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113.ハウス取得クエスト

 朝っぱらから店舗で生産をしている私。

練金と調薬の施設三階にしておいてよかった。そしてもう布団はいいかな……宿屋暮らしに馴染んでしまった。


 二階のキッチンを使っていいとカルとレーノに設備の使用登録許可出しているんだが使っている様子がない、料理できんのかね? カルはともかくレーノは出来そうなきがするが。なにせパルティンが料理するイメージがこれっぽっちもうかんでこんからな。



 バターかジャムを選べるトーストが二枚。

 ベーコンエッグを乗せたトーストが一枚。

 粒マスタードを入れたローステッドポテトとサラダ、

 白身魚のフライ、コーンポタージュ。

 オレンジにシナモンラテ。


 二人ともコーンポタージュとタルタルソースも好きな模様。お子様受けする料理全般を出しておけば、間違いなさそうな大人二人である。


 トーストを追加で焼いてジャムも追加する羽目になった。

 本当にこの二人大丈夫か?

 パンにも山盛りつけそうだし、ちょっとこの二名のためにも米をですね。


「ホムラはバターだけですか?」

「いや、気が向けばジャムを乗せることもあるが」

二人のべったりジャムを塗ったトーストを見ていたら、食べていないのにすでに私の中の本日の甘味の許容量が終了しただけだ。つやつやした『ブラックジュエルベリー』のジャムは出した時はつける気満々だったのだが。


 なんでこの二人に注意しないのかって?

 すでに私が本日朝食二回目だからです。宿屋で一度食った後だ。

 生産するとEP(はら)が減るんですよ……。むしろ生産中にももぐもぐしてました! 消費していればいい……、消費していればいい……のか?



 トリンの店は商業ギルドと神殿の間のメインストリートにあるが、思ったより小さな店だ。

 昨日のうちに連絡を入れて朝早い時間なら、ということで今になった。プレイヤーの店や少ないがギルドハウスの依頼で大忙しらしい。

 大通りを歩くプレイヤーは思いの外少ない、広場やプレイヤーの店舗の集まる南西地区で事足りるため、皆んなこの通りは馬車使用でスルーなのだろう。歩いているのは住人ばかりだ。広場から神殿までのこの道はメイン通りで大店が並ぶ、服屋や靴屋、貴金属店など、ただし防御力や追加能力とは縁遠い店ではあるが。


 カルとレーノは二人で軽く迷宮に潜りに行っている。カルが病み上がりならぬ、怪我から復帰したてなため、どれほど体が動くか浅い場所に試しに行くのだと言っていた。レーノは付き合いだ、何気に社交性の高いドラゴニュートである。

 迷宮に潜ればすぐ補填できるだろうに、わざわざ開店前に渡した金を転移に使っていいか聞いてきたカルも律儀だが。


 ああ、日曜ならぬ光の日は定休日にするかな。カルはエカテリーナに返す『幻想の種』と『光の妖精の鱗粉』を手に入れに迷宮通うんだろうし。夕食後に出ても翌日昼に戻って徹夜のまま店の用心棒というのもキツそうだし、午後だけの短い勤務時間とはいえ、必ず拘束時間があるというのはなかなか自由に動けないだろうしな。


 攻略に関してはエカテリーナも全く心配している様子もなかったし、大丈夫なのだろう。『湖の騎士』殿はどこまで強いんだろうか。

 あ、近接対人のこと聞くの忘れた。



扉を開くと応対しようとした従業員を止めてトリンが出てきた。


「おはよう」

「おはようございます」

挨拶を交わして握手をする。


「どうぞこちらへ」

聞けば本店はサーにあるのだと言う。ファストの方が断然客が多いらしいが、本店を移す気はないらしい。

カウンターの横を通って接客用の部屋に通される。落ち着いた趣味のいい店である。

 接客用といっても飾り棚がある様な部屋でなく、資料の棚に囲まれた能率的な部屋である。ただ現実世界と違ってファイルもまた、ピンで留める加除式の革張りで重厚なものなので一見、書斎か図書室に見える。


「忘れないうちに鍵をお渡ししておきましょう」

酒屋の裏口のスペアキーを受け取ると、目の前にファイルを幾つか積まれる。

 先にメールで連絡をいれているので準備をしてくれていたようだ。ちなみにこちらの住人にメールを送ると、送信を選択した時に一度目の前に封書が現れ消えてゆく。どうやら魔法で手紙(げんぶつ)を送っている扱いな模様。


 トリンの店は設計士と大工と両方抱えた地力のある老舗だ、トリン本人も両方のスキルを持っている。

 ファイルには家の間取り図とその間取りに必要な『建築玉』の種類と個数、内装用の『意匠玉』が幾つ必要かが書かれていた。一般的な間取り図のファイルが一冊、領主館じゃないのかこれ? という豪華な間取り図のファイルが一冊。床材や壁、柱、天井、その他多彩な内装用の別ファイル。屋根や外壁、外観のファイルなど。


 『建築玉』一つ5,000,000シル、『意匠玉』一つ1,000,000シル。一玉一部屋、もしくは一内装、中身は別途料金。『建築玉』にいれられるのは決まった木材オンリーなため、それだけだと仮小屋のような外見になるそうだ。『建築玉』で間取りを決めたり増やしたりして、『意匠玉』で壁などを好みに入れ替えてゆくらしい。あと、扉や窓、階段なども『意匠玉』でつけるそうだ。

 イメージ的に『建築玉』で箱をくっつけて行って『意匠玉』で家として整える感じか? 『建築玉・部屋S』『建築玉・部屋L』とか表記があるので間違えてはいないと思う。


 説明を聞いて、一般的な間取り図で廊下が少ないものが多いのは、廊下で『建築玉』一つ5,000,000シルがかかるからか、と納得する。普通に建てた建物とはご予算の関係で間取りにも違いが出るようだ。


 もっともファストも街壁内の土地が制限されるため、廊下は元々贅沢扱い、さらに言うなら権力財力の象徴になっとるそうな。

 長い廊下自慢ってどうなんだそれは。雑巾掛けレースでもするんだろうか。


「一部屋、二部屋建てて、資金が貯まったら気分で好きなように増築される方もおられますが、後々生活面で不便になりますので最初に間取りを決めて計画的に増やしていったほうがいいですよ」

「そうしよう、さすがに一度には無理な金額だ」

「『建築玉』『意匠玉』が高いのは素材が手に入りにくいからです、持ち込みされるのであれば半額程度には抑えられますよ。腕のいい冒険者に素材集めを依頼するのも手ですが、ただ今度は依頼料が高い」


「それに実は問題もありまして」

「なんだ?」

「現在、王都で城の大規模な改修が予定されています。ロブスター侯爵名で御触れが国中の建築関係者に回されておりまして、ここファストにも人か物資の提供をするよう通達がきています。どちらか都合を付けない限り営業はまかりならんとのことです。モスギルド長をはじめとして商業ギルドの方々が頑張ってくれたおかげで商業ギルド経由の依頼だけは受けられるのですが……」

苦笑いしながらトリンが言う。


 こんなところでファイナのゴンドラの船頭から聞いた名前が出てくるとは思わなかった。

 依頼を受けてしまうと、私にも迷惑が行く可能性があること、商業ギルドも店舗以外は斡旋できないだろうとのこと。横暴だなロブスター、ロブスターロールにしてやりたい。


「人を出してしまうと営業そのものが滞りますし、現在物資のほうを集めているのですが国中の建築関係者が集めていますからね、なかなか……」

「物資というのは何なんだ?」

「現在足りないのは、ファイナのダンジョンで取れる『基礎石』、迷宮産の『オークの藁』『オークの木』『オークのレンガ』ですね。他は一般的に手に入る素材なのでなんとか確保しました」


 『基礎石』以外はものすごく心当たりがあります。そういえばお茶漬がクランハウスで自室製作に必要って言っていたっけな。内装に使うとかいう話も聞いたが、内装は内装でも城の内装だったのかもしかして。


「取ってこようか?」

「ありがたいですがなかなか大変ですよ?」

「『長男オークの藁』『次男のオークの木』『末っ子のオークのレンガ』で合っているならすでにいくつか持っているぞ?」

「本当ですか! それなら是非譲っていただきたい。他に冒険者にも依頼を出しておりますし、できれば各三つずつ。それだけ頂ければ役人が来たとしても物資を入手するための取引だと言い抜けられます」


 家を建てるのに値段の目安になるリーフレットをもらい、『基礎石』のあるダンジョンの場所を聞き、店を出る。嬉しいことに一度納めてしまえば、二度目の依頼も受けてくれるそうでクランハウスの時にもう一度納入する必要はないようだ。

 ついでに『建築玉』『意匠玉』の素材が手に入る場所を聞いた。


 ファイナの『ウォータ・ポリプの卵』、ファガットのラコノス島付近で釣れる(・・・)定着貝(ていちゃくがい)』、アイル側のナルン山脈で採取できる『建草(けんそう)』、バロン側のパルティン山脈で採掘できる『内包粉(ないほうふん)』。

 これらを錬金で合わせて『ブランク玉』にして持っていけばいいようだ。『建築玉』『意匠玉』にするには、それぞれ建築士と大工のスキルがいる。そのうちプレイヤーも作れるようになるのかな? それともすでに作れるのだろうか、木工持ちの友人がおらんので情報がさっぱりだ。


『ブランク玉』には赤と青があって、『建築玉』『意匠玉』にも赤と青があり、入れられるランクが違う。赤はきっと『ファイア・ポリプの卵』でできるのだろう。

『ブランク玉』を持って行くとそれぞれ半額、『建築玉』『意匠玉』を持って行くと一律50万、プラス入れるものの価格で済む。


 釣りがネックだな、レオに頼もう。

 ウォータ・ポリプの卵は何に使うか謎なまま倉庫に放り込んである、でも混む前にもう少し確保しに行こうか。どうせならみんなで取りに行った方がいいな、夜まで保留だ。

 さて、どうしよう。古本屋はまだ開いていないだろうしユリウスとルバの様子は気になるが、ユリウスのほうは顔を出すと催促してるみたいだしな。


 薬師ギルドに行ってピエグ老師に憑依よけを渡してからなら古本屋の開く時間になるか。

 行動を決めて歩き出す。歩き出したところでペテロからのヘルプ要請。



ペテロ:ホムラ、手空いてる?

ホムラ:おー。こっちの時間で夕方までなら、その後は飯落ち。

ペテロ:手伝ってw

ホムラ:了解。どこだ〜?

ペテロ:ナルンの青竜〜。サーまで迎えに行く。





 本日の予定が決まった。




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― 新着の感想 ―
そのジャム下さい。 こういう世界の仕組み?的なのも楽しい。 青竜登場予告が、思ったより手前だった。
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