プロローグ
現実。
現実とは、いま目の前に事実として現れているもののこと。
あるいは、個々の主体によって体験される出来事を、外部から基本的に制約し規定するもの。
もしくは、そうした出来事の基底となる一次的な場のことである。
要するに…現実とは、全く嘘の無い真実ということである。
では、その逆、現実では無いものとは何か…。
それは…妄想、あるいは、虚構。
妄想とは、現実の反対、つまり、いま目の前に事実として現れていないものの事を言う。
人は皆、『現実は正しい』。
などということを教えられる。
それは何故か・・・・
それがこの世界の常識、当たり前だからである。
しかし、本当にそうなのであろうか……。
例えば、仮説を立てるとしたら、表面では、とても優しく、成績優秀で容姿も素晴らしい奴がいたとしよう。
そいつは、間違いなくとてつもなく最高の人生を送っていけるだろう。
だが裏では、ヤクザとの関係があったらどうだろうか…?
そんな奴が最高の人生を送る、というのが今、この世界では許されている。そんな世界…誰が生きていて楽しいのだろうか?
俺にはわからない。
勉強ができるだけで簡単にいい人生が送れる。こんな不公平な世の中の何が楽しいのか。
しかし、人間は、こんな世の中を楽しんでいる。
学生は、友人や恋人と勉強、部活、恋愛。
社会人は、仕事に熱中したり、趣味に熱中したりしている。
これが、この世界で言う『人生を生きる』ということだ。
だが、中には例外もいる。
まぁ、俺みたいな奴のことなんだけど…。
俺に言わせれば、こんな世の中は…
「腐ってる。」
・・・しかし、こんな俺にも信じているものはある。
それは、序盤に少し説明した、『妄想』である。
妄想世界は、俺を裏切らない。
これこそが、この腐った世界を14年生きてきた俺が考え出した、この世界への答えである。
妄想世界・・・それならば、誰もがヒーローになれて、悪事を働いている奴は、その世界から追放される。
まさに、理想の世界だ。
この世界ならば、俺がさっき立てた仮説も起こり得ないだろう。
なのに、それを現実世界の奴らは否定し、嘲笑い、罵る。
「それは現実逃避だ。」
「もっと、現実と向き合え。」
と…。
もう一度問う。
本当に、そうなのであろうか。
・・・こんな俺のくだらない考えも一つの生き方なのではないのだろうか。
もし、この考えが、この世の中に認められたならば、世界は…………
世界は、その時どう変わるのだろう?