非現実への訪問1
くふ……くふふ…ひひひっ………。
あはははははははは………。
「可愛いな…俺の……あみたん…」
あみたんとは、俺の彼女である。
しかし、彼女とは言っても、この現実世界に存在するはずがない…。
そう、
俺が現在、攻略中のギャルゲー、
『幼なじみに萌えやがれっ』
のヒロインである。
ちなみに、全年齢対象版だ。
そして、このゲームをプレイしている気持ち悪い、俺とは誰か?
俺は…
名前:平林 人
性別:男
中学3年
部活:帰宅部
特技:影を薄くすること
ギャルゲー攻略
今思ってること:世界滅びねーかな。
とまぁ、こんな感じである。
これじゃ、ただのニートじゃないかと言われるが、まぁ勉強もそこそこ出来てるし、運動能力も人並み程度にはあるし、全然、生きていくのに問題はないのだが…。
「可愛い……可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」
ただ一つ、この世界になんの関心も持っていないということを除いては…。
俺がこうなってしまったのは、ちゃんとした原因があり、それは、ニ年前の入学式のあることが原因である…。
二年前…。
俺は遂に中学生になるんだ。
と、心を弾ませて迎えた入学式。
俺だって最初は、友達が何人出来るかだとか、彼女は作れるだろうかなどと今になって見れば、下らない話に花を咲かせていた。
そして俺は、体育館で開かれた入学式で自分の名前が呼ばれるのを待った。
一組、二組、三組……。
生徒の名前が次々と呼ばれる中、遂に俺の番が来た。俺はあまり目立たないような奴だったが、ココでは精一杯の大声を張り上げてやろうと意を決したのだが……。
名前が呼ばれない・・・。
その時の俺の心境はまさに地獄。
穴があれば直ぐにでも入りたいくらいだ。
しかし、誰も俺の名前が呼ばれていない事に気付かない。
隣の奴ですら俺をスルーして、式を進めて行きやがる。
そして、俺はその時、悟った……。
あぁ、俺って空気なんだ。
入学式が終わり、俺は、重い足取りで教室へと向かった。
席に着くと、隣の席の女の子が不思議そうな顔で俺を見ている。
俺は、話せる気分ではなかったが、ここで挽回しようとまたも、意を決して、どうしたの?と話しかけてみたのだ。
どうやらその子は、筆箱を忘れてしまったらしい。
なので、俺は、シャーペンを一つ貸してやった。
そして、その子が貸した後に言った言葉…。
「ありがとう、幽霊さんでも私を助けてくれるんですね。」
遂に、俺は死んでしまったらしい。
その言葉は余りに、心が発達していなかった俺の心に大ダメージを与えた。
それからの二年間、俺は、教室では影を消し、誰とも話さず、授業が終われば直ぐに下校という、友達いないぜライフを過ごしたわけだ。
こうして俺は誕生した。
常に、部屋に引きこもり、ギャルゲーをこなす…
新たな自分が……。