非現実への訪問6
俺は、嬉しさと疑問が混じった目で無花果さんを見た。
落ち着け、俺。まずは、状況を整理しよう。
まずは、無花果さんに話しかけられた。
はい、ここ重要。
今の今まで、学校では隣になった奴に空気扱いされていた俺が、美少女転校生に今、話しかけられているのだ。
やっべ、マジ、テンション上がるわ。
そして、次に疑問。
これは幾つかあって、まず、何故俺に話しかけてきたのかということ。
次に、無花果さんが言った言葉。
非現実に来る気はない?というのは、どういうことだろう。
というわけで、順に聞いてみることにした。
「何で俺に話しかけてきたんですか?」
まず、これが一番の疑問だ。
その質問に無花果さんは少し逡巡した後…。
「君が面白い目をしていたからかな。」
と答えた。
しかし、更に謎は深まるばかりだ。
面白い目をしていたと言うが、この目の何処が面白く見えるというのか。
この、現実に失望しきった虚ろな目の何処に面白さがあるというのか。
すると、無花果さんが俺の思考を読んだかのように…。
「ふふっ……そんな、目が面白いんですよ。」
と、無邪気な笑顔で言う。
やっべ、超可愛い。
「じゃあ、非現実ってのは何なんですか?」
今度は、少し苦笑して…。
「少し、ここだと話づらいから向こうではなさない?」
指差した方向にあるのは、体育館だ。
そして、俺と無花果さんは放課後、体育館で待ち合わせをして、話をすることにした。
そして、放課後。
体育館の裏で無花果さんと会い、体育館の周りを歩きながら話を再開した。
「それで、非現実ってのは何なんですか?」
「うん。あなたの今いるこの場所こそが、非現実だよ。」
は?
無花果さんは何を言っているのだろうか?
ここは、現実世界、嘘偽りの無い真実の世界だ。
俺みたいな奴と話していて頭がおかしくなったのかと思った時。
「ほら、見て。」
俺は幻覚を見ているのだろうか。
無花果さんの周りにある土が溶けている。水に溶けているわけではなく、土が白いロウのような物質に溶けているようだ。
「な、ば、馬鹿な。」
俺が、驚きに目を見開いている中、無花果さんが説明を開始した。
「簡単に言うとね。非現実というのは、現実では、起こり得ないことや、あり得ないことを実験する場所なんだ。」
「つまり、それは、仮想空間って…ことですよね…」
「まぁ、そういうことになるわね。現に今、平林君はこうして私と話せてるわけだし…。」
あ、なるほど。
俺が、こうして無花果さんと話していられるのはここが、仮想空間だからってことなのか。