵


 お茶漬はモンクになるのかと思っていたら拳士は遊びで時々やるだけだそうで回復職メインで行くそうだ。拳士系のスキルでチャクラのようなHPMPの回復スキルが出ないか期待しているらしい。聖法士は神殿とはあまり関係なく治癒魔法を使う職で神殿と関わる職としては神官がでていたそうな。

 ペテロは密偵、忍者あるなら多分そっち方面だろうとのこと。

 レオは足が速いから、だそうだ。忍者になれるからじゃないのか貴様。多分忍者が職業にあるなら一番足は速そうなので当初の希望通り最終的には忍者になるのだろう。

 二人とも違う意味で当初の希望職忘れてそうだが。


「う~ん、拳士のスキルも取ろうかな」

「忍者なら体術もできたほうがかっこいいかもな」

悩ましげなペテロの声に返事を返す。

「これからは本格的にスキルポイント足らなくなるぜ!」

「あ~、僕も魔術とっとこうかな」

「お茶漬もけっこう蛇行してるな」

「色々な職だせって方針みたいだからこのゲーム」

「ステータスといい最初についた職ほど途中経過重要じゃないよね。同じ職業してても個人で違った特色でそうだ」

「じゃあ私も何かとろうかな」

お茶漬とペテロの言葉に揺らぐ私。


「特化もいいけど、いろいろ出来たほうが楽しいよね」

「特化は強いんだろうけどソロ辛そうだ」

「複合は複合でスキルのレベル上げツライよ」



「さて、オレは宿屋行くぜ!」

「わたちも〜」

「おー!お疲れ。オレは神殿の謎解きついでに中庭行ってみて寝るわ」

「おやすみ」


「取り敢えず戦闘疲れたし、僕もまったり生産とかしてくる」

まったりと言いつつ何時も効率重視の生産をするお茶漬だ。

「私も盗賊(シーフ)ギルド探してくる」

「行ってらっしゃい、頑張れ」


 さて私は何をしよう? 探すと云えば露天の老人を探さねば。

 東門近くの路地だったか。工匠区にはそれらしい店は無かったから、あるとしたら東西大通りより南側だろう。

 シンを神殿に残しお茶漬とペテロと別れて東西通りを歩く。馬車には乗らぬ!



 白を呼び出そうとしてメニューを見るとチーズと燻製卵、乾き物2つが出来上がっていた、取り出して次を仕込む。覚えたのは【燻煙】【乾燥】、【醸造】も発酵の仲間なんじゃないだろうかとおもわんでもない。 

 白はちょっと落ち着いてから紹介しようと思う、あんまりうるさくすると神殿に帰られそうだ。


「白、何で戦闘態勢なんだ」

そんなに嫌だったのか?!

「むしろ何故戦闘中でないのじゃ!」

白が周りを見て状況を把握すると戦闘態勢を解いた。


『思わず普通に話しかけた。なんだ、戦闘中だと思ったのか』

手を差し出すと腕を伝って肩に乗ってくる。体重はほぼ感じない、浮けるしな。

『我を召喚していられる時間は限られておるのじゃ、戦闘時に効率よく呼び出すのが普通であろうが!』

ぷりぷり文句を言ってくる白。

『戦闘中ではゆっくり出来ないだろうに』

『ゆっくりするために呼び出す馬鹿はおらんのじゃ』

白と掛け合いながら歩く。MPが徐々に減ってゆくが戦闘中でなければ気にするほどでもない。


 目的の区画にたどり着くと表通りに面した建物の裏に小さな公園があるのを見つけベンチで一休み。自分と白の分の紅茶を出して飲む。飲食した後始末を考えないでいいのは本当に楽だ。


 カップに顔を突っ込んでいる白を見ながら調薬でMPポーションつくらねば、と思う。戦闘中より街中であれば呼び出し時間は長くなるが、呼び出し中MPが減って行くのは変わらない。安く手に入るに越したことはないのだ。

 あとはワインができたら、紅茶用にブランデーが出来ないか試そう。


『白、何処か行きたいところはあるか?』

『なんじゃ、目的なく歩いておったのか』

カップから顔を上げた白を軽く撫でる。

『いや、古本屋を探しに来たんだが、急がんからな。久しぶりに神殿の外に出たんだろう? 行きたい所があるなら行ける範囲で連れてゆくぞ』

『我が外におったころにはココに街なぞなかったのじゃ、街の散歩でいい。じゃが人が多すぎるのも鬱陶しい、この辺りが丁度いいのじゃ』

どうやら古本屋探しにつきあってくれるようだ。

『ありがとう、じゃあ探しながらこの辺歩こうか』


 白が飲み終えたのを確認して立ち上がると、また手を伝って肩まで来た。右胸にしっぽ、左肩に頭、触り心地抜群の襟巻きだ。

 白と家屋から下がっている木製や鉄製の看板の意匠について話したりしながら歩く。


『変なものに興味を持つのぅ』

私にとってはヨーロッパあたりの古い町並みや看板なのだが、この世界では普通の町並み、看板なのだろう。コンビニの看板デザインに関して話しているような感覚なのだろうか、だったら確かに微妙だな。


 地図に表示されていない路地に入っては地図を詳細に(マッピング)してゆく。ここは住居が大部分で時々布と糸を扱う店、煙草屋、ポーションではない薬屋、シャベルや鋤簾、花鋏を扱う店、雑貨を扱う店など住人が普通の生活に使う用を足す店があるようだ。店や住居の幅は広場の店の五分の一もないだろう。城壁内の家らしく狭く上に伸びてひしめきあっている。


『白のブラシなんかも買わなくては』

そういえばまだ夜着も買っていない、いい加減買わなくては。

雑貨屋の前で良さそうなブラシを見つけた私は白に好みを聞いてみた。

『いらぬ! ブラシなぞ使ったことがないのじゃ』

とのことだったので適当に私が良さそうなのを選んで購入。

 他に白い柔らかい布でできた浴衣の様な構造の服をパジャマがわりに、手拭きを数枚ハンカチがわりに購入した。


『あとは宿屋用にサンダルみたいなのが欲しいな』

『そろそろ時間なのじゃ』

『おや、じゃあまた後で』

『さらばじゃ』

白が姿を消すと途端に首元が寂しくなる。


 シンは謎を解けただろうか、謎があると分かっていれば広間の聖句で拝殿を廻る順番が謎だと簡単に気づくだろう。その後はどうか?



 暫くするとやっているのかやっていないのかわからない古本屋を見つけた。扉の三倍の幅しかないような小さな店で看板も出ていない。ただ風通しのためか扉が開いており、中を覗いてそうと気がついたのだ。


「邪魔をする」

声をかけて中に入る、入ってすぐのディスプレイ用だと思われる棚には何も無かったが、入り口から1メートル程から左右と中央は天井まである書棚になっておりぎっしりと本が詰まっていた。

 書棚の本のタイトルは文字は読めないのに何と書いてあるか理解ができる、とても不思議だ。理解したタイトルを日本語で口に出せばここの住人にはここの言葉で聞こえるに違いない。

 まあ、このファンタジーな世界で「農業のススメ」とか日本語で書いてあっても確かに微妙だが。



「来たか」

「ええ」

奥のカウンターには露店で会った老人が本を片手にパイプを燻らせていた

「ここの本は立ち読みしても?」

「構わんよ、汚したら買い取って貰うがな」

「分かった」


さて、どんな物が有るのか。



「……ここには魔術関連もスキル関連も書物は豊富なんだがな」

「ああ、沢山あったな」

私が買いたい本を差し出すと納得いかなそうな顔で受け取り裏返して値段の確認をしている。

「200シルだ」


 支払いを済ませ『食べられる木の実・野草の見分け方』を受け取る。ベリーの様に採取ポイントとして見分けられないものがある、学習しておきたいところだ。購入すると植物食物図鑑に鑑定したことのない食べられる果物や野草が増えた。

 図鑑に増えた項目は見なくても自分の知識から「思い出せる」ようになる。なんとも便利な機能だ。そして本を買うことによって追加されてゆくなら、金ができたら歴史書や魔法書という名の設定資料を集めるのもいいだろう。きっと鑑定が詳細になる、はず。

 

 地図があるとよかったのだが、本とは扱いが違うのか見当たらず、本に書かれた不明瞭な小さな絵図を見たに過ぎない。それでも自分が居る国がジアースという名の国であり、海に面して首都を構え別な大陸のドワーフと貿易をして国益を上げているため、人族の国の割りに鍛冶が盛んなこと、他に魔法都市国家アイル、迷宮都市バロンがこの大陸に在ることがわかった。この辺りの国勢に関する本も集めたいところだ。



 先ほどの立ち読みで、神々が司る属性と月も分かった。やはり生まれ月に四月を選んだため水属性と相性が良かった様だ。

 色々欲しいとは思うが先ず装備を揃えねばならない。かなり長居したけれど特に止められなかったし、また立ち読みにこよう。メニューに増えなくても自力で覚える手もある。魔法書などは高いが値段の安いもので欲しい本もある、通うとしよう。


 老人に挨拶してでたが、売買を終えたあとはすでにパイプをやりながら本を読み始めておりこちらを見ようともしなかった。



□    □    □    □    □    

・増・

レベル+2

スキル

【器用強化】

得意料理

【燻煙】【乾燥】

□    □    □    □    □ 


ホムラ Lv.20

Rank D

職業  魔法剣士 薬士

HP  527

MP  687

STR 31

VIT 21

INT 41

MID 15

DEX 12

AGI 19

LUK 11


NPCP 【ガラハド】【-】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

■神々の祝福

【ヴァルの祝福】


スキル(2SP)

■魔術・魔法

【木魔術Lv.2】【火魔術Lv.5】【土魔術Lv.2】

【金魔術Lv.3】【水魔術Lv.3】【☆風魔法Lv.2】

【光魔術Lv.1】【闇魔術Lv.1】

■剣術

【剣術Lv.7】【スラッシュ】

■召喚

【白Lv.1】

■精霊術

 ー

■才能系

【体術】

■生産

【調合Lv.1】【錬金調合Lv.1】【料理Lv.3】

■収集

【採取】

■鑑定・隠蔽

【道具薬品鑑定Lv.3】【植物食物鑑定Lv.3】

【動物魔物鑑定Lv.3】【スキル鑑定Lv.2】

【武器防具鑑定Lv.2】

【気配察知Lv.3】【気配希釈Lv.3】

■強化

【腕力強化Lv.2】【知力強化Lv.4】【精神強化Lv.2】

【器用強化Lv.1】【俊敏強化Lv.2】

【剣術強化Lv.3】【魔術強化Lv.1】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】【暗視】【地図】【念話】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