~自分との葛藤。婚約者との初デート~
どうしても気になりデスクを離れ倉庫に向かう。案の定そこにはしっかりと荷物が置いてあった。良かった…心でホッと喜んだ。倉庫からの帰り道、出張へ向かうサポートしてくれている先輩とばったり会った。
先輩(よぉ!今から出張行ってくるけど何かあったら携帯に連絡いれてな。)
僕(はい。分かりました。お気を付けて!)
この時、倉庫が気になって戻って確認しに帰った所とは恥ずかしくて言えなかった。
デスクに戻りようやく落ち着いた。一体さっきまでの不安はどこえいったのやらという感じだった。だがこのくらいの時期から気になった事が消えなくなるという症状が現れだした。でも、実際に戻り目で再確認すると不思議と気にならなくなってはいたので、疲れが溜まって注意力が散漫になっているのだと思っていた。なので、チェックリストを多用したり、再確認してしまった日の帰りの車では自分の頬をビンタし、しっかりしろと自分自身に言い聞かせるようにした。ストレス発散の為、帰宅時の車の中では奇声を大声で発する事もしばしばあった。この時期の僕にはこれといった趣味が全くなくストレス発散する場面が無かったのも良くなかったのかもしれない。土日の婚約者とのデートが唯一の安らぎの時間だった。婚約者とは毎日メールや電話でのやり取りはかかさなかった。
明るい話しもしたいので、ここからは会社の話しは置いておいて婚約者と出会い婚約に至るまでについて話したいと思います。年齢は一つ年上で共通の友達の紹介で知り合いました。最初は簡単なメールのやり取りからスタートして約一週間程した頃に、僕からデートのお誘いをしました。映画館が良いか水族館が良いか色々と二人で考え抜き出した答えが某スポーツアミューズメントスポットであった。今考えると初めてあって、スポーツする場所を選んでたとは驚きである。デート当日は、彼女の最寄りの駅に車を停め待つ。車種と色は伝えてある為、多分見つけれるだろうと思い、バックミラーで髪型を整える。待ち合わせ時間より十分程早く着いていた為、この待ち時間がそわそわしてならない。どこから来るのか辺りを見渡す。予め容姿はメールのやり取りの際に写メールで送り合っていた為、見つけるのはさほど難しくは無かった。待ち合わせ時間より早く着いているのを発見したからなのか、バックミラー越しに後ろから小走りで向かって来ている彼女がいる。車まで近づくと窓越しに会釈された。車のドアを開け乗ってもらった。
彼女(早いですね。)
正直、想像していた声よりハスキーな声だったので内心驚いた。
僕(いえ。この辺の地理に詳しくないので早めに来たんですよ。)
僕は地理が苦手なのだ。カーナビがないと今でも実家には帰れない程の方向音痴なのだ。
僕(ナビで場所探したんですけど、表示されなかったんですけど、生き道分かります?)
彼女(あ!分かるので大丈夫ですよ。)
僕はかなりの人見知りな方なので、会話に困るかなと心配していたが、道案内で話しは途切れずその間のあいまあいまで、雑談を交わし合う事も出来た。どちらかと言えば彼女が一方的に話しかけてくれて、僕が相槌を打つといった関係性がもはや出来ていた。四十分程車を走らせると目的地に到着した。パーク内に入りどんな施設があるのか案内表示にざっと目をとうした。ボーリングやダーツ、ビリヤード、ゲームセンターやカラオケ…。この時、しまった!と思った。なぜならぼくは大のカラオケ嫌いだからである。人見知りの人なら分かると思うが、初対面の人と二人でカラオケなんて持ってのほかである。テーマパーク内に入る前にゲームセンターがあったので寄った。これと言ってやりたいのは無かったが、
彼女(これやりたい!一緒にやろうよ。)
彼女が興味を示したのは一回百円のゾンビを撃つというガンシューティングゲームだったのである。とても以外なチョイスに驚いたと同時に面白い子だなとも感じた。二百円を入れて二人モードで始める。キャアキャア言いながらもどんどんとゾンビを倒して行く。一度ゾンビにやられてしまったら、もう百円を入れて途中参加が可能である。幾らかの百円玉をゲームの上に置き遊んでいたが、なにぶんなれてないのか彼女はどんどんゲームオーバーして行く。その度に百円を投入してリトライをする。みるみるうちに幾らか置いてあったはずの百円達がいなくなっていた。この当時の僕の遊びで使えるお金は三万円程度だった。実家に四万円の生活費を納めていたからである。少しでもの親孝行と思い始めた事である。残りは貯金している感じだ。この日のデート代は僕自身で払うつもりでいた為、三万円全て持ってきていた。だが消えゆく百円達を見てゲームをしながら、内心早く諦めてくれとおもっていたのだから笑える。そんな事を考えているうちに彼女は観念したのかゲームを止めた。
僕(なんか疲れるゲームだね。)
彼女(でもすっごく面白かった!)
満面の笑みを浮かべる彼女にまた笑えた。ゲームも一頻り終わった事もあり、テーマパーク内へと向かった。受付へ行くと長い行列が出来ていた。否応なしに列に並ぶ。ふとこの時、他人から見ればカップルに見えてるのかな?などと想像した。受付を済ませテーマパーク内へと入る。入って早々彼女の口から発せられた言葉に固まった。
彼女(じゃあ最初はカラオケ行こうよ。)
なぜ色々ある中でカラオケが最初なの!と内心叫んでいた。後で知った事だが彼女は大のカラオケ好きだった。
僕(そ、そうだね。カラオケ行こうか。)
正直この時の僕の顔は引きつっていたに違いない。カラオケの部屋へ入ると緊張感がました。最初は彼女から歌ってもらう事にした。上手かった。カラオケなど家族でもめったに来ないし、テレビ番組で芸能人が歌っているのを聴く程度だった為、生で聴くとやはり違うと感じた。そして、案の定彼女の口から恐ろしい言葉が発せられた。
彼女(じゃあ何か歌って良いよ。)
僕(え?あぁ…じゃあ歌うかね。)
嫌だった。もの凄く嫌だった。仕方なく歌えそうな有名な曲を探す。腹をくくり自分の好きなアーティストの曲を入力する。イントロが流れ出す。心臓の鼓動がみるみる早くなるのが分かる。下手な面接より緊張していた。
なりふり構わず歌った。もう記憶すら無い程緊張したが歌った。歌い終わり彼女の反応をそっと確認する。拍手をされた。ん?なんの拍手?下手なりに良く歌えましたねの拍手?
彼女(歌上手いんだね。)
僕(え?そうかな?歌うのなんて小学生振りくらいだから緊張したよ。)
褒められた!純粋に嬉しかった。と同時に緊張も消えていた。その後、ビリヤードやダーツなど一頻り遊んだ。時刻を時計で確認すると、夜ご飯時の時刻が近づいていた。
僕(そろそろ夜ご飯でも食べ行く?)
彼女(さうだね。疲れてお腹空いたし行こっか。)
予めお店は予約しておいたので、向かった。
お店で食事をしながら色々と語り合った。今日の事や、最初会った時の感想や思い思いの話しで盛り上がった。食事を終え彼女を家まで送った。一人車内でにやけながら帰宅したが、実家に着き財布の中身を見ると幾ばくかのお金しか残っていなかった。一か月三万円と決めていた僕にとっては悲しみさえ湧いていた。たった一日で…。男性なら誰もが経験するであろう現象である。しかし、楽しかったので良しとして眠りについた。これが、彼女との初デートである。