124.闘技場3戦目以降〜
ホムラ:ただいま
菊 姫:ドS様おかえりなさいでし
お茶漬:おかえりなさいドS様
レ オ:おめでとう、ドS様!わははははっ!
ホムラ:ぶっ
ホムラ:人聞きの悪い!
菊 姫:あ、シン痛そう
お茶漬:どれどれ
ホムラ:スルーっ!?
2回戦を勝利して戻ったらこの対応。
ひどい。
『白、クラン面子がひどいんです』
『日頃の行いじゃの』
『日々品行方正に生きてるのに!』
『茶を所望するのじゃ』
白にまでスルーされた!
言われたとおりお茶をだしつつ白をもふりまくる私。おのれ……っ、いい手触りしおって!
腹の毛はどこまでも柔らかく、腹もまた柔らかいためまさにストレスフリーな柔らかさ。胸は胸骨があるのであれだが立派な胸毛がもっふもふなのだ、指が本体に届くまでかなりのもふもふ! いつかこの腹と胸に顔を埋めたい。
ペテロかシンか少し迷ったが、菊姫の「痛そう」という言葉にシンの試合を映し出す。
個人戦のほうがパーティー戦のほうより若干進みが速い。回復・防御重視同士のパーティーが当たるとどうしても長引くからだ。
シンの相手は剣士のようで、その場で隙を窺うように細かくステップを踏んでいるシンに対して、顔の左脇に垂直に剣を構え、摺り足でジリジリと間合いを計っている。菊姫の言うとおり、シンのHPは大分減っている。相手も減らしているようだが、シンよりは多い。生命活性薬を飲んでいるのかジリジリとゲージは回復しているが、お互い痛いスキルを食らったらまずそうな具合だ。
レ オ:薬飲めばいいのに。
ホムラ:飲んでるところに斬りかかってきそうじゃないか?
お茶漬:さっきから間合いとらせてもらえないみたい
菊 姫:でも回復してってるでし
ホムラ:回復する前に仕掛けてくるかな?
お茶漬:相手もジリジリ回復してってるね
菊 姫:シンのほうが回復してる?
お茶漬:魔法剣士よりHP総量多いから、回復量も多いかな
ホムラ:自分のHPがカウンター喰らっても耐えられそうくらいまで回復したら仕掛けてくるかな?
お茶漬:シンの方が回復しちゃったらまずいし、そんくらいできそうね。
ホムラ:それにしてもあの構え、刀みたいに曲刀じゃないし、振り下ろすの大変そうなんだが。
ペテロ:格好はいいけど体に剣を引き付け過ぎてて窮屈そうだね。
菊 姫:おかえりでし〜
レ オ:おかえり!w
ホムラ:終わったのか、おかえり
お茶漬:おかおか、勝敗は?
ペテロ:勝ちましたw
ホムラ:おめでとう!
菊 姫:おめでとうでし!
レ オ:おめおめ!
お茶漬:おめー
ペテロ:ありがとうw
剣士が何か叫んで――たぶんスキル名――、一気に間合いを詰める。間合いに入る前に振り下ろされた剣を追うように雷が発生し、シンへと届く。
一気にHPゲージが減った。
ホムラ:うを、何だ?
ペテロ:ホムラ、あれが魔法剣士というものですよ?w
お茶漬:剣士始まりかな? とてもとても普通の魔法剣士ですね。
菊 姫:雷は珍しいけど、一般的でし!
レ オ:技名くらい音声欲しい!
ホムラ:あれが魔法剣士……
お茶漬:どっかの魔法de剣士とは違うね
ホムラ:なんかディスられてる気がする!
ペテロ:普通の魔法より速いんで、あれ避けるの難しいw
菊 姫:剣士始まりだとMP不足でたくさんは使えないでし
レ オ:バリバリ
菊 姫:ちょっと、レオ、こぼしてるでしよ!
とりあえずアレが標準的魔法剣士のようだ。私がソロであっちへふらふらこっちへふらふらとしている間、皆んなは順調に攻略を進めている、どうにも私には知識の抜けがあるようだ。
魔法剣士は、剣と魔法、両方当ててダメージを与えるのが理想だが、今シンの対戦相手が使ったように、魔法だけ飛ばして当てることも可能なようだ。普通に魔法を発動するよりも速い。
風・雷・光はそうでもないが、魔法が発動し、エフェクトが現れ着弾するまでに少々ラグがでる。近づいて0距離無詠唱発動してもいいが、すでに剣に宿った魔法を飛ばす方が同じ距離ならば速い。ただし、魔法自体の威力は落ちるそうだが。エンチャント使用して真面目に魔法剣士系のスキルを出して試してみたいところ。スキルポイントないけどな!
それにしてもレオは何食ってるんだろう?
お茶漬:MP配分考えて、弱い魔法常時つけて通常ダメージ底上げするか、今の人みたいに強い魔法とスキル組み合わせて必殺技的に使うかどっちかかな
ホムラ:魔術士始まりはその点心配ないぞ
ペテロ:魔術士始まりって、普通はAGI低くて近接アタッカー致命的だからw
お茶漬:固定砲台なら魔法使いそのまんまでいいもん
菊 姫:魔法剣士になってからレベルどんどんあがればステータスたるんでし?
