121.闘技大会開始
やって参りました闘技大会。
宿屋で起きたらすでにお茶漬たちは出た後だ。仕事なんだから全員揃ってというのは難しいとはわかっていたことだが、イベント時だけは今でも少し寂しい。
シンの出ていた職別の試合はもう終了してしまったはずだ。一緒にパーティー戦に出る話もあったが、菊姫がPvPを好かない上に、私の帰る時間が不確定だったためにその話はすぐに流れた。
あれからクランハウスのための資金集めやら素材集めやら、アクセサリ配りがてら、ユリウス少年から新しい杖を、ルバからまだ装備できない不相応な刀剣を、ガルガノスからはズボン、ブーツ、小手などの一式を受け取るなどして過ごした。
私が島での宿泊予定日に仕事で帰ってこれないことに気づいて、慌てて自分の分の宿泊を延長しそこでログアウトしたり。現実世界の仕事中に一人なら『強者の夢城』行ってみてもよかったかな、と思ってみたり。
それより何より闘技場のSランク以上は、闘技場の転移プレート使用の許可がでていることに今気づいたり。無駄に散財してしまった。
『タシャ白葉の帽子』
『ヴェルナ白夜の衣』
『ファル白流の下着』
ガルガノスのデザインに【意匠具現化】で変更した
『鬼の腰帯』
『疾風のブーツ』
『技巧の手袋』
『ズボン』
アクセサリーは
ドラゴンリング『剣』『魔』
『アシャ白炎の仮面』
『散じた髪飾り』にファイア・ポリプのドロップで火属性強化、火耐性のつく『炎の雫』、憤怒のオークのドロップで継続HP回復がつく『生命の蕾』。
『身代わりのペンダント』
胸には『蒼月の露』。
武器は
『月影の刀剣』『白の杖』、ユリウス少年に新しく作ってもらったRank36の杖二本。
こう、ズボンだけ浮いているが、プレイヤーメイドとしては高性能だ、結局隣のダリアで購入した。元は真っ黒いレザーに太ももの外側辺りに流水紋と羽根が混じったような刺繍が刺してあるものだが、現在は『白夜の衣』などに合わせてガルガノスデザインの白いズボンになっている。
『浮遊のサイハイブーツ』は【浮遊】が付いていて面白いし、素早さと魔法攻撃力20%アップが付いているのだが、魔法攻撃力は基礎となる値が高いので20%効果は大きいのだが、素早さで見るなら『疾風のブーツ』に軍配があがる。お試しの闘技場チャレンジで素早さで上回れれば大変楽であることを学習しているので交換は無し。
『妖精の手袋』は知力と器用が上がるので替えてもいいのだが、器用だけで見ると『技巧の手袋』が少し上だ。知力は神々にもらった白装備で他をだいぶ上回っているはずなので、これも器用を取る。
ずっと台座に何もつけずに放っておいた『散じた髪飾り』にはボスドロップで出た宝石系で良さげなのをつけてみた。髪飾り自体の効果は"付けた宝石の効果を打ち消し合わない"という『白流の下着』についているものと似た効果で、通常反属性など打ち消しあう効果がそのまま反映される。
【火の制圧者】で火属性系からのダメージ半減、灼熱などの気候、溶岩などの地形からのダメージ効果無効もあるので、火に関してはダメージを受ける心配が格段に減った。
だめ押しに自分で強化した知力の指輪+6と力の指輪+6。左の小指が空いているが、普通の能力アップ系の指輪は3つつけると効果が打ち消されるようなので断念。隠蔽で消せるからいいが、5つも指輪をつけている現在。クロムハーツとか同系統の指輪ならありなのか?
杖は私好みの長さと持ち手部分の太さ、重さのバランスも素晴らしい。片方は渡しておいたクリスティーナのルビーがヘッドに使われている火属性強化と魔法攻撃強化のついた杖、片方はアクアマリンの付いた水属性強化と知力強化の杖。アクアマリンは渡しておいた普通のルビーを二つ売って手に入れたらしく勝手なことをしてすみません、とユリウス少年に謝られたが、私としても同じ属性の杖より違う属性の杖の方がありがたいので、気にするなと返した。
そのうち雷の杖を三本装備、チャージで派手に範囲魔法を落としてみたい気もするが、現状すべての属性がレベル上げ中だし。
ユリウス少年には迷宮で手に入れたブラックオパールなどの宝石と、私の島になる予定の場所で採取した樫の枝を渡して、すでに新しい杖を依頼してある。こちらは明朗会計なのでいいのだが、ガルガノスは「目の保養と、職人冥利に尽きる仕事をさせてもらった」と、代金を受け取ろうとしなくて困った。仕方がないので火酒とともにこちらにも生産に使えそうな宝石を置いてきた。後で何か考えねば。
ルバはあれです、二本目の剣の製作に入っていてほとんど話せなかったので軽食を机に置いてきた。
『白さんや、どう?』
装備を終えて白を召喚、見た目どんな具合か感想を求める。
『お主はまた戦闘外に呼び出しおって!』
ガブってされました。
肩に陣取った白を連れて闘技場へ転移する。闘技大会会場に行くと告げたら、白に私以外には姿を消すと宣言された。装備をチェックしつつ、クラン会話に参加する。私のほか三人しかおらんのは何故だ。時間は始まる四半刻前、シード権を使わず最初から参加できる時間に帰ることができた。もうエントリー自体は済ませているので、闘技場にさえいればあとは組み合わせ抽選時に、参加不参加の最終確認のお知らせウィンドウが開くくらいだ。
ホムラ:こんばんは
お茶漬:こんばん〜
ペテロ:こんばんは
シ ン:おー!
ホムラ:レオと菊姫は?
シ ン:どっちも始まる前にトイレ済ましに行った
ホムラ:なるほど。
転移プレートのある部屋には闘技場の係が何名かいて捕獲された。立て板に水のように挨拶されて個室というかボックス席に連れてこられた現在。どうやらSランクから上は特別扱いらしく、ここまでくる通路も一般客とは別だった。宿で用意してもらったペテロ達と連番の一般席チケットがあるのだが、ボックス席から見る一般席とその通路のあまりの人の多さに早々に一般席での合流を諦める。
席に着いたところで大会開始のドラムロールがちょうど始まった。
ホムラ:ちょっと今から合流するの無理そうだな。
お茶漬:ああ、僕らちょっと早めに来ても席までたどり着くの大変だった。
ペテロ:立ち見だったら潰されてるレベル。
シ ン:でも席までこれねぇと、ロビー観戦もきつそうだったぞ?
ホムラ:席自体はなんか事前登録でRankあげといたせいで用意されてて問題ない。
菊 姫:ただいま〜
ホムラ:おかえり
お茶漬:おかおか
菊 姫:ホムラもおかえり〜
ホムラ:で、用意されてた席がどうやらフルパーティー分入れるんだが来るか?
ペテロ:無理w
お茶漬:もう席から動けないレベル。
ホムラ:かなり快適なのに残念。
却下されてしまった、ボックス席結構広くてここに一人はボッチ臭が半端ないんだが。まあ、すでに着替えて仮面を被っている身としては、一緒にいない方が色々迷惑をかけないで済む気もする。
でも椅子は大きいし、足を乗せるオットマンはあるし、前に移動できるサイドテーブル付き、サイドテーブルに黒いプレートが付いていて触ったらメニューウィンドウが出てくるという……とりあえず、冷たいおしぼりとアイスティー、フライドポテトを注文。
すり鉢状に配置された客席の底、競技フロアの真ん中でこの国の王子の挨拶が始まる。始まると同時に、フロアの上空に現れる巨大ウィンドウに王子のどアップが映し出される。競技の様子がこの大画面で見られるのだろう。気づけば先ほどメニューを選んでいたウィンドウにも同じ映像が流れている。画面を切り替えてメニューに戻す。
『白は何か飲むか?』
『お主の茶ならなんでもいい』
まさかのメニュー拒否に、いそいそとアップルティーを出す私。かわいいヤツめ。
白を膝に抱き直して、サイドテーブルの上の茶を飲みやすいよう配置する。今日もいい毛並み。もっふもふですよもっふもふ。テーブルに体を伸ばす白を補助すると見せかけて、後ろから前足の付け根に手を入れるとほかの場所よりさらにやわらかいぽわぽわの毛が堪能できる。
おしぼりだけでも冷たいものと熱いものを選べるし、酒もワインから聞いたことのない名前のものまで各種取り揃えられ、それどころか人までメニューにある。なんですか種族から性別、肌の色、髪の色、胸の大小、年齢、格好って。オプションで孔雀の羽扇で扇ぎますっておい、ここのボックス席そもそも前がガラスもなく空いているのにどうやっとるか知らんが空調効いてるよ。
あ、でもマッサージいいな、マッサージ。仕事帰り直後だしな。いや、だがこの闘技場は最近まで18禁の罠があった場所、止めておこう危険危険。
美女五、六人侍らせてのハーレムごっこにも心惹かれるのだが、実行できない小心者です。
独りメニューにツッコミを入れている間に、ファガットの王子の本大会開会宣言が終わった。数日前の闘技大会全体の開会宣言の方は王だったらしい。魔物との戦いや、ハンデをつけられる拘束ステージ、達人達の演舞などは昨日までで終了している。本日は総合の個人とパーティー戦の二種だ。
ホムラ:そういえばシンの結果は?
シ ン:三回戦で負けた〜っ!
ペテロ:拳士部門優勝ギルヴァイツアw
シ ン:三回戦で当たって負けた!
ホムラ:それは残念。
お茶漬:拳士の決勝は中々見ごたえあったね
菊 姫:剣士と魔術の方は住人が優勝してたでし。
お茶漬:回復職同士の戦いはなんか白兎の獣人がメイス無双だった。
ペテロ:回復職のドラゴンリングの挑戦は、モンスター避けて味方を回復してゆくステージの方だしw
お茶漬:職的にメイス無双が聖王だったら困惑するしかない。
菊 姫:盾の人が何故か拳士の部に出てて面白かったでし。
レ オ:たっだいま〜〜〜っ!!
ホムラ:おかえり
シ ン:おー、すっきりしたか。
菊 姫:おかおか
ペテロ:おか
お茶漬:おかえり〜
ギルヴァイツアに後でお祝いのメッセージでも入れておこう。
王子に次いで進行役が競技ウィンドウの説明というか、ウィンドウからの賭けの仕方を終えると、賭けのオッズが示された画面から、競技参加の確認画面に変わる。
個人かパーティー戦を選ぶ種別は、個人を選ぶと自動的に参加人数は一名に。
後は「はい」を選べばブロック分けの抽選が始まる。ちょっと予定外なこともあったが無事開始できそうだ。
『こっちじゃろ』
『ん?』
白の肉球画面タッチ可愛い……などと思った間がいけなかった。
さっさと「はい」まで押されてしまう。
『ちょ! 白!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああっ』
『ええい! 情けない声を出すでない! 我もレベルを上げるのじゃ!』
総合のパーティー戦にソロで出場することになりました。




