98.騎獣探しにパルティン山脈へ
寝るというシン達と別れてジアース国ファストに戻る。まだ起きているというお茶漬とドロップ品を売りたいという菊姫を連れて転移。
「ありがとうでし〜、売ったら寝るでし〜」
そう言って走り去っていく幼女、スカートが短い。パンツ見えるぞパンツ。
「僕も新しい街着、買おっかな」
「ミニスカ見ながらまじまじと言われると穿きたいのかと思ってしまう」
「要望があれば?」
「無いわ!」
お茶漬は毎度線の細い金髪の美形を作る。そしてかっこいい服も着るが、ハートのフレームのサングラスだとか、ビビットピンクのラメ服やら股間に白鳥がついたチュチュやら過去のゲームでも色々着ているので本気なのか冗談なのか判断がしづらい。
さて、お茶漬とも別れて私はアイルへ転移。
【魔法陣製作】を取得して、いい加減憑依防止用アクセサリーを仕上げねばと、魔法陣の見本が載っている本を買いに来た次第。ついでに雑貨屋で販売用の装飾品の材料を買い込もう。
……明るかったらティガルの星屑を掘りに行く予定、今正午なので大丈夫だろう。
アイルには図書館という魅惑の建物があるため油断するとあっという間に時間が過ぎる。
一応プレオープン予定とした日にまだ四日ある。現実世界で明日――もう今日か、が、休みでなかったら予定が合わなかったな、とおもいつつ本屋を目指す。
さすが魔術・学術の都市だけあって本屋・古本屋が多く、専門書もたくさん扱っている。正直、何について書かれた本なのか、棚の分類を見るまで見当がつかないようなものまで。
【魔法陣製作】に消費したSPは2とリーズナブル。戦闘関連は自分の職業系列以外のスキル取得に5かかるというのに。EPでなくMP消費で発動する『火加減』とかはそもそもSPいらんかったし。
生産スキルは何かを"強化"したり失敗したものを"一つ前の作業に戻す"などの便利スキルの取得ポイントが高いそうだ。お茶漬の言っていた【解体】だったかもきっと取得するためのSPは高いに違いない。
私は同じ作業をコツコツ続けたことが少ないこともあるが、そもそも生産職メインでないためそういったスキルは発現し難い。これから店舗での販売に向けてせっせと同じものを作ればそのうち出てくるかもしれない。SPのことを考えると取ることはなさそうだが。
【魔法陣製作】のレシピ代わりの本を無事ゲット。ついでに数冊本を買い込む。宝石や金属の属性との相性、宝飾デザインの本、アイルの歴史、その他諸々。魔法陣を描くための特殊なインクの調合書、こっちは練金と調薬だ。流し読みしたところによると、下位のインクは調薬でも作れるが、特殊なインクは練金でしか作れない、とのこと。
街をそぞろ歩きたくなるがぐっと我慢して循環馬車に乗り南の門まで。
都市同士を結ぶ馬車もでているが走ったほうが速いのだ。街中でプレイヤーが走っているのを見かけることもあるが、衛兵さんとか警備さんが何か緊急事態か!? と勘違いして追っていったりすることが多々あり見かける頻度は減ってきている。
イギリスのヴィクトリア朝でも参考にしたのか「ヒュー・アンド・ クライ」もあるらしく行く先々で住民が口笛や指笛を吹き、あるいは悲鳴をあげ衛兵や警備に犯罪者の場所を教える。
そういうわけで「逃げている」と勘違いされたプレイヤーが何人かかなり恥ずかしい思いをしたらしく、今では街中で走法を使うことはほぼない。
米の情報をくれたオルグじーさんにも挨拶くらいしたいが、まあ、アクセサリー作ってから改めて来よう。観光地らしく普通より大きく切られた馬車の窓からオルグ卸商の荷馬車の出入りがひっきりなしな活気溢れる店先を見てそう思う。
実は私の酒屋の作りはじーさんの卸屋の間取りを参考にしている。小さな事務所、荷馬車が直接入れる倉庫。規模はだいぶ違うし、扱うのも酒だけなので多少御洒落にはしてある、というか設計士のトリンが御洒落にしてくれたのだが。
途中、少し進路を変えてルルシャかドォラの都市に寄ろうかとも思ったが、騎獣を優先。騎獣を取得できれば楽に行けるようになるはずだし。
ルルシャとドォラを結ぶ都市の結界を越えると、問題ない範囲ではあるが途端に敵が強くなる。北東方面と違ってこちらは虫系の敵のようだ。
芋虫毛虫はいい。
蜘蛛も百歩譲っていいとする。
だがしかし、蝶が! 蛾が!