お茶漬:30超えるとガクッと上がらなくなるしキツイかな
ペテロ:まあ、諦めずにやれば大器晩成型? 大体は諦めて魔法使いに戻ってるね。
お茶漬:遠距離物理警戒して小盾系だけ取って戻るとか多いみたいよ?
レ オ:バリバリ パリリッ
ペテロ:それにしてもあれ、魔法だけじゃなくって剣のほうもきっちり当ててたら決まってたね
お茶漬:今反撃に出てるけど、さっきコンボきれちゃってるし、シンも厳しいかな?
魔法剣使用でというか届かない切っ先を振り切ったことによって生じた隙を逃さず、シンが反撃に転じている。正しくは、魔法に当たることは諦めてそのまま突っ込んで行き、わずかに残った危ういHPのまま攻撃をつないでいる。
4コンボ、5コンボ、コンボをつなぐたびシンの体を包む風が湧き上がるようなエフェクトが大きく濃くなってゆく。過去に3コンボしかできねぇ!と嘆いていたが、使える【技】を増やし、EPゲージ回復のコンボを覚えたあたりで、今度はいかに火力を出すかを研究しているらしい。
体勢を戻した相手の攻撃を回避コンボを合わせてすり抜ける。
菊 姫:いけそうでし!
ペテロ:おお!
レ オ:いえけぇぇぇええええッ!!!
魔拳士のシンの10コンボ以降に発動することができる【鳳凰火炎拳】。
拳から燃え上がった炎は尾をひくように腕を包み宙にたなびく。
拳を魔剣士の鳩尾に叩きこむと、派手に燃え上がるエフェクト、そのエフェクトが消える前に魔剣士が光の粒になって消えた。
攻撃をきっちり叩き込んだシンの勝ちだ。
シ ン:イェーイ! 俺のファイア・ポリプが火を噴くぜ!
お茶漬:おめおめ
菊 姫:かっこよかったでしよ。さっきまでは。
レ オ:おめ!w すげぇギリギリの逆転劇!
ホムラ:おめでとう!すり抜けからの大技が格好よかった。
ペテロ:ハラハラしたwおめでとう
シ ン:へへ、相手が大技使った後で次の技が使えないのわかってたのもあって運良く合わせられたw
お茶漬:なにはともあれ、三人とも2回戦突破おめでとう
シ ン:おー、みんなも勝ったか! おめおめ!
ペテロ:ありありw
ホムラ:ありがとう
合間にだらだら喋りつつ、試合をこなして行く。参加者が多いために結構な試合数だ、そして待ち時間が長い。途中【風水】で『溶岩』を選んだら、結構な地獄絵図になったりしたが、まあ気にしない方向で。
そんなことより白の帰還時間が来てしまい、今現在、魅惑の毛玉が留守だ。ボックス席に一人は寂しい。
レ オ:秋田!
ペテロ:待ち時間長いしね。知り合いの試合は楽しめるけどw
ホムラ:知らん人たちのは別に興味がないな。
シ ン:修行場とか欲しいぜ
お茶漬:君たち瞬殺とか、肉を切らせて骨を断つとか無茶ばっかりして試合時間短すぎ!
シ ン:相手が回復持ちだと、なげーんだもん!
ホムラ:パーティー戦とかもう個人戦と1回戦分の差がついたぞ。
菊 姫:カードゲーム闘技場メニューにあるでしよ、対戦する?
レ オ:するする
あれです、ボードゲームやカードゲーム等の項目が結構な数ありました。何しにきてるんだお前ら?と言われそうだが。
ここでもシルを賭けての勝負になっているところが徹底している。連続で勝利すれば、相手の賭け金だけでなく闘技場が用意したちょっとしたアイテムがもらえる代わり、1ゲームの代金として賭け金総額の5%が闘技場に支払われる。闘技場メニューから選べるゲームは、闘技場内であれば離れていてもネットゲームのような感覚でプレイ可能だが、ここには併設してカジノもあり、そこにカードゲームやボードゲーム専用の部屋もある、対面してゲームができるそうだ。
観客席と同じく、カジノに居ても試合の順番が来れば呼び出しされるので、そこで時間を潰すのも手であるが、スロットなんかも並んでいて、シンにはとても危険な場所だ。本人が気づくまで教えない方向で他のメンツと話が一致している。
まあ、普通のゲームでもプレイヤーが持っている金の回収はあの手この手で運営がするからね、とはペテロの言だ。なかなか世知辛いが、この世界では一応インフラ整備などに使われるようなので良しとする。おかげで一般のファガットの税金は安いらしいぞ! ……冒険者も定住すると税金がかかるそうです、世知辛い。
そんなこんなで準々決勝、個人はペテロがまだ残っている。シンは残念ながらあの魔法剣士で燃え尽きたらしく、次の試合でぼろ負けした。魔法剣士のほうが強そうだったんだがな、相性もあるのだろう。
私の出る団体は、知らんパーティーと黒百合の【黒百合姫】、ロイのところの【クロノス】と炎王の【烈火】、知らんパーティーと私。
ホムラ:私、ロイと炎王に賭けてたのに!
ペテロ:準々決勝からはブロックそのまま上がるんじゃなくって、組み合わせはまた抽選だからねw
お茶漬:自分に賭ければよかったのに
ホムラ:そんな不毛な。それに一方的になる試合に賭けても面白くないし。
菊 姫:一方的な自覚はあったでしね。
ホムラ:流石になんかちょっとおかしいと思いました。
シ ン:ちょっとなのかよ!
ホムラ:こう、シンとか見ていると自分は装備とスキル頼りだな的な。
努力の対価が強さにつながる、尊ぶべきことだが必ず報われるなどと現実世界ではまったく思わんのだが、こっちでは結構報われる。もうちょっとカルとの訓練時間増やしてもらおうか、シンを見てたら努力も悪くない気がしてきた。ここまで訓練の成果が全く生かされてないというか出番が来ていないが。
ペテロ:ホムラも500匹斬りとか一人闘牛大会とかやってるじゃない?
ホムラ:それは趣味。
レ オ:wwww
菊 姫:ひどい趣味でし!
お茶漬:そういえばホムラ、くるくるするの好きなハムスターだったっけね
シ ン:攻略方法考えてるより実際行って戦いたいよな!
基本やりたいことしかやっていません。
ハムスターが回し車を延々回すがごとく、そこに敵がいれば倒したくなるし、ダンジョンがあれば目当てのアイテムがでるまで延々潜るのは仕方がないことなのだ!
因みに私の場合アイテム=レアではないので、すでに低価格で投げ売られているものを「拾ったことがない」という理由で手に入れるべく同じボスを延々倒していたことがある。
具体的に言うと以前のゲームで『座布団』が欲しくて五日間こもった。呆れた友人がくれた『座布団』をいらんわ!! と叫んで投げ返した思い出。というか、五人がかりで私の部屋いっぱいに『座布団』を敷き詰めやがりましたよこのメンツ。お返しにそのボスのレアドロップ、『ボスの生首オーナメント』をそれぞれの部屋の入り口に家具テロしておいたが。売ったら高いのにその生首はテロ家具として、どんどん違う友人の部屋に回されていった思い出。でも最終的に十体に増えて全てがお茶漬の部屋に集結してた。
などと思っていたら試合の時間が来た。
あ、私もしかしてロイと炎王のところの試合観戦出来ないのか? 毎度お馴染み白い光に包まれステージに転移されながら思う。
◇【レンガード】vs 【アマテラス】◇
◇Ready◇
◇Go!◇
「【風水】『水たまり』」
相手の確認もしないまま始まると同時に仕掛けを少々。白がいないのだから自分でやるしかない。
「おっと! しょぼいな!」
大盾持ちの薄い緑の髪の剣士が叫ぶ、薄いのは色であって頭頂部ではない。
「ラッキーですの」
長い袖の中に半分隠れた手で杖を握るロリ魔法使い。
「NPCの限界が!」
オレンジの髪の話し方が男っぽいロリ武闘家、NPCってなんだ?
「気をつけて、これはこれで足を取られます!」
盗賊の猫耳で長めの黒髪の毛先だけ緩く丸まったやっぱりロリ。
他に無言の二人、金髪エルフロリ巨乳の聖法士とピンクの髪の魔法使いがもう一人。聖法士はまだ何も食らっていないのに回復魔法準備に入っている。
ロリばかりだなこのパーティー、そしてどの辺がアマテラス?
「速さ優先ですぅ! 『ふぁいあにーどる』」
呪文をやたら舌ったらずの言い方で唱え、初期魔法を放ってくる。ファイアニードルの出現本数が十本以上と多いので、本来なら高位の【火魔法】が使用できるのだろう。
「えっ!」
「ニードルとは言え、まりんのINT乗せてるのに……っ」
「ノーダメージかよ!」
「無効化!?」
ファイアニードルと聞いた時点で避ける気が無くなった。【火の制圧者】と『炎の雫』を加えた装備でホルスとやったときより【火】には強くなっている。スキル名を叫ぶのはやはりよろしくないようだ、イメージするのに慣れたらせっかく無詠唱があるのだし、ソロでは無言で発動するように癖をつけたいところ。逆にパーティーではお互いの行動がわかっていないと不都合が出るので、不要であってもスキル名はなるべく口にする。
そして今は避けるより速度を優先したい。
【雷魔法】『雷神の鉾』×3を早速無言で発動。
『湖』もあるがそこまで行くと深すぎる。
風水には『海』もあるがやはり深い。
直ぐに四散してしまって届かない。
氷は伝導率が悪い。
『水たまり』がちょうどいい。
空から降りた『雷神の鉾』は相手を貫き、そのまま水たまりのある床へ。雷に打たれた水はもう一度、水に浸かっているものに雷を返す。ダメージさらに倍! みたいな何か。
ダメージ増量は予測していたのだが、水面を走るピリピリとした電流と人同士の間に飛び火ならぬ飛び雷して横に稲妻が走る様子は予想外。
《レンガード WIN!》
すまん、私、ロイvs炎王みたいんです。




