あとがき
このような話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
このサイトで、悲劇だとはっきり書かれている物語を読まれる方は少ないと思いますので、作者は大変嬉しく思います。
読了されたあなたの気分は、恐らくかなり悪いんじゃないでしょうか?
それとは関係なく、少しは心に響く内容はあったでしょうか?
例えどのような感想をお持ちになっても、最後まで見ていただけただけで、作者自身は満足です。
この後の文章は、作品の内容に触れますので、もし未読の方がいれば最後に読む事をお勧めします。
まず読み終わって、『ここまで主人公を不幸にして、殺す必要があるのか?』と思われた方、―――それはもっともな意見ですが、作者は必要だったと考えています。
その理由は後で説明しますが、そもそも物語の舞台は、善人が報われない汚れた世界での話ですから、現実の近未来とは違ってくるはずで、実際に同じような出来事があっても、ここまで酷くない……、はずです。
だから、この物語はフィクションであり、登場する人名や団体は架空の物であり、法的な部分も怪しさ満載です。
一方で、悪人も決して報われていないと作者は考えます。
森田慎治をおとしいれた代議士や検事は、恐らく組織の頂点には立てないでしょう。
特に代議士の方は株で大損している上に、司直への介入を疑われていますから影響は深刻です。
プロテクト社は、元々かなりの金銭的な損害を受けていますし、信用も失墜しています。
しかも、歴史に悪名を残す可能性まで否定出来ません。
最後に慎治を殺した男達も、一人は狂人ですし、もう一人は慎治を殺したことで、人と機械が融合した新たな生命の広がりを阻止出来ませんでした。
何故なら慎治が生きていれば、きっと思考情報体と人類を融合させない方策を取っていたはずですから。
それが、慎治が死ななければならなかった最大の理由です。
結局、みんな不幸だから、この物語は悲劇だという訳です。
あるのは、遥か未来の可能性だけでしょう。
話は変わりますが、この時期にこのような話を投稿するからには、触れておかなければならない問題があります。
それは、スタップ細胞に関する一連の話題についてです。
信じてもらえるかどうかは分かりませんが、作者がこの作品の構想を練って書き始めたのは、今年の年始め前後の仕事が暇な時期でした。
きっかけは確か、去年の年末のテレビ番組で、政治家や芸能人達の釈明会見を見ていて、マスコミの手のひら返しに腹が立った事だと思います。
とは言え、目立つ事が仕事みたいな人達には、多分に同情出来ない点がありますから、『真実を追い求める天才科学者の場合ならどうだろうか?』という仮定から、構想が始まりました。
例えば、天才科学者が予期せぬミスを犯し、そのせいで大きな被害が出てしまい、世間からもマスコミからも袋叩きにあい、その結果、周りを巻き込んで不幸のどん底に叩き込まれて死ぬ。
でもそれは、後世に大きな影響を与える大発見だった。
そんな感じの話なら、世間やマスコミの近視眼的で無責任な対応が際立つかもしれないと思ったのです。
しかし構想を練っているうちに、マスコミ批判なんて小説のメインテーマとしてはチープだと思い、あくまでも裏テーマの一つにして考えてみる事にしました。
そうなると、『天才科学者』、『予期せぬミス』、『後世に大きな影響を与える大発見』のキーワードで作者が思い付くメインテーマは『人類の革新』しかありませんでした。
そこに、人の業である差別や嫉妬心や未知への恐怖心などを盛り込んで、不器用な天才の目を通して明らかにし、その意志や考えは彼の発明品を通じて後世に受け継がれる、
―――そんな大筋にしてみました。
そうときまれば、大まかな設定を決めてプロットを切り、暇な時間を見つけて、それをコツコツと書きすすめて、―――今年の1月26日には、この作品の第一稿は完成していました。
あくまでも自分が見るだけなので、下書きレベルで矛盾点もあり、内容も少し変わっていますが、―――読み返してみれば、思ったよりハードな作品になってしまいました。
実は、元々この作品は、少なくてもこのサイトで投稿する気はありませんでした。
それは作者が、1年ほど前の暇な時期に物語を書く趣味に目覚めて、―――その後、ここの読者の多くが求めている作品を書けない素人だと理解したからです。
悲劇なんか書いても、このサイトを見に来た多くの読者を不快にさせるだけだろうと思っていたからです。
作家になる気もない社会人ですから、書いている最中の、自分の世界が広がるような独特の感覚が楽しいだけで、それほど投稿にはこだわっていないという理由もありました。
ですが、その後、予想外の事が起こりました。
それは、スタップ細胞発見のニュースで、それを見て作者は心が躍りました。
『タイムリーだからIPS細胞をスタップ細胞に書き換えて、別のサイトに投稿してみてもいいかな』と、妙に興奮して、スケベ心を出してしまったのですが、―――何だかそれはみっともなくて、結局はやめました。
そうしているうちに、論文のコピペやねつ造疑惑、―――更には研究所の記者会見までの流れを見て、この作品と少しかぶる部分が出て来たので、驚くと同時に怒りを覚えました。
自分の考えた話はフィクションで、かなり誇張したはずだったのに、マスコミの対応は予想どおりで、昔から何も変わっていません。
当事者たちも、こんなマスコミなんて気にせずに、科学者ならばこの世の真理と向き合えばいいのに…。
それをさせない研究所側の都合や世間の風潮というのが、悲しくて残念で仕方ありませんでした。
何より、どう言い繕おうが、例え本人がどう思っていようが真実は一つで、世間の非難とかは関係なく、科学的に正しければ時間がたてば認められて、新たな発見や発明は後世に影響を残します。
よほどのペテン師や、追い詰められた人なら別なんですが、―――前人未到の道を歩く、今までの常識をくつがえす人は、普通はそれを知っていて、それでも苦難の道を歩くもんです。
その覚悟がなければ、最先端の研究なんてやってられません。
だから、この作品を投稿する気になったのかもしれません。
そして、久しぶりにこのサイトを訪れて、以前の作品の感想欄に心を打つコメントがあったので、しばらく悩んだ末、投稿する事に決めました。
こんな作者の物語でも、心に響いてくれる人が一人でもいるなら、このサイトに投稿する意味があるのではないかと考えたのです。
そんな訳で、私はスタップ細胞がある事を期待しています。
投稿した事を後悔はしていませんし、批判的な意見も大歓迎です。
でも、ただつまらなかったとかだけじゃなく、その理由を書いていただかないと、単なる悪口かどうか判断出来ず、作者には何も伝わりません。
勝手な意見かもしれませんが、―――もし自分が、この作品の中の登場人物なら、どういう立場で、どのような思いや行動を取るかを想像していただければ、作者が何故こんな事を言っているかが分かってもらえるんじゃないでしょうか?
後は、物語についてのどうしても理解出来ない事や、矛盾点を感想欄に書いていただければ、出来るだけ答えたいと思います。
それ以外は、相変わらず時間が取れないので、多分、しばらくの間は新たな作品を投稿する事はないと思います。
それでは本当に最後になりますが、こんな作者の愚痴のようなあとがきに、最後の一文にまで付き合ってくれた読者の方に、心からの感謝を申し上げます。 PUPU