鱗粉があああああああああああああああっ!!!!
強さ的には問題なかったのだが、私の心情的には修羅場だったことだけ記しておく。
昔は平気だったのだが、何かで毛虫からさなぎになる時、さなぎの中で一度ドロドロに溶けて蝶になる、というのを見てさなぎと蝶、蛾が何故だか苦手になった。変態前の青虫ならつまめるのだが蝶はダメだ。年がいってから冷静に考えると蝶や蛾だけが虫の中で特殊というわけでもなさそうなのだが、子供に刷り込まれた苦手意識は大人になっても抜けない。
魔法を連発、見える範囲を殲滅してうっかりレベルが上がった。
きれいな蝶が飛んでいるのを見るのは平気だがな。鱗粉が届かない範囲で。
「おいで、白」
疲れた心に白のもふもふである。
「ぬ、ちゃんと続けて戦闘に呼ぶとは」
あ、しまった忘れていた。
よし、言わなければほかの理由で呼んだなんてばれない。
素知らぬふりをして白をもふりながら進む。
人が縁を結べる騎獣はアイルのパルティン山脈の麓辺とのことでやってまいりました山麓。山に近づくにつれ敵が強くなったが、虫系の敵が減ったのでむしろ快適!
ついでに採取、採掘。そしてスキル外の山菜採り! もう夏の山菜が多く見られ、春のものは本当にギリギリだった。収穫期の延長すばらしい。
ワラビ、コゴミ。ワラビやらゼンマイやらの食える部分の所はこちらでは『祭司杖』とか呼ぶらしい、見たことがないがきっと形が似ているのだろう。
アザミ……現実世界で市販されている山牛蒡の漬物みたいなのは大体アザミの根だ。ちなみにヨウシュヤマゴボウには毒がある、大きな柔らかい葉っぱでブドウのように紫色の実のなるそれは、子供の頃よく遊びに使ったものでもあるのだが。
結構身近な所に毒のある植物は生えている。紫陽花の葉、水仙、そういえばバーベキューでよりによって夾竹桃の枝で箸をつくったか串にしたかで中毒起こした人もいたな、と思いながらせっせと摘んで行く。後から来る人に一つ、育つ枝のために一つ、と二つ残す。全部摘んでしまうのは反則だ。
タラノメ、コシアブラ……この辺は天ぷら万歳だ。
アケビの若芽、三つ葉、オオバギボウシ。
あれだ、夏の山菜は他にもあるのだが、私が食べたいものがほとんど春のものだ。本当に間に合ってよかった。あ、つくしやオオバコやらはわざわざとって食うほど好きでないのでとりません。そして何が楽かって、面倒がらずに【鑑定】すれば似た毒草がすぐにより分けられること。セリとドクゼリ一緒に生えてるのはなんとかしてほしいが。
そして野生のワサビ!!!!!
米の消費が早まる危険物!!!
西洋ワサビだけど!!!!
