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市民Aの冒険  作者: 半田付け職人
動く世界
82/86

過剰攻撃

 エレファンテレクスとユルングの群れに向かって、全員で遠距離攻撃を行った。

 それを見て、


「えーと……」


 目の前のめちゃくちゃな光景に言葉を失ってしまった。



 ワビスケの合図で、みんなが攻撃を開始した。

 アリアは自分の魔法だけど、他のみんなは遠距離攻撃用の武器を使ってだ。

 弾は熊に渡されたものを入れた。


 僕は前にもこのダンジョンで熊から借りた武器でひどい目に遭ったことがある。

 だから、実は今回もちょっと警戒していた。

 熊のことだから、後先考えずにめちゃくちゃなものを作ったかもしれないと思ったからだ。

 ワビスケがマッドサイエンティスト呼ばわりするのは伊達じゃない。

 まあ、僕が警戒したところで結果は変わらなかったわけだけど。



 まず、混沌さんが持っていた銃から大きな黒炎が発生した。

 見てすぐに分かったけど、あれはセグンタの黒炎だ。

 それが、アリアの放った黒炎と重なって大きな炎の塊となった。

 そこに、マイコさんの銃から巻き起こった凄まじい風がまとわりついて、炎がさらに大きくなった。

 見たことのない大きさのその炎は、エレファンテレクスとユルングたちをまとめて飲み込んだ。


 そして、激しく燃え上がるその炎を、僕が持っていた銃から出た極太のレーザー光線が薙ぎ払った。

 一瞬、炎が拡散してモンスターの様子が見える。

 ユルングたちはほとんどが焼け焦げて、すでに息絶えているようだった。

 だけど、エレファンテレクスはその高い防御力のおかげか魔法耐性のおかげか、いずれにしろまだ倒せていなかった。

 炎の下で激しくもだえている様子が見えた。

 ビームの一閃も当たっていたけど、それでも致命傷までには至らなかったみたいだ。

 すぐに再び炎に包まれて姿が見えなくなったけど、あの頑丈さを考えるとこのまま放っておいても多分倒しきれないだろう。


 僕がもう一度レーザーを撃とうか迷っていると、ワビスケのロケットランチャーの弾が燃え盛る炎の上空に到達した。

 同時に攻撃したけど、弾の特性で遅れていたみたいだ。

 それが唐突に上空で二つに割れた。

 そして、中からたくさんの小さな爆弾らしき物体が出てきた。


「おいおい。

 クラスター弾なんて作ったのかよ……」


 ワビスケが呆れたように呟いた。

 その反応の意味は分からなかったけど、表情から察するに威力は期待できそうな感じだ。

 と、その小さな爆弾に火が点いた。

 そして、凄いスピードでエレファンテレクスがいる場所に向かって行った。

 それらが炎の中に突っ込んだ数秒後、炎が内部から吹き飛んだ。

 あの小さな爆弾が爆発しているらしい。

 連続的に何度も何度も爆発が起こった。

 凄まじい炎と数え切れない爆発のせいで目がチカチカして頭もガンガンして、目の前で何が起きているのか分からなくなっていく。

 めちゃくちゃな状況だ。


「よし、とどめだ」


 熊が手に爆弾らしきものを持って言った。

 ワビスケのロケットから出てきたものよりもかなり大きい。

 熊はいつもの怪力で、その爆弾を投げた。

 それは、真っ直ぐに炎の中心に飛んで行った。

 そして、一段と大きな爆発が起きた。

 周囲を轟音と地響きが包む。

 同時に、エレファンテレクスのものらしき絶叫が辺りに響いた。

 それを最後に爆発は収まった。



 僕たちはしばらくそのまま立ち尽くしていた。

 あまりの惨状に動きようがなかった。

 それから数十秒後、ようやく爆煙が収まってきた。

 そして、モンスターがいた場所が見えてきた。


 そこには、動いているものは一体も残っていなかった。

 さっきまで生きていたエレファンテレクスもこんがりと焼けて横たわっている。

 ユルングに至っては、ほとんど原型を留めていなかった。


「いやいやいやいや、なんやねんこれ?

