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143.火華果実

 結果。


 誘導は一人ではできなかった。結局三人で下に降りて、【炎の渦】が来るタイミングで目当ての石柱の前に立った。【炎の渦】を十分引き寄せてからその石柱の陰に隠れ、やり過ごす。……うん、ちょっと肌色成分が多い男二人と接近遭遇したがしょうがない。

 後で知ったが、【炎の渦】はパーティー人数の二分の一が集まる石柱に優先的に向かうそうな。



 【水魔法】レベル30『穿つ雨』、弱点属性のはずだが、フェニックスに届く前に半分が蒸発。カルがイーブンな条件ならば、水は火に強いが、そうでない場合反発してかえって弱まる場合がある、と言っていたがこれか。白装備をもってしてもフェニックスに届かないようだ。まあ、レベル30だからなあ。


【木魔法】レベル30『眠りの香り』はフェニックスには効かなかった。【火魔法】は吸収回復、【風魔法】『ハリケーン』はダメージも与えたが、下から溶岩を巻き上げてその分微量に回復が入るという現象有り。【土魔法】『グレイブ』――飛んでいる敵には効かないが、『ハリケーン』には飛んでいる敵を叩き落とす効果もあるため有効。【金魔法】『ミスリルの槍』はフェニックスにほとんどダメージを与えることなく蒸発。


 実験を兼ねて石柱に誘導しながら魔法を使う。予想外だったのは【風魔法】だが、少なくとも範囲系は周囲の環境の影響を受ける、と。確かに熱風も寒風もあるしな。



「【戦士の咆哮】【剣の剣】!」

「【蒼の不起(あおのふき)】!」


 フェニックスが回復に使うマグマ溜まりに岩で蓋をして本格的に攻勢をかける。蓋をした岩が下から徐々にオレンジに焼けて行く、もしかしたらフェニックスを倒すのにも石が割れるまでという時間制限があるのかもしれない。


 ガラハドは隙も大きいが、大ダメージを与える大技を好む。【戦士の咆哮】のほうは攻撃力増強のスキルだ。【剣の剣】は振るった剣の軌跡上に残像のような剣が現れ、元の剣を追う、敵に攻撃を叩き込めばすべての剣が対象にダメージを叩き込みながら元の剣に収束してゆく。なかなか派手で爽快な技だ。

 イーグルの技は相変わらず流麗だ。こちらはダウンした敵相手の補正がある技で、ガラハドがダウンをとるのを前提に、時間差でスキルを使用している。


 ガラハドがスキルを放つ時に、敵が手を出してくるような場合はイーグルが先にスキルを使って攻撃を潰している。イーグルは敵の行動をよく読む、与ダメージの量が多いのは断然ガラハドだが、イーグルがいなければ半減するだろう。ガラハドもよく敵の攻撃を受け止め、HPが低めなイーグルが攻撃を受けるのを肩代わりしている。ガラハド曰く、「攻撃を受けるとスキルゲージ溜まんのがあるんだよ」だそうだ。


 いいな、相棒。


 さて、私も準備ができた。



「『穿つ雨』」



 久々に使った【廻る力】『穿つ雨』。

 起点に使ったレベル30と同じ魔法。だが起きた現象は違う。


 火の勢いを水が上回った瞬間、大ダメージを与える、そしてそれは火勢が強いほど激しい。最初、大部分を削がれていた水は、無数の紡錘形の弾丸を勢い良く降らし、フェニックスの羽根に穴を開けてゆく。 


 地面に墜ちて飛び立てずにのたうつフェニックスにガラハドとイーグルが【断罪の大剣】と【断罪の剣】を叩き込んで終了。




《ソロ初討伐称号【不死鳥を継ぐ者】を手に入れました》

《ソロ初討伐報酬『火華の佩玉』を手に入れました》


《お知らせします、『火華果山のフェニックス』がソロ討伐されました》



《フェニックスの爪×5を手に入れました》

《フェニックスの涙×5を手に入れました》

《フェニックスの鎧・胸部を手に入れました》

《フェニックスの魔石を手に入れました》

《フェニックスの尾羽×10を手に入れました》

《火の指輪+8を手に入れました》

《『復活のスキル石』を手に入れました》


 胸部。

 

 あれか、腕部とかもあって全て揃うまで通え系? フェニックスは物理攻撃は少なかったので、通えないこともないが残念ながら重鎧は職業柄マイナス補正がつく。

 そして『復活のスキル石』、使ったら【復活】を覚えた。パーティーメンバーに使えることを期待したのだが、戦闘中に一度だけ一定確率で戦闘不能から復活するスキルだった。蘇生はどこだ、やっぱり神聖魔法をせっせと上げた先にあるのだろうか。

 フェニックスの涙は『蘇生薬』の材料の一つだ。消耗品の薬で、ここまで取りに来る手間がかかるということは、魔法やスキルに『蘇生』が現れるのはもっと先ということか。


 【不死鳥を継ぐ者】は【復活】の確率を上げ、【蘇生】時の状態を最適にし、【回復】を受ける方もかける方も増量する効果だった。



「この奥だが……火竜が留守なことを祈ろう」

フェニックスを倒した広間から続く、細い洞窟に入る。ここもオレンジに焼けた岩壁が所々あり、明るい。青竜ナルンもそういえばボス部屋を抜けた先にいた。あの時はペテロのイベント主体で、通り抜けたのは倒した後のボスのいない部屋だったが。


「火竜ってそういえばパルティンに言い寄ってるやつか?」

「確かに火竜グラシャと緑竜タラルは定期的に山脈で金竜パルティンと縄張り争いをするようだけど……」

「ホムラ、金竜と知り合いとか言わないよな?」

「いくらなんでも……」

「ああ、騎獣探しに行って会ったぞ」


「ガラハド、しっかりしろ! 自分で聞いておいて倒れるな! 崩れ落ちるのはカミラが回復してからにしろ!」

突然倒れそうになったガラハドをイーグルが支える。


「わかった。今は聞かなかったことにして後でまとめてハッキリさせよう」

「なんだ?」

何をどうハッキリさせたいのか。ステータスの開示以外なら何を聞かれても困らんのだが。ステータスも【快楽の王】以外は見せてもいいのだが。


 いいからゆくぞ、と進むのを促されてすっきりしないまま目的地に到着。

 そこは壁と床に火の華が咲く広間。火の華はよくよく見れば、水晶のような六角柱形が花の形に集まった群晶(クラスター)が炎を上げて燃えていた。【採取】できるのかね?


「火竜は留守のようだぜ」

ほっとしたようにガラハドが言う。

「以前ここを(ねぐら)にしていた赤竜は高齢のせいか、火属性の竜にしては穏やかだったと聞くが、グラシャは人を食らう。遭って嬉しい相手じゃないし、朗報だね」


 石の花々の間を歩きながら話す。大きな六角柱に大小の花が燃えているものもあれば、地面からそのまま咲いているものもある。うっかり触るとダメージを受ける、ゆらゆらと炎の花弁を揺らす綺麗な花。


「ここの竜は代替わりがあるのか」

「だいたい竜が好んで住処にするのは自分の属性の強い土地だ。竜も精霊も長くそこにいると、その環境を自分の属性に染めるからな、主の居なくなった(ねぐら)は魅力的だろうぜ。同じ属性の竜の住処を奪うこともあるしな」

「ここはフェニックスもいるし、特に火属性が強い。グラシャはここに越してきて強くなったはずだよ」

代替わりがあるということは倒しても新しい火竜が住むのか。青竜ナルンと対峙した時に倒しきってしまったらどうなるんだろうかと思ったが、きっと新しい竜がしれっとクエストをこなすなり配るなりするのだろう。もっとも重要キャラは戦闘不能になるだけで死なない疑惑もあるが。


「あった」

炎の色に染まる中、鈍色の金属のような枝を伸ばす細木。銀色の枝の先は蔦のようにくるりと巻き、小さな炎の葉をつけ、そこに李のような小さな実がなっている。


「これが『火華果実(かかかじつ)』か」

「そうだ、これの成熟していない実があれば、カミラの病は治せる」

「色づいてない方がいいのか」

「ああ」

そう言いながら炎の色を宿す実を避け、枝と同じ鈍色の実を採るガラハド。


「この木からは一人一つの実を採ることが許されているんだよ、二つ採ると火山が噴火するそうだ」

適当にもごうとしたらイーグルから忠告を受けた。

「そういうことは早く言ってくれ」

「なるべくムラなく色がついた実が高く売れるぞ」

慌てて手を引っ込めると、ガラハドが笑いながら言う。

「火属性を強化する素材の中では最高のものの一つだよ」


「火属性強化の杖は魅力的だな。だがまあ、備えあれば憂いなし?」

そう言って鈍色の実をもぐ私。今のところ特に装備に困っていないしな。ガラハドとイーグルが『炎熱の病』を発症したら困る。


「私としても装備より自身の能力(からだ)だね」

イーグルも鈍色の実をもいだ。


「おう、じゃあさっさと帰ろうぜ!」

と、言いながらいそいそと服を着るガラハドとイーグル。その服を着る短い間に汗だくになっている。ガラハドが『帰還石』を使う頃にはHPの減少も起こっている。私が魔法を使うのを待っていられないくらい熱かったようだ。「熱」かったで間違ってないだろう。

 この場所で一番火の気が強いのはフェニックスでも火竜でもなく、この『火華果実』のなる木なのかもしれない。



 店舗に転移すると、人の気配に下から上がってきたカルとレーノに「ただいま」と答えつつカミラの眠る部屋に行く。二人にとっても予想外に早かったらしく驚かれた。迂回すべきところをそのまま突っ込んでほぼ最短を真っ直ぐ進んでたからな。対岸が遠い溶岩流も『浮遊』をかけた二人を抱えて飛んだし。服がないと掴むところがなくて困ったが。

 それにしても、住人と一緒にクエスト中は時間経過が通常フィールドとも異なる、と思っていたのだが、今回きっちり経過している模様。というか、タイムアタックになると経過する模様。まあ明日――もう今日か――は仕事が午後からなのでいいのだが。



 ガラハドが『火華果実』をカミラの胸に置くと、鈍色だった実が炭の燃える色に染まってゆく。カミラの荒かった息が治り、熱が引いてゆく。歪められた眉が緩みあどけない顔になった。


「これで大丈夫。熱で奪われた体力が戻る頃には体内の属性も正常になるだろう」

今は体内の属性と魔力の循環が正常に戻るところなので、魔法で回復せずに自然に起きるのを待った方がいいらしい。


「これなら後遺症もほぼ無いでしょう」

カルもついてきてカミラの様子を見て告げる。

「お疲れさまでした、驚くほど早かったですね」

これはレーノの感想。


「おう! 頑張った甲斐があったってもんよ」

「大分無茶をしましたし、無茶な人がいましたからね」

「二人とも進むの早かったな」



 本日は三階(ここ)に隠蔽陣を敷いて雑魚寝だ。このままログアウトしてもいい時間なのだが、カミラが目を開いたところを見たいし、現実世界で仕事に行っている間、こっちの床で数日転がっているのもどうかと思うので戻ってこよう。

 私の持ち出した中綿入り『隠蔽陣』に驚きつつ、自分のベッドを提供するというカルの申し出を断り、夜着に装備替えをして『隠蔽陣』に潜り込む。カミラが起きたら、宿屋に移動して改めてログアウトをしよう。



 とりあえず、おやすみなさい。




□   □   □   □

・増減・

称号

【不死鳥を継ぐ者】

スキル

【復活】

□   □   □   □


ホムラ Lv.38

Rank C

クラン Zodiac

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1408

MP  1887

STR 101

VIT 55

INT 205

MID 67

DEX 67

AGI 111

LUK 119


NPCP 【ガラハド】【-】

PET 【バハムート】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】

【防御の備え】【餌付けする者】【環境を変える者】

【火の制圧者】【絆を持つ者】【漆黒の探索者】

【惑わぬ者】【赤き幻想者】【スキルの才能】

【快楽の王】【不死鳥を継ぐ者】

■神々の祝福

【アシャの寵愛】【ヴァルの寵愛】

【ドゥルの寵愛】【ルシャの寵愛】

【ファルの寵愛】【タシャの寵愛】

【ヴェルナの寵愛】【ヴェルスの寵愛】

■神々からの称号

【アシャのチラリ指南役】

【ドゥルの果実】【ドゥルの大地】【ドゥルの指先】

【ルシャの宝石】【ルシャの目】【ルシャの下準備】

【ファルの睡蓮】

【タシャの宿り木】【タシャの弟子】【タシャの魔導】

【ヴァルの羽根】

【ヴェルスの眼】

【神々の印】

【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】【鬼殺し】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣帝】【賢帝】

▪︎闘技場の称号

【NPC最強】(非表示)

【雑貨屋さん最強】(非表示)

【ロリコンからの天然】(絶賛非表示中)


スキル(7SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.33】【火魔法Lv.31】【土魔法Lv.31】

【金魔法Lv.30】【水魔法Lv.32】【☆風魔法Lv.30】

【☆光魔法Lv.32】【☆闇魔法Lv.31】

【☆雷魔法Lv.33】【灼熱魔法Lv.23】【☆氷魔法Lv.35】

【☆重魔法Lv.31】【☆空魔法Lv.30】【☆時魔法Lv.35】

【ドルイド魔法Lv.30】【☆錬金魔法Lv.24】

■治癒術・聖法

【神聖魔法Lv.37】

【幻術Lv.36】

■特殊

【☆幻想魔法Lv.5】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.37】

【☆魔法・効Lv.32】

【☆行動詠唱】【☆無詠唱】

【☆魔法チャージLv.28】

■剣術

【剣術Lv.37】【スラッシュ】

【刀Lv.36】【☆一閃Lv.30】

【☆幻影ノ刀Lv.22】

【☆断罪の大剣】

■暗器

【糸Lv.42】

■物理系その他

【投擲Lv.15】

【☆見切りLv.34】

【物理・効Lv.22】

■防御系

【☆堅固なる地の盾】

■戦闘系その他

【☆魔法相殺】【☆武器保持Lv.35】

【☆攻撃奪取・生命Lv.27】【☆攻撃回復・魔力Lv.32】

【☆スキル返しLv.1】【☆復活】

■召喚

【白Lv.27】

【☆降臨】『ヴェルス』

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.24】

 闇の精霊【黒耀Lv.35】

■才能系

【体術】【回避】【剣の道】

【暗号解読】【☆心眼】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

【☆空中移動】【☆空中行動】

【☆水上移動】【☆水中行動】

■生産

【調合Lv.41】【錬金調合Lv.43】

【料理Lv.43】【宝飾Lv.34】

【魔法陣製作Lv.27】【大工Lv.1】

【ガラス工Lv.1】【農業Lv.1】

■生産系その他

【☆ルシャの指先】【☆意匠具現化】

【☆植物成長】【☆緑の大地】

【大量生産】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【鑑定Lv.44】【看破】

【気配察知Lv.44】【気配希釈Lv.43】【隠蔽Lv.43】

■解除・防止

【☆解結界Lv.5】【罠解除】

【開錠】【アンロック】【盗み防止Lv.24】

■強化

【腕力強化Lv.13】【知力強化Lv.14】【精神強化Lv.14】

【器用強化Lv.13】【俊敏強化Lv.14】

【剣術強化Lv.13】【魔術強化Lv.13】

■耐性

【酔い耐性】【痛み耐性】

【☆ヴェルスの守り】【☆ヴェルナの守り】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】

【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】

【装備チェンジ】

【生活魔法】【☆ストレージ】【☆誘引】

【☆風水】【☆神樹】【☆畏敬】



☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの



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― 新着の感想 ―
知っていても、やっぱり読むと安心する。 いつもの戦闘よりハラハラする。ホムラのお陰で、シリアルさんとギャグも混じってるが。
[一言] 逆に鈍色の実は火属性耐性を上げる装備として優秀な素材になりそうだねぇ...
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