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115.お互い聞いてない

「えーと。『異常回復』?」

戦闘前と戦闘中のやり取りからして、めったやたらと襲いかかってくる竜ではないようなので、青竜に毒からの回復を施す。勝利のアナウンスが流れたとはいえ、先ほどまで戦っていたので少し迷いながらだが。


「くっ、小さき者に回復されるなど」

「くっころさんは人型女性限定でお願いします」

不本意そうに言う青竜にすかさずペテロが言い返す。


「いやいや? 少年漫画でよくライバル男も言うだろ。そして、その前に殺せとは言ってない」

"くっ、殺せ"の略だったはずだ、略だったはずだよな?

 青竜に大きな傷はないが、細かな切り傷が全身にある、【猛毒】を切らさないようにペテロがつけた傷だ。『回復』をかけるたび、面白いように消えてゆく。バハムートはやっぱり特別のようだ。


「礼を言うぞ、小さき者よ」

いや、つけたのもこっちなんだが。答え難かったので無言で肩をすくめておいた。



「小僧、約束通り我が鱗を授けよう」

「ハイハイ、有り難く」

ペテロがぞんざいに答える。ドロップの鱗とは別なのかね?



「だが小僧、闇の世界を進むを望む者よ! そなたはそなたの主人を見つけよ!」

青竜が吠えるように言う。


「闇の中を歩くには目印となる光が必要だ。太陽でなくとも良い、標となる星のような光が!」


 この大げさな言い回し、相手の空気を読んでいない感……。

 あ。わかった、これヴェルスタイプだ。そりゃ、ぞんざいにもなる。自分にも雰囲気にも酔うタイプや、素直なタイプは盛り上がるかもしれんが、相手はペテロである。


「例えそれが小さき存在であっても、何もない闇の中を歩むには大きな助けと成るだろう!」


 やたら盛り上がってるな〜と思いつつ、自分には関係のないイベントなので聞き流すことにする、今までのドロップ(にもつ)の確認でもしようか。

 そう思ったのだが、聞き流すことにしたのは私だけではなかったらしくペテロからパーティー会話が来た。いいのか? イベントの進行者(しゅやく)



ペテロ:回復しなくて良かったのにw

ホムラ:確かに毒ってたほうが大人しかったかもしれんな

ペテロ:あ、死ぬ死ぬ詐欺な場面が浮かんで鬱陶しさ倍増した。【猛毒】あと二,三回入れられれば()れる気がするのにw

ホムラ:【猛毒】凄かった

ペテロ:真面目に"お仕事"すればホムラも貰えるんじゃないかな? むしろ対象に傷をつけるほうが大変ですよ?w

ホムラ:暗殺放置しとるなあ

ペテロ:薬士でももらえるかもねw

ホムラ:それにしても此処のステージ、綺麗だけど、集団戦は厄介そうだ

ペテロ:レオがお茶漬の上に水晶柱落とす様子が容易に想像できますねw

ホムラ:味方が敵だ! みたいな何か。

ペテロ:まあ、ここイベントステージだしねw普通、戦闘はこの手前のボスで終わりですよw



「そう小さな光でもいい!」


ホムラ:なんか青竜、話がループしてないか?

ペテロ:ごめん、誰か反応返さないとずっと言ってる。ひとこと言ってやってw

ホムラ:いやいや、イベント進行させてる人どうぞ。


「私に光など不要!」


ペテロはピンと伸ばし揃えた指先で、手を胸から横に払う仕草のサービズ付きでセリフを言った。


ホムラ:カッコイイ(棒)

ペテロ:フッ


パーティー会話中も二人して真顔だ。一応空気は読んで気を使っている。



「だが小僧、おぬしにも守るべき者があろう」

先ほどの高揚した口調とはかわって、諭すように静かにペテロに問いかける。

「そこな小さき者は強大なる我に恐怖することに耐えおぬしについてきたのではないのか!」

そしてまた強い口調で吠え尻尾を地面に打ち付ける。


「「え?」」

ほの暗い水の底のような空間で、水晶よりも青く輝く鱗の持ち主。その中でもひときわ光る縦に割れた眼が、どうだ、とばかりに私を見る。


 こっちに火の粉が飛んできた!