 めちゃめちゃやん。

 熊、あんた、どんだけのもん作ってんねん」


 我に返ったマイコさんが騒ぎだした。


「セグンタの能力を最大限引き出すような設定の弾丸を作ってみたんだが。

 うまくいったようだな」


 熊は頭を掻きながら満足そうな笑顔でマイコさんに答えた。


「うまく、ちゃうわ!

 かなり距離があったから今回は大丈夫やったけど、これ、下手したらウチらも一緒に吹っ飛んでてもおかしくない威力やったで」


「それくらい分かっとるわ。

 だから、今ちょうどいい状況だったから試してもらったんだろうが」


「ホンマに分かってんのか?

 あんたは実験のためやったら周りが見えへんくなることがよくあるからな」


「大丈夫だと言っとるだろ。

 大体、今回は大成功だったんだから文句はないだろう」


「それはまあ、そやけど。

 ホンマ、びっくりしたで」


「実際、えげつねえ威力だよな。

 さすがセグンタの素材ってことなんだろうが。

 熊のスキルもめちゃくちゃだよな。

 こんなもんをすぐに作れるんだから」


「いや、これでもそれなりに苦労したんだぞ。

 簡単に何個も作れるわけじゃないからな」


「そうなのか?

 まあ、ちょっとずつ作っといて、いざという時に使えるようにしとけばいいんじゃねえか?

 マイコの言うとおり、どこでも使えるもんでもないしな。

 適当にその辺で使ったりしたら確実に周辺に被害が出るからな」


「使いどころを選ぶ必要があるのは確かだな。

 その辺りはお前に任せよう」


「そうだな。

 だけど、できるだけ使わないようにしたいもんだな。

 こんなので終わったら戦った実感もねえし。

 それより、同じ素材で剣なんかを作ったらかなり使えるんじゃないか。

 弾丸でこれだったらそれも期待できるだろ。

 そっちを頼むぜ」


「おう。

 中々加工が難しいんだが、早急に進めておくことにしよう」


「よし、そんじゃ折角強敵を倒したんだから、先へ進もうぜ。

 多分、もうすぐ最後だろ」


 ワビスケが言うとおり、めちゃくちゃになったモンスターたちの亡骸の向こう側に下の階層への階段らしき穴が見える。

 爆発のせいで一帯が焼け焦げているけど、階段は無事らしい。

 よかった。

 これで階段が塞がって下の階層へ進めないなんてことになったら、目も当てられない。


 ちなみに、ワビスケたちが話している間、ずっとその後ろで、


「ふへへ、混沌だ。

 これこそ僕に相応しい混沌だ」


 とか、おかしなテンションで混沌さんが独り言を言っていた。

 話しかけるとめんどくさそうだったから、みんな無視していた。





 49階層に来た。

 48階層とは打って変わって静かだった。

 だけど、そこかしこに戦闘の痕跡だけがある。

 ただ、その割にモンスターの気配はまったくなかった。


「どういうことなのかな?」


「何者かがここで戦闘をしてたのは確かだよな。

 っていうか、さっきの様子から考えて、おそらく戦ってたのはエレファンテレクスとユルングだと思うんだけどな」


「そうなの?」


「多分な。

 大体、まだ他のプレイヤーはここまで来てねえだろうからな。

 戦うとしたらモンスターくらいだ。

 ユルング同士は争わねえだろうし。

 だとしたら、戦ってたのは元50階層のボスだったエレファンテレクスと、それを追い出したと思われるユルングだろうな。

 そんで、エレファンテレクスは50階層から逃げ続けて48階層まで追われたところで俺たちと遭遇したってとこだと思うぜ」


「ふうん。

 そんなことがあるんだね。

 ボスがダンジョンを取られるとか、逃げるとか」


「いや、俺もこんな状況聞いたことはないけどな。

 今時点で手に入れた情報からだと、それくらいしか考えられないんだよな。

 とにかく、それが正しいと仮定すると、この下の階層にはエレファンテレクスを追い出せるクラスのヤツがいるってことだからな。

 注意して進もう」


 49階層はそれ以降もモンスターは出てこなかったから、そのまま素通りした。

 僕たちは何にも阻まれることなく50階層に到達した。





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