採取の合間にも沢で黒銀砂鉄なるものを採掘したり、赤ヤマシギという炎の玉を吐いてくる美味しそうな……じゃない、危ない魔物と戦っている。
一応【気配察知】と【糸】とを使っているのだが、一匹二匹と少ない数で現れる敵は白がやる気なので任せる……のは時間がかかるので白が状態異常を入れたら魔法で仕留める。
白はスキルは色々あるらしいのだが、現在MPが低くて使えないものが多いらしくぼやいていた。
沢の岩陰に逃げ込んだヤマメだかイワナだかを、釣りをしなくても捕れるんじゃないかと岩陰に手を突っ込んだら、影は存外深く、魚の魔物に手を噛まれるなどしたので魚は本職に任せようと誓った。
白にはまた何やってるんだコイツ、みたいな顔で見られた。
ところでだいぶ前から視線を感じるのだが、なんなんだろうな。
【気配察知】で見て敵ではないっぽいので放っていたがそろそろ煩わしい。魔物との戦闘のたび、物影からうっすらと殺気を漂わせてくるのがイラっとくる。白も気にしている様子だが、なんなんだろうか。
春に生る木苺は少しだけあった、夏のブラックベリーが今は盛りの中、『ブラックジュエルベリー』の採取ポイントを見つけたので白のために多めに摘みながらそっと糸を飛ばす。
レベル40で【糸】に『捕獲』が出ているので丁度いい。
そしてこの『捕獲』、気付かれずに時間をかけて何重にも糸を張り巡らせることにより効果が高まる。出た時は戦闘中そんなことするくらいなら攻撃魔法入れるわ! と思ったが思わぬところで試せるようだ。
二重、三重……七重、八重、様々な方向から取り囲む糸の包囲を増やしてゆく。
「うわああああああああっ!」
一気に締めたら男の悲鳴。
「なんじゃ捕まえたのか?」
「きになるからな」
発生源を見に行けば、糸でぐるぐる巻きになったエビフライのような何か。
「えーと、リザードマン?」
「違いますよ! 失礼な!!」
なんだか鼻のないつるんとした顔の爬虫類の目と青っぽい肌の男が地面でもごもごしている。
【鑑定】したらドラゴニュートさんでした。
レベルが高いのだろうか、【鑑定】しても大した情報は拾えない。まだゲーム紹介に出ていた狼の獣人ともお会いしていないんですが?
「で? なんでこちらの後をつける?」
「……」
「黙秘?」
「そちらこそ人族がなぜこのパルティン山脈に?」
「騎獣を探しに」
「「えっ」」
「え?」
「てっきり食材探しじゃと……」
「人を乗せる騎獣がいるのはもっと山裾の方でしょう!」
「あれ?」
山菜採りに夢中でだいぶ山の中を来てしまったようだ。
とりあえずベリーで真っ赤に染まった白の口元に『浄化』。
私の服と靴に『浄化』。
「ごまかすでないわ!」
無言で綺麗にしていたら白にツッこまれた。
思い切り『ブラックジュエルベリー』食べまくってたくせに、おのれ!
「ちょっと、いい加減自由にしてくれませんか?」
下から苛立たし気な抗議の声が上がる。
「いや? 怪しいのは変わらんし、普通に断る。せめて名乗れ」
「仕方ないですねぇ」
剣呑な声色でつぶやいたドラゴニュートから気が吹き出す。
糸を切る気か!