「いや、特には……」

怖くもないし耐えてもないのだが。言い切る前に青竜が話し出す。


「おお、隠さずとも良いのだ小さき者よ。今気を使うのはこの小僧のためにならん」

わかっている、わかっているというように小さく首を振る青竜。


「いや、本当に……」

「我の前で恐怖せずにいられるのは複数の神々の【祝福】持ちくらいなもの、恥じるにあたらん」

また最後まで言わせてもらえなかった。

 話聞かないなこのドラゴン!!!!


「ペテロ、このドラゴン、面倒臭い!」

「私もです」

あ、パーティー会話にするの忘れた。


「面倒とは何だ!」

青竜が首をもたげ吠える。吠えるたび尻尾を地面に打ち付け、浅く水の溜まった地面から飛沫があがる。吠えてばかりだなこのドラゴン、声を大きくすれば流されるとでも思ってるのか。


「話を聞け、私も【祝福】持ちだ」

正しくは【寵愛】持ちだが。

「ふん、一柱の神にならともかく、複数の神々に会った者がそうそういるものか!」

しかも、話を聞いたところで信じなかった!


「居るんだからしょうがないだろう」

もう帰っていいか?


「そう言うならば、我に証明してみせよ! 我を恐れ虚勢をはる者でなく、我を恐れぬだけの愚か者でもないことを!」

「了解」

若干イラっときたので即答して、浮遊がかかったまま地面をければ、大したスピードでもない上昇でふわりと上方の水晶柱に着地する。青竜と目線が合う位置、結構な高さだ。



 掲げた手に出現する本来私の職では持てないはずの大剣。

 初めて使うが、ガラハドたちのレプリカ版であれなのだから威力は保証付きだろう。

 少し狙いをそらす。目的は倒すことではなく、威力を見せること。


 青竜に応えて放つその技は。



「【断罪の大剣】」



 竜の顔だというのに驚愕が見て取れる青竜、発動は私が剣を振り切る間の短かさ、もう止められない。


 華美な大剣は光の大剣へ。

 青竜をも凌駕する巨大な剣は、透明なガラスの剣に光が集まっているようにも見える。

 振り切ればなんの抵抗も感じないまま狙い定めた場所に激突し、光をばら撒き砕けてゆく。

 砕けてゆくのは仮初めの剣だけではない、剣の軌跡にあった水晶柱、その周囲、青竜の隣の地面。

 全てが砕けてゆく。



 なんというか、青竜狙わなくてよかった。

 ガラハドで五メートルほど、スキル的には同じかとも思ったのだが、使えるようになるまでの戦闘時間がガラハドたちより遥かに多く必要だったので嫌な予感はしたのだ。



《名を持つ竜を怯えさせたことによりスキル【畏怖】を手に入れました》

《相手を圧倒する気に関わる3つのスキル【畏怖】【覇気】【威圧】を確認しました。スキル【畏敬】を取得しました。これにより【畏怖】【覇気】【威圧】は統合されます》



 床に溜まった水が音を立てて穴に吸い込まれている現在。

 ちょっと巻き込んでしまった青竜に慌てて回復をかけ謝るプレイ。

 ビッタンビッタンしていた尻尾が丸まってしまっているが、でかい竜にプルプルされても可愛くない。


「完全に必殺技で殺しに行ってた」

ペテロが笑いながら感想を述べる。

「ここまで派手になる予定じゃなかったんだが。あれか、"私、怖かったけどペテロに脅されて仕方なく……"とか言って泣き崩れたほうがよかったか?」

「気持ち悪いから止めて」

即答された。


 たまたま使用可能になっていたもので……スキルは本番使用する前に確認しとかんといかんな、反省、反省。


「で、鱗は貰えるの?」

私が心の中で反省していると、ペテロが水の中に細かく散乱した水晶を踏み割りつつ、崩れ倒れた水晶の方を向いてぷるぷるしている青竜の正面に回り込んで聞いていた。

 もうちょっと立ち直るのを待ってやってくれと思わんでもないが、やった本人なので黙って見守る私。


「もちろんだ!」

おたおたと慌てる青竜の額から手のひら大の光がペテロの元へとゆっくり向かって行き、ペテロが手に取るとそれは青い半透明な一枚の鱗に変わった。


「その鱗からできる指輪は二つ。一つはお主、お主が生き延びる確率を上げる。一つはお主が定めし守るべき者、仕えるべき者に。指輪同士が傍にあるとき、我が名を呼べば我が助けとなろう」

ペテロが青竜を呼び出せるってことだろうか。

 先ほどから回りくどく伝えようとしていたことはこのことか。


「我が名は『・・・・・・』」

私が白を白と呼んでいるように、ナルンもパルティンも通称であって【真名】ではない。例え、通称と【真名】が一緒であったとしても、本人から名を告げられるか、あらゆる生物の【真名】が記されている伝説の書を開いて名を呼ぶかしか効力を発揮しない。

そして『真名の書』はページが分かれ散逸してしまっている。


 私はこのイベントを進めていないので、資格がないらしく、青竜から告げられる名は聞き取れなかった。

なんかいっそ強請れば頼みを聞いてくれそうな様子ではあるが。こっちをちらちら伺いながら、目が合うと視線を逸らしてぷるぷるするのをやめてほしい。【断罪の大剣】はゲージ空でもう使えないし今は無害ですよ~とアピールしたくなる何かだ、面倒臭いですこのドラゴン。



 無事(?)ペテロのイベントも終了したらしく、街へ戻る。


「じゃあ、ヴェルスから貰えるんだ?」

「ああ、ただガラハド達もアシャの【祝福】持ちだったし勇者系の複合スキルかもしれん」

「うへ、大変そう」

劣化しても構わないというので【断罪の大剣】を取得した時のことを話す。


 ペテロはお茶漬ほどではないがネタバレ掲示板を利用して、広く浅くで色々手に入れるタイプだ。そして、持ち前の変な拘りを発揮して自力で新しいイベントに遭遇し、劣化した能力を補っている。

 高いという能力がみんな暗殺系や隠密系なのはまあ、こだわりと行動がそっち方面に発揮されているのだろう。


 ピンポイントで高い能力があるならば、他を多少劣化しても広くいろいろ取得して組み合わせるのはありかな? と思う。スキルリストに載ったものを取捨選択したり、自分のスキルを把握して使いこなす前提だが、そこも含めてペテロに向いている。


 ところで私は神々に数度会って【寵愛】をもらっているが、ペテロは【守護】と【祝福】【加護】だそうで【寵愛】は数回あっても出たことがないそうだ。【祝福】を知らないまま遭遇の時に、【加護】を掲示板で遭遇場所を知ってからもらい、【守護】は数度あってから、なのだそうで【守護】>【祝福】>【加護】の順で効果が高いと検証されているそうだ。

 やっぱり事前にネタバレしてると下がるのかな〜と言っていた。



 これから今度は指輪の製作クエストですよ、と疲れた感じなペテロと別れ、私は夕食と風呂のためにいつもの宿屋に戻ってログアウト。

 もどったらいよいよ大勢がログインしてくる夜の時間帯だ。


 店はどうなってしまうのか。

 混み出す前に行列で迷惑かけそうな両隣に挨拶をしておこう……。

 

そしてちょっと【猛毒】が欲しくなっている私、憑依対策(アクセサリー)を渡しがてらピエグ老師のところに顔をだそう。


【畏敬】は存在により周囲に畏敬の念を抱かせる。保持者に対して、敵意を持つものには軽い行動阻害から気絶を、好意を持つものには鼓舞と高揚を付加する。付加する強さはレベル差、もしくは相手の持つ印象による。印象は主に戦闘に勝利することなどで変化、だそうな。



□   □   □   □

・増・

スキル

【畏怖】・・・周囲に畏れと怖れを振りまき、敵味方問わず動きを阻害する。

【覇気】・・・強い意志で周りを圧倒、レベル差-10の敵の動きを阻害、仲間の鼓舞と高揚。

【威圧】・・・威を持って周囲を圧し、レベル差-10の敵の動きを阻害、レベル差-20の敵を気絶させる。

  ↓

【畏敬】

□   □   □   □



ホムラ Lv.38

Rank C

クラン Zodiac

職業  魔法剣士 薬士(暗殺者)

HP   1408

MP  1887

STR 101

VIT 55

INT 205

MID 67

DEX 67

AGI 111

LUK 119


NPCP 【ガラハド】【-】

PET 【バハムート】

称号

■一般

【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】

【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】

【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】

【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】

【防御の備え】【餌付けする者】【環境を変える者】

【火の制圧者】【絆を持つ者】【漆黒の探索者】

【惑わぬ者】【赤き幻想者】【スキルの才能】

【快楽の王】

■神々の祝福

【アシャの寵愛】【ヴァルの寵愛】

【ドゥルの寵愛】【ルシャの寵愛】

【ファルの寵愛】【タシャの寵愛】

【ヴェルナの寵愛】【ヴェルスの寵愛】

■神々からの称号

【アシャのチラリ指南役】

【ドゥルの果実】【ドゥルの大地】【ドゥルの指先】

【ルシャの宝石】【ルシャの目】【ルシャの下準備】

【ファルの睡蓮】

【タシャの宿り木】【タシャの弟子】【タシャの魔導】

【ヴァルの羽根】

【ヴェルスの眼】

【神々の印】

【神々の時】

■スレイヤー系

【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】

【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】

【バードスレイヤー】【鬼殺し】

【ドラゴンスレイヤー】

■マスターリング

【剣帝】【賢帝】


スキル(7SP)

■魔術・魔法

【木魔法Lv.33】【火魔法Lv.30】【土魔法Lv.31】

【金魔法Lv.30】【水魔法Lv.30】【☆風魔法Lv.30】

【☆光魔法Lv.32】【☆闇魔法Lv.31】

【☆雷魔法Lv.32】【灼熱魔法Lv.23】【☆氷魔法Lv.32】

【☆重魔法Lv.30】【☆空魔法Lv.30】【☆時魔法Lv.34】

【ドルイド魔法Lv.30】【☆錬金魔法Lv.24】

■治癒術・聖法

【神聖魔法Lv.36】

【幻術Lv.5】

■特殊

【☆幻想魔法Lv.5】

■魔法系その他

【マジックシールド】【重ねがけ】

【☆範囲魔法Lv.36】

【☆魔法・効Lv.31】

【☆行動詠唱】【☆無詠唱】

【☆魔法チャージLv.27】

■剣術

【剣術Lv.35】【スラッシュ】

【刀Lv.35】【☆一閃Lv.29】

【☆幻影ノ刀Lv.20】

【☆断罪の大剣】

■暗器

【糸Lv.41】

■物理系その他

【投擲Lv.15】

【☆見切りLv.33】

【物理・効Lv.22】

■防御系

【☆堅固なる地の盾】

■戦闘系その他

【☆魔法相殺】【☆武器保持Lv.35】

【☆攻撃奪取・生命Lv.26】【☆攻撃回復・魔力Lv.30】

【☆スキル返しLv.1】

■召喚

【白Lv.14】

【☆降臨】『ヴェルス』

■精霊術

 水の精霊【ルーファLv.23】

 闇の精霊【黒耀Lv.34】

■才能系

【体術】【回避】【剣の道】

【暗号解読】【☆心眼】

■移動行動等

【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】

【☆空中移動】【☆空中行動】

【☆水上移動】【☆水中行動】

■生産

【調合Lv.39】【錬金調合Lv.42】

【料理Lv.43】【宝飾Lv.32】

【魔法陣製作Lv.23】

■生産系その他

【☆ルシャの指先】【☆意匠具現化】

【☆植物成長】【☆緑の大地】

【大量生産】

■収集

【採取】【採掘】

■鑑定・隠蔽

【鑑定Lv.43】【看破】

【気配察知Lv.43】【気配希釈Lv.42】【隠蔽Lv.42】

■解除・防止

【☆解結界Lv.5】【罠解除】

【開錠】【アンロック】【盗み防止Lv.24】

■強化

【腕力強化Lv.11】【知力強化Lv.13】【精神強化Lv.13】

【器用強化Lv.11】【俊敏強化Lv.12】

【剣術強化Lv.11】【魔術強化Lv.11】

■耐性

【酔い耐性】【痛み耐性】

【☆ヴェルスの守り】【☆ヴェルナの守り】

■その他

【HP自然回復】【MP自然回復】

【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】

【装備チェンジ】

【生活魔法】【☆ストレージ】【☆誘引】

【☆風水】【☆神樹】【☆畏敬】



☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの

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