非現実への訪問7
俺は始めてこの世に感謝したかもしれない。
リアル、アリガトーーー。
心の中でそう叫ぶ、俺、平林 人。
だが、そういえばここはリアルではないのだったと思い直す。
ここは、無花果さんによって作られた非現実、つまり仮想の世界である。
「それで、俺はここで何をすればいいんですか。」
「言ったでしょ、ここは仮想空間だって、だから、どんな事をしてもいいのよ。」
無花果さんは少し微笑みながら言った。
どんな事。
それは、思春期真っ最中の中学生男子に考えさせれば…。
もちろん、どんな事だか分かっているだろう。
それは、さておき、何やら無花果さんが帰る支度をしている。
「ここは、非現実だから、現実の私は多分、平林君に拒否反応を示すと思うけど、あんまり気にしないで。」
「いや、気にしないでって言われても。」
しかし、俺の言葉を聞く前に、無花果さんは、現実の自分に戻ってしまったようだ。
俺の目の前に残るのは、もう、体育館裏に植えてある柳の木だけだった。
「これは、戻ってきた…ってことだよな。」
あっという間の出来事だったのでよくわから無かったが、推測するに、非現実の無花果さんは、俺が非現実でどんな事をするか鑑賞したいというわけだ。
なら、無花果さんの望む通りにやってやる。
と、俺は決意した。
いや、今度のはさっき以上に硬い意思だから。
いや、マジ本気出すから。
そして、俺はここで重大なことに気付いた。
そして、さっき以上に硬い意思は、跡形もなく崩れ去った。
どやって、非現実に行けるのーーーーーー。