「白、噛んじゃいなさい」
「面倒じゃのう」
そういうわけで私の足元には【毒】【麻痺】がついてピクピクしているエビフライもどきが転がっているのだが、どうしたものか。
□ □ □ □ □
・増・
レベル+1
スキル
【魔法陣製作】
□ □ □ □ □
ホムラ Lv.37
Rank C
クラン Zodiac
職業 魔法剣士 薬士(暗殺者)
HP 1341
MP 1770
STR 87
VIT 46
INT 173(+1)
MID 58
DEX 56(+1)
AGI 96
LUK 94
NPCP 【ガラハド】【-】
PET 【バハムート】
称号
■一般
【交流者】【廻る力】【謎を解き明かす者】
【経済の立役者】【孤高の冒険者】【九死に一生】
【賢者】【優雅なる者】【世界を翔ける者】
【痛覚解放者】【超克の迷宮討伐者】
【防御の備え】【餌付けする者】【環境を変える者】
【火の制圧者】【絆を持つ者】【漆黒の探索者】
【惑わぬ者】【赤き幻想者】
■神々の祝福
【アシャの寵愛】【ヴァルの寵愛】
【ドゥルの寵愛】【ルシャの寵愛】
【ファルの寵愛】【タシャの寵愛】
【ヴェルナの寵愛】【ヴェルスの寵愛】
■神々からの称号
【アシャのチラリ指南役】
【ドゥルの果実】【ドゥルの大地】【ドゥルの指先】
【ルシャの宝石】【ルシャの目】【ルシャの下準備】
【ファルの睡蓮】
【タシャの宿り木】【タシャの弟子】【タシャの魔導】
【ヴァルの羽根】
【ヴェルスの眼】
【神々の印】
【神々の時】
■スレイヤー系
【リザードスレイヤー】【バグスレイヤー】
【ビーストスレイヤー】【ゲルスレイヤー】
【バードスレイヤー】【鬼殺し】
【ドラゴンスレイヤー】
■マスターリング
【剣王】【賢王】
スキル(7SP)
■魔術・魔法
【木魔法Lv.33】【火魔法Lv.30】【土魔法Lv.31】
【金魔法Lv.29】【水魔法Lv.30】【☆風魔法Lv.30】
【☆光魔法Lv.32】【☆闇魔法Lv.31】
【☆雷魔法Lv.30】【灼熱魔法Lv.23】【☆氷魔法Lv.30】
【☆重魔法Lv.29】【☆空魔法Lv.29】【☆時魔法Lv.32】
【ドルイド魔法Lv.30】【☆錬金魔法Lv.20】
■治癒術・聖法
【神聖魔法Lv.33】
【幻術Lv.1】
■魔法系その他
【マジックシールド】【重ねがけ】
【☆範囲魔法Lv.34】
【☆魔法・効Lv.30】
【☆行動詠唱】【☆無詠唱】
【☆魔法チャージLv.24】
■剣術
【剣術Lv.33】【スラッシュ】
【刀Lv.34】【☆一閃Lv.27】
【☆幻影ノ刀Lv.19】
【☆断罪の大剣】
■暗器
【糸Lv.40】
■物理系その他
【投擲Lv.12】
【☆見切りLv.29】
【物理・効Lv.19】
■防御系
【☆堅固なる地の盾】
■戦闘系その他
【☆魔法相殺】【☆武器保持Lv.33】
【☆攻撃奪取・生命Lv.22】【☆攻撃回復・魔力Lv.30】
【☆スキル返しLv.1】
■召喚
【白Lv.14】
【☆降臨】『ヴェルス』
■精霊術
水の精霊【ルーファLv.23】
闇の精霊【黒耀Lv.34】
■才能系
【体術】【回避】【剣の道】
【暗号解読】【☆心眼】
■移動行動等
【☆運び】【跳躍】【☆滞空】【☆空翔け】
【☆空中移動】【☆空中行動】
【☆水上移動】【☆水中行動】
■生産
【調合Lv.28】【錬金調合Lv.35】
【料理Lv.33】【宝飾Lv.22】
【魔法陣製作Lv.1】
■生産系その他
【☆ルシャの指先】【☆意匠具現化】
【☆植物成長】【☆緑の大地】
■収集
【採取】【採掘】
■鑑定・隠蔽
【鑑定Lv.42】【看破】
【気配察知Lv.43】【気配希釈Lv.41】【隠蔽Lv.42】
■解除・防止
【☆解結界Lv.5】【罠解除】
【開錠】【アンロック】【盗み防止Lv.24】
■強化
【腕力強化Lv.9】【知力強化Lv.12】【精神強化Lv.10】
【器用強化Lv.9】【俊敏強化Lv.10】
【剣術強化Lv.8】【魔術強化Lv.11】
■耐性
【酔い耐性】【痛み耐性】
【☆ヴェルスの守り】【☆ヴェルナの守り】
■その他
【HP自然回復】【MP自然回復】
【暗視】【地図】【念話】【☆房中術】
【装備チェンジ】
【生活魔法】【☆ストレージ】【☆誘引】
【☆風水】【☆神樹】
☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの