151.アリス
すかり指輪解放を忘れていたので書き足しています。
申し訳ございませんが戦闘部分を読み直していただけると助かります。
ペテロ側の『トランプ』に居た『白ウサギ』を追い、フラスコに落ち、私の『チェシャ猫』で入手した『白ウサギの懐中時計』で時を止められている『アリス』を動かす。
フラスコの中央に立つ、光を吸い込む真っ黒なオベリスク。懐中時計と同じ形の穴にはめ込めば、懐中時計の針がすごいスピードで回り出す。
『わたしを起こすのは だあれ?』
『わたしの握る白いローブ』
『わたしを撫でる長い指先』
『幸せな記憶 悲しい記憶』
『揺り起こすのは だあれ?』
声が響いたかと思えば、オベリスクから少女がゆっくりと染み出すように浮かび出てくる。
まずは顔、小さな白い顔。次に胸にかかる明るい金髪、ブルーのワンピースに白いエプロンドレス。
「アリスですね」
「アリスだな」
「私、役に立たないからね?」
「またまた。闇を纏うモノの王が何をおっしゃる」
「条件満たせば成れるものだし。ここの道中逃げまくりですよ?」
「私も道中すっ飛ばしたぞ」
白に埋もれる道中、至福でした。
「中ボスもホムラが来なかったら、削られて負けてたと思うよ? あとついでに普通レイドって聞いて二人で来ることを思いつくの自体変だから自重しる」
「来られたんだから無問題だろう?」
話している間にアリスがオベリスクから完全に抜け出した。
『アナタの時も 止めてあげる』
瞳は透き通ったブルー、いや、赤に変わった。
途端に降り注ぐ水が鏡のような池を作ると、水が盛り上がりネズミを中心とした様々な動物を形作り始める。
「浸かってるとやばいのかな?」
念のためペテロに『浮遊』。私は常時浮いてます。
「その分『アリス』の回復があるっぽいね?」
「なんか微妙な量だな」
会話を交わしながら攻撃を加える。
動物たちはろくに何もしてこず、周囲を動き回っているのだが、接触したとたん爆発し、近くにある動物も巻き込み誘爆の連鎖を起こす。しかも増えてくるので『アリス』を巻き込みつつ、離れた動物に魔法を放てば、鏡のような池が放った魔法の色に一瞬変わって同じ魔法が返ってくる。
「すまん!」
慌ててペテロを『回復』。
「範囲だめなのかな? それに関係ないところでも爆発してるね。プレイヤーの他に、猫の形のと接触すると爆発するみたい?」
「なるほど」
相変わらず状況判断早いな、と思いつつ猫の形のものを狙って単体魔法を放つ。どうやら遠くの猫に攻撃を当てて誘爆させて数を減らすのが正解っぽい。
「あとは避けるしかないかな」
上から降ってくるお菓子の雨。
こちらも降らしてくる菓子の種類によって酷い状態異常がつく。【沈黙】を食らって焦った、何か対策を探さないと。
中ボスだった、顔と手足がついたトランプが降ってきて攻撃を仕掛けてそのまま消えていったり。
チェシャ猫が『アリス』と私、『アリス』とペテロの場所を頻繁に入れ替えてゆく。まあ、二人しかいないのでチェシャ猫が現れた時点で、入れ替わった対象の行動がキャンセルされるので、攻撃対象を『アリス』からお互いに変えたり、回復対象を『アリス』にするだけで済んでしまったが。
『アリス』が白いバラの花びらや赤いバラの花びらを降らすと、花びらが降っている間、またHPやMPが微妙に減り、『アリス』が微妙に回復をする。
「どうにも微妙なスキルで気持ち悪い」
ペテロが首をひねる。
「あ、これ『幻想魔法』だ」
「『幻想魔法』?」
「使う対象が多いほど効果が高い超広範囲魔法」
「二人レイドの弊害か!」
ペテロの語尾にwwwが見える。
「魔法で奪う対象が十二人で、回復対象が『アリス』一人なら結構な量が回復してたかもな」
後で『アリス』は奪う対象が多いほど奪う量が多くなる『幻想魔法に特化』したような称号持ちであることが発覚。後続のフルパーティーは『フラスコの中の少女』に結構な苦戦を強いられることになる。
「何かファイナルアタック的な攻撃が来る前に指輪解放しとくか?」
「鬼畜! ぜひお願いします」
どっちもどっちな二人である。
「『来い! 我が剣 我が盾! 我が影よ!』」
登録したセリフを叫べば、伸ばした腕のさらに指の先、指輪が青白く光る。
隣に居たはずのペテロの姿が消え、私の眼前に黒い霧が現れ、ペテロの背中がかすかに見える。
「『主が呼び声に答えるは闇を纏うモノ…… 我が身主の盾なり 我が身主の剣なり 我が身あくまで影なり!』すみません剣と盾の順番間違いました!」
首に巻いた布と霧を払ってペテロ登場。私に背中を向けているのは戦闘中に呼び出すと敵と正対するからだ。
「笑う」
セリフの間違いもそうだが、隣から消えてすぐさま前に現れたのがもうダメだ。笑う。
「後で直しとく。でもまあいい感じ?」
「そういえば"闇を纏うモノ"は出してよかったのか?」
笑いをこらえながら、【縮地】を使い、アリスに【幻影ノ刀】。【グランドクロス・刀剣】も使いたいのだが、【縮地】直後はEPが戻らず使えない。EPが戻るまで待つのでは【縮地】の意味がない。
「『暗殺者の矜恃』使ってる時点でバレるせいか、呼び出されてる間は解禁ですよ」
「すごい、INTとMP足りた」
「なんだ?」
アリスの攻撃を避けながら、呼び出し後のステータスを確認していたらしいペテロが言う。
「『守るべき者、我が背にあり。契約により畏き竜の影を借りる! 我呼ぶ幻影は青竜ナルン!』」
ペテロが召喚呪文っぽいものを叫ぶと私とペテロの指輪が光となって二人の中間で合わさり、質量を持って膨れ上がる。
「うをう! ぷるぷる竜召喚か!」
「幻影ですが」
《ソロ初討伐称号【幻想に住む者】を手に入れました》
《『永遠の少女アリス』を各パーティ一1人の最少人数で初討伐しました》
《なお、この情報は秘匿されます》
……二人旅には温かったです。いや、ぷるぷる竜さんが吐いて帰った魔法ブレス強かった。
「ソロ討伐」
やっぱりペテロの語尾にwwwが見える。
「二人なのにソロとはこれいかに」
「【幻想に住む者】か〜、強化されるようなスキルもってないや。【毒魔法】とればよかったな」
「今から取得がんばれ」
「探すか」
二人で話していると、倒したときにとびちった光の粒が再び集まり、アナウンスが始まる。
『アリスを止めた』
『独りで凍えた少女』
『永遠を眠るアリス』
『再び眠りにつくには時が必要』
『『フラスコ』はここから動かせない』
『アリスは自由』
『また眠りにつくまで連れて行って』
鏡の池が砕け散り宙に水滴が浮く中、ふわふわとアリスが横たわっている。
ふわふわと揺れているアリスがそのままブレ、二体に分かれる。
「『永遠の少女アリス』は仲間になりたそうにこっちを見ている」
「そのネタの前に、スプーン咥えているヴェルナにプリンをあげなさい」
珍しくネタを言ったらペテロに軽くいなされた。
とりあえずヴェルナにプリンを納品。
「ん。アリス仲良く半分」
「『フラスコ』も無いし弱い」
「でもきっと育つ」
「封印は『フラスコ』が嵌って安定してる」
「連れて行けば役に立つ」
そう言い残してプリンを抱えたヴェルナが消える。
《『永遠の少女アリス1/2』を取得しました》
《新たな名前をつけてください》
「『アリス』じゃないのか」
「普通十二体想定でしょ、『アリス』だらけで混乱するよ」
「確かに。だが私、お子様そんなに好きじゃないんだが……。四六時中束縛されるのも勘弁願いたいし」
「ここまで来たら諦める。誘ったのはホムラでしょ、下見だったけど。それに調教すれば大丈夫」
「調教……」
「違った教育」
笑顔のペテロをじと目で見る。
「じゃあ『アリス=リデル』で」
「私は『A.L.I.C.E』で」
「そこで自キャラの名前登場か」
「ふっ」
ペテロと初めてゲームで会った時、『A.L.I.C.E』という名で魔法少女をやっていた。語尾が「にゃん」で魔法と言いつつ二丁拳銃ぶっぱなしてたが……懐かしい思い出である。
「にいさま」
ペテロにアリス改め『A.L.I.C.E』が抱きつく。
「"にいさま"、さすがペテロのアリス、妹属性まで完備か!」
「冤罪だ!」
「とうさま」
私にアリス改め『アリス=リデル』が抱きつく。
「ぶっ! まて誰が父かッ!」
「はははははは!!!!」
【幻想に住む者】は広範囲スキル使用時、対象人数が多いほど効果をアップするという称号で、『アリス』が持っていた称号がスライドしたらしい。弱体化したせいか『アリス=リデル』からは消えている。ペテロの方も同様だ。
ステータスを確認すると、全体的に高めなステータスの中でも、私の『アリス=リデル』はDEXがずば抜けて高かった。そしてスキル欄がブランクだ。初期スキルがない代わりに、私が『アリス』のスキルポイントを消費してスキルを覚えさせると、同時に自動取得でもう一つ覚えるらしい。
「これ最初に飲んだ薬の属性かな? うちのなんかやたら高い【闇属性】持ちなんだけど」
「リデルはDEXがずば抜けてるからそうかもしれんな」
どうやら属性か基本ステータスの数値のどちらかが高くなり、それは最初に飲んだ薬で決定される模様。
「てか、ステータスすごいんですけど、十二分の一になるところ二分の一になった効果?」
「なのかね? スキルポイントもやたらあるぞ?」
「レベル上げでスキルポイント増えるって書いてあるのに初期所持ポイントも破格すぎる」
二人で盛り上がっている間、『アリス=リデル』と『A.L.I.C.E』の二人のアリスは嬉しそうにそれぞれの持ち主を見て笑い、目があうと恥ずかしそうに目を逸らして踵の上げ下げをしてゆらゆらと体をゆらした。
現在、姿格好がお揃いのため、外見では二人の見分けがつかない。主に私を見ているほうが『リデル』、ペテロを視線で追っているほうが『A.L.I.C.E』だ。
「とりあえず、"とうさま"呼びをなんとか止めさせねば」
「いいじゃない別に可愛くて」
「幼女に"にいさま"呼びを強要しているロリコン忍者の噂が立つぞ?」
「そこで私を引き合いに出さないで! 冤罪だから!!」
「ところでこの二人は【召喚獣】?」
「……【ペット】だね」
……。
ペテロと二人で顔を見合わせる。
「……とりあえずせめて呼び方は矯正しようか」
「そうだね……」
ちょっと運営に言いたいことができたかもしれない。
「それにしても銃欲しいな」
「この世界にあるのかね?」
「すでに生産職が作ろうとしたけど、できなかったらしいね。ただ『魔法の弾』は出来たらしいのでこれから『魔法銃』とかは出来るのかも」
「というか、爆弾や銃の作り方ってリアル法律でネットに情報を流すのも規制されてるから、システム的に出来ないようにされてるんじゃないか?」
「ああ、失敗談掲示板で読む限りそんな気がする」
「この世界に似合わないし、私としては魔法銃でいいな」
「実弾もいいものですよ」
などと話しながら、バロンに戻る。
ペテロに頼まれて、薬や帰還石などを売り別れる。
さて、下見を済ませて島から戻ったら、ハウスと【箱庭】をいじる予定だったが、これはリデルの買い物が先だろうか。雑貨屋はもういっぱいなので島のハウスに部屋を作るしかないだろう。最低限ベッドとファブリック、着替えがいるだろう。
「そういえばリデル、君は買い物はできる?」
「できます、とうさま」
「……とうさまはやめてくれ」
「はい、とうさま」
「……(吐血)」
小首を傾げて笑顔で再びの「とうさま」呼び。可愛い、可愛いけれど私の中の何かが削れるからやめろ!
「冗談です、とうさ……、なんと呼べばいいですか?」
「ホムラ?」
「却下です」
「じゃあホムラさん?」
「却下です」
「店主?」
「却下です」
私とリデルの攻防の末、呼び方は『マスター』に落ち着いた。
ラピスとノエル、カルも最初は『店主』呼びだったのだが、最近は『店』が省略されたのかなんなのか『主』と呼ばれることもある。
とりあえず、『A.L.I.C.E』と双子な感じも可愛かったので服やら装備は二つセットで買ってペテロにやろう。
□ □ □ □
・増・
称号
【幻想に住む者】
スキル
【降臨】『ヴェルナ』
□ □ □ □
ホムラ Lv.38
Rank C
クラン Zodiac
種族 天人
職業 魔法剣士 薬士(暗殺者)
HP 1483
MP 1998
STR 104
VIT 57
INT 209
MID 70
DEX 69
AGI 113
LUK 121
NPCP 【ガラハド】【-】
PET 【バハムート】
【アリス=リデル】(アリス1/2)
称号
■一般
【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】
【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】
【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】
【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】
【防御の備え】【餌付けする者】【環境を変える者】
【火の制圧者】【絆を持つ者】【漆黒の探索者】
【惑わぬ者】【赤き幻想者】【スキルの才能】
【快楽の王】【不死鳥を継ぐ者】
【迷宮の王】【幻想に住む者】
■神々の祝福
【アシャの寵愛】【ヴァルの寵愛】
【ドゥルの寵愛】【ルシャの寵愛】
【ファルの寵愛】【タシャの寵愛】
【ヴェルナの寵愛】【ヴェルスの寵愛】
■神々からの称号
【アシャのチラリ指南役】
【ドゥルの果実】【ドゥルの大地】【ドゥルの指先】
【ルシャの宝石】【ルシャの目】【ルシャの下準備】
【ファルの睡蓮】
【タシャの宿り木】【タシャの弟子】【タシャの魔導】
【ヴァルの羽根】
【ヴェルスの眼】
【神々の印】
【神々の時】
■スレイヤー系
【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】
【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】
【バードスレイヤー】【鬼殺し】
【ドラゴンスレイヤー】
■マスターリング
【剣帝】【賢帝】
▪︎闘技場の称号
【NPC最強】(非表示)
【雑貨屋さん最強】(非表示)
【ロリコンからの天然】(絶賛非表示中)
スキル(7SP)
■種族固有
【常時浮遊】【精霊の囁き】
■魔術・魔法
【木魔法Lv.33】【火魔法Lv.31】【土魔法Lv.32】
【金魔法Lv.31】【水魔法Lv.32】【☆風魔法Lv.30】
【☆光魔法Lv.32】【☆闇魔法Lv.31】
【☆雷魔法Lv.33】【灼熱魔法Lv.23】【☆氷魔法Lv.35】
【☆重魔法Lv.38】【☆空魔法Lv.31】【☆時魔法Lv.36】
【ドルイド魔法Lv.30】【☆錬金魔法Lv.24】
■治癒術・聖法
【神聖魔法Lv.37】
【幻術Lv.36】
■特殊
【☆幻想魔法Lv.5】
■魔法系その他
【マジックシールド】【重ねがけ】
【☆範囲魔法Lv.37】
【☆魔法・効Lv.32】
【☆行動詠唱】【☆無詠唱】
【☆魔法チャージLv.28】
■剣術
【剣術Lv.38】【スラッシュ】
【☆断罪の大剣】
【☆グランドクロス・大剣】
■刀剣
【刀Lv.37】【☆一閃Lv.31】
【☆幻影ノ刀Lv.23】
【☆グランドクロス・刀剣】
■暗器
【糸Lv.43】
■物理系その他
【投擲Lv.17】
【☆見切りLv.34】
【物理・効Lv.23】
■防御系
【☆堅固なる地の盾】
■戦闘系その他
【☆魔法相殺】【☆武器保持Lv.36】
【☆スキル返しLv.1】
■回復系
【☆攻撃奪取・生命Lv.28】
【☆攻撃回復・魔力Lv.32】
【HP自然回復】【MP自然回復】
【☆復活】
■召喚
【白Lv.27】
【☆降臨】『ヴェルナ』『ヴェルス』
■精霊術
水の精霊【ルーファLv.24】
闇の精霊【黒耀Lv.35】
■才能系
【体術】【回避】【剣の道】
【暗号解読】【☆心眼】
■移動行動等
【☆運び】【跳躍】【縮地】
【☆滞空】【☆空翔け】
【☆空中移動】【☆空中行動】
【☆水上移動】【☆水中行動】
■創造
【☆魔物替えLv.1】
【☆風水】【☆神樹】
■生産
【調合Lv.43】【錬金調合Lv.43】
【料理Lv.43】【宝飾Lv.36】
【魔法陣製作Lv.28】【大工Lv.15】
【ガラス工Lv.15】【農業Lv.1】
■生産系その他
【☆ルシャの指先】【☆意匠具現化】
【☆植物成長】【☆緑の大地】
【大量生産】
■収集
【採取】【採掘】
■鑑定・隠蔽
【鑑定Lv.44】【看破】
【気配察知Lv.44】【気配希釈Lv.44】【隠蔽Lv.44】
■解除・防止
【☆解結界Lv.5】【罠解除】
【開錠】【アンロック】【盗み防止Lv.24】
■強化
【腕力強化Lv.14】【知力強化Lv.14】【精神強化Lv.14】
【器用強化Lv.14】【俊敏強化Lv.14】
【剣術強化Lv.14】【魔術強化Lv.14】
■耐性
【酔い耐性】【痛み耐性】
【☆ヴェルスの守り】【☆ヴェルナの守り】
■その他
【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】
【装備チェンジ】【☆大剣装備】
【生活魔法】【☆ストレージ】
【☆誘引】【☆畏敬】
☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの