136.効果の検証
「相変わらず仲いいにゃ〜」
「ギルヴァイツアは最終的にエリアスに逆らえないからな」
エリアスの店でエリアスがギルヴァイツアを軽くいじっているのを見るプレイ中。解説はクルルさん炎王さんにお越しいただいています。
「さっき私の店で騒いでくれたのは誰なのん?」
「いや、あれは俺も困って……」
「あらん? 話し方が違う気がするのん?」
「う、あたしもあれにはちょっと困ってるのよ〜」
なんだろう、ギルヴァイツアのおネェキャラはエリアスに強要されてやっとるのか? 賭けにでも負けたか?
現在、ギルヴァイツアはエリアスに『獣進化石・狐』を強請られている。性別不明のスレンダーで白く艶かしい肌を持った人物が閉じた扇――絹っぽい布が貼ってあるから生地扇というのか? ――で大男をペシペシしているのは中々倒錯的、じゃない、微笑ましい遣り取りではあるが、二位で解放される賞品なだけあってTポイントも結構かかる。かかるというか二位のTポイントが全て要る。
「『獣進化石・狐』はカジノで500Gで取れるぞ」
賭けで思い出して助け舟を出す、泥舟かもしれんが。
「ほらほら、エリアス! 生産職でも取れるって言ってるわよ!」
「そうなのん?」
冷や汗を垂らした笑顔でギルヴァイツアが、エリアスの両肩を持ってこちらに向き直らせる。
「他にもカジノの方には生産職向けの景品が多かったな。作業台や炉もファストの住人から購入するよりも高Rankのものが出とった」
「あら、やっぱり国の移動許可を取るくらいには戦闘しなくちゃダメかしらん」
「護衛するから移動できるようにしましょ! 手伝うから!」
ギルヴァイツアが大会の賞品からカジノの景品にシフトさせたくって必死だ。
「この国のボスくらいなら、護衛しながらでも余裕だ。ボス戦よりも移動時間の方がかかるかもしれんな」
炎王が言う、どうやら護衛に参戦する模様。
「そそ、大地とコレトにも頼んだげる」
ハルナが留守番か、盾と回復は要るだろうし妥当だろう。
烈火の面子はここで他の3人とも待ち合わせをしているというので、エリアスが淹れ直してくれた茶を飲みながら少し話をする。というか、お暇しようとしたら炎王に引き止められた。
「すまん、ホムラ。カレーだけで構わないから売ってくれないか?」
ああ、何か私を見てそわそわしていると思ったらカレーか。
「いいが、どんなのが好みだ? 牛? 豚? 鳥? 辛さは?」
「牛肉がゴロゴロしているのが嬉しい。辛さは少し辛めで」
「了解、今持ち合わせがないのだが、次回会った時に渡すか?もしくは了承をもらえればエリアスに預けておくか? 結構私フラフラしてるんだが」
材料が隣の店舗の倉庫の中だ。隣だが戻るのが大変なんですよ!
「あらホムラは料理もするのん?」
「ああ、料理と錬金と調薬メインだが、広く浅くかな? カジノで【大工】を取ったし」
「何で【大工】にゃ?」
「クランでハウス持つことにしたから、つい」
「いいわね、どこにしたの?」
エリアスから解放されて腰を落ち着けたギルヴァイツア。
「ファガットの島にする予定だ」
「バンガローの方? 巨木の島の方? 奇岩にゃ?」
奇岩はアルセーヌ・ルパンの奇岩城のように、海に突き出た尖塔のような岩の中に家を造るタイプ。『建築玉』は入り口さえ外に面していればどこにでも部屋を造ることができるのだ! 私の個人ハウスのほうもちょっと島を覆う絶壁の中に作ろうかなどと画策している。どんな家にするか考えているときはわくわくする、攻略も楽しいがこっちも面白い。
「巨木の島だな」
「あらん、いいわねん」
「ボクたちもハウス欲しいのにゃ〜」
「ロイの所もハウスの算段をしているそうだな」
炎王も言う。どうやらここにいる烈火の面子にハウス熱が伝染した模様。ロイたちが、例の鍋を六つ持っていたのはハウス取得のためにくるくるしていたためらしい、会ったときはパーティー人数いっぱいの六人だけであったが、今は生産者もクランに加入し人数が増えていると菊姫が言っていた。迷宮に行けないメンバーの分のアイテムを確保するため、くるくるハムハムしていたのだろう。
「でもよくお金貯めたわね〜、あたしは装備買っちゃって大してもってないわ〜」
闘技大会に出ると決めた時に、パーティー討伐報酬以外の装備を揃え直したそうな。それまで着ていた装備を売り払っても結構な金額を使った様だ。
「ああ、私は外したが他の面子は闘技場の賭けで勝ったからな」
「じゃあホムラは借金にゃ?」
「いや、私は販売で貯まってたので問題ない」
「ん? ドロップ品の販売でそんなに貯まるのか?」
炎王が意外そうな顔で聞いてくる。ファガットの島は他の国に比べて断然高い、それこそ上手くいっている方の生産クランでもちょっと躊躇うくらいに。戦闘職は売れる素材を積極的に手に入れようとするならともかく、装備を新しくしたり消耗品を補充したりと金も入るが出るのもあっという間なため、意識して貯めないと貯まらない。
「委託だと販売金額に制限があったと思うんだけど、どうしてるの? 店舗持ちに委託?」
「あらん、それだってそう貯まらないわよん? 素材を買う生産者も自分の店舗を持ったばかりか、持つつもりで今はお財布の紐は固いものん。戦闘職の方が装備に払うお金に鷹揚よん?」
「あ、特殊な方法なら稼ぐ方法は教えなくていいのよ? 情報は貴重だもの」
ギルヴァイツアが付け加える。
「いや? 普通に店舗持って販売しているだけだぞ」
「あらん? どこかしら。教えてもらえれば買いに行くわん」
「隣」
「ん? どこだ?」
炎王がきょとんとした顔で聞き返してくる。きょとんとしているというか眉間の縦ジワが消えたからそう見えるだけか。
「隣」
「隣は【剣屋】よん?」
「反対の隣」
自分の店舗の方を指差す。
「そっちはレンガードの店だわよ?」
「そうにゃー」
ギルヴァイツアとクルルが不審そうに聞いてくる。
「レンガードは私の生産者名」
仮面無しで、闘技場で披露した白装備に着替えて見せる。
固まる四人。
「内緒ですよ?」
唇に指を当ててポーズをとってみるテスト。
「なんだ冗談か」
「そのデザインどこで手に入るのかしらん?」
「いいわね〜、黒い方はないの?」
「能力ってどうなってるのにゃ?」
「まあ、揃いの装備も騒ぎになりそうだしな。内緒というなら内緒にするが、どこで着るつもりなんだ?」
……ポーズとったのが悪かったのか。信じてもらえないんだがこれいかに。
「いやいや? 本人だから」
「ホムラ」
「ん?」
炎王が私の肩に手を置いて沈痛な顔で名前を呼ぶ。
「確かに背格好は似ているし、髪の色も一緒だが」
「なりきりは痛いわよん?」
信 じ て も ら え な い !
これはアシャの仮面の効果なのか、単に私の初動が悪かったのか、どっちだ!
「ちゃんとレンガードの銘入りで生産もできるぞ」
「名前は被り可能だろう、そこまで真似てるのか」
「重症だわねぇ」
「『転移石』も作れるし、『帰還石』も……」
闘技場の正面から撮った鍋SSやら、実験も兼ねて自分がレンガードである物的証拠を挙げて行ったのだが、中々信じてもらえない。これは仮面の効果の方でファイナルアンサー?
そして最終的に。
「う、ギルがサンバをっ!?」
「ちょっ! スパンコールのブラは止めるにゃッ!」
「なんであたしなのよ! こっちはアンタたちがパンタロン穿いてランバダ踊ってるわよ!」
「ちょっと三人ともサンバのリズムで腰振りながらちょっとずつ迫ってくるのやめてちょうだい!」
サンバに軍配が上がったようです。
いや、違う。私とレンガードを関連付けて考えようとすると、思考に妨害が入るようだ。なんでこうなってるんだろうという混乱っぷりである。こう、炎王とクルルの中ではギルヴァイツアがスパンコールのブ……衣装を着けてサンバを踊っているらしく、当のギルヴァイツアの中では炎王とクルルが二人でランバダを踊っているらしい。エリアスの方でもサンバ三人組に迫られとるらしいが………。
「良かった、私関係なくて」
「いや、理由はわからんが、どう考えてもお前も当事者だよな?」
危うく想像しかけてひとりごちたところに、こめかみを片手で押さえる炎王に詰問される。
「ちょっとギルのサンバがベリーダンスに変わってきたから早くなんとかするにゃ!!!」
「うっ……ピンクのスポットがっ! ってクルル、自分の妄想に俺を巻き込むな!!!」
「きゃあ、見たくないわん!!!可逆反応の逆不可逆反応 不可逆反応の逆可逆反応 可逆反応も不可逆反応も化学反応!」
「だからなんであたしなのよ!」
エリアスが早口言葉で気を紛らわしはじめた。
これもうレンガードのこと考えてないよな? 考え止めても思考汚染(?)は止まらんのか? とりあえず、『アシャ白炎の仮面』はかなり強力なことが判明した。
「これでいいか?」
仮面を目の前で装備する。
「……っ! レンガード!?」
『アシャ白炎の仮面』による混乱は治ったが、別な混乱が始まった。
話の流れで聞かれるままにバラしたわけだが、まあ、相手がこのメンツならいいかなと。仮面の検証も出来たし、珍しいものも見られたし。それにエリアスには悩まずに装備の生産を依頼出来る。スッキリした。
「とりあえず落ち着こうか?」
「お前が言うな!!!!」
「うをっ!」
炎王が斬りかかってきた!
「きゃあ! ちょっと私の店で暴れないで!」
「闘技場以外でのPVは衛兵来るにゃ!危ないにゃ!!!」
「コレが斬られるタマか!」
「わわ、盾に使うな!!!」
「サイズが丁度いい!」
ギルヴァイツアを盾に炎王の斬撃を避ける。炎王の剣を手のひらで挟むように止めるギルヴァイツア、白刃取りできる程度なんだから本気ではないのだろう。……ないよね?
「ええい! ギル! 邪魔するな!」
「今の止めないと俺が斬られるだろ!」
「いいからそこを退け!」
「先に剣を退けっ!」
「「ぐぬぬぬ」」
二人の熾烈な攻防が始まった。
「狭いのに大変だな」
ギルヴァイツアの後ろからそっと抜け出して一息つく。趣味のいい調度品を壊さず室内で暴れる男二人、特にバスタードソードを振り回す炎王は器用だ。
「なかなかいい性格してるにゃ」
呆れたように言ってくるクルル。
「私はいたって事なかれ主義です」
「この装備【鑑定】させてもらってもいいかしらん?」
「他言無用にしてくれるなら」
「もちろん! ……って【鑑定】できないわん。相当高Rankなのん」
残念そうなエリアス。出処が出処なのでRankが飛び抜けて高く、持ち主か【鑑定】レベルが高くないと能力を見る事がむずかしいらしい。小手とブーツなら鑑定できるんじゃなかろうか。
「「くつろぐな!!!」」
炎王とギルヴァイツアに怒鳴られた。シンクロ率高いな二人とも。
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