05 俺の気持ち
俺の名前は蛭魔哲
俺には彼女がいる。彼女の名前は渚紗綾。
友達といる時にいつも一人で図書室へ行く彼女を何度か見たことがある。彼女はいつも教室の隅にいた。そして友達と話している姿など一度も見ていないくらいいつも一人でいる。だから気になったのかもしれない。そんで、たまに図書室に漫画を借りに行こうとか言って友達を誘い、図書室へ彼女の様子を見に行っていた。昼だけではなく放課後にも図書室に出入りしていることを知り、彼女が一人でいるところに話に行った。
最初に話かけたとき、彼女は信じられないかのように目をまん丸くさせていた。
それから、俺は一人の時間や放課後は彼女のいる図書室へ通った。
自分で言うのはあれだけど俺はモテる分野にいる。遊んでいるわけじゃないけどみんな平等に優しく接するように心がけている。それで勘違いされて何度か痛いめをくらってきたこともあるが・・・
そんなところも彼女といると新鮮だった。逆に俺は相手にされていないとショックを覚えたけど
彼女のもとに毎日といっていいほど通っているうちに、彼女に惹かれている俺に自覚したとき、人生初の告白をしていた。なかば強引に彼女と付き合うことになった。
その日のうちに『朝一緒に行こう』と某アプリで誘ったときに断られた。翌日学校で、『一緒に帰ろう』と誘った時も断られた時に、今まで気にしたことなかった人の噂が偶然耳に入った時になんとなくその理由が分かった気がした。彼女が女子に嫌われていることを、そして俺に近寄ることでさらに悪化するのではないかと考えているのではないかと俺の中で解決した。だから俺はそのあと人があまり来ない場所を指定して、そこで待ってるからと伝えた。その日も図書室へ行き、もう一度釘をさすかのように待ってるからと伝えた。
そして、彼女は待ち合わせ場所に来てくれた。その時俺は来てくれるかもわからなかったからすげー嬉しかった。彼女とは無理やり付き合うことにした自覚あったから、ちゃんと俺の事思っているのか自信なかった。
付き合ってもう少しで1年経過すると言うのに彼女は未だに俺の事を「蛭魔くん」と呼ぶ。それに俺らの関係を公表してないから俺を誘ってくる奴がなかなか消えない。1年も彼女を引き留めるのに必死で、全く誘いものっていないのに。ましてや、違うクラスならまだしも同じクラスだから彼女にその光景を見せるはめになっている。いつ俺が彼女に振られるのではないかと不安になるのにそんな失態をおかすわけにはいかない。というより彼女しか俺の目に映っていない。
そして、未だに俺に気を使ってくる彼女に少しずつイラついてきていた。だから俺は切り出すことに決めた。
学校帰りに今日も塾という彼女を後ろに乗せて、少し時間があるから学校から少し離れた沿岸までバイクで走った。
『蛭魔くんが行きたい所があるなら…』
とか気を使っている彼女にイラつきを感じいつもはスピードを少し落として走っているが今日はその気遣いをすることが出来なくて彼女が必死に俺に掴まっているのも感じていながらある程度のスピードで走らせた。
バイクから降りて適当な場所で2人で座った。少しの沈黙の後俺から声をかけると未だに俺の事を「蛭魔くん」と呼ぶ彼女
「いい加減名字で呼ぶのやめないか?そろそろ1年たつのにさ」
「え、蛭魔くん?」
「哲」
「・・・・」
困り顔の彼女に俺から渚の下の名前で呼ぶ
「紗綾……哲って呼んでみ?」
初めて紗綾と呼んだ。彼女に哲と呼んでほしくて
「さ…さ、哲・・・・哲くん」
どもりつきながらなんとか呼んでくれた彼女にさっきまでのイライラはどこかに消えた。
「……まぁーいっか。今度名字で呼んだらお仕置きな?」
「わかったよ‥」
「あ、そろそろ時間だよな‥・」
「そーだね」
離れがたいけれどこれから塾がある彼女とこれ以上は一緒にいれない・・・。もし彼女が一緒にいたいと言うなら俺はそばにいるけど真面目な彼女がその言葉を発することはないとわかっている。だけど、それでもどこか期待している俺もいたりする。
彼女が俺を信じていなくて、不安がっているなんてこの時は1ミリも考えたことなかった。お互いを思っているのに素直になれない俺らのどちらかが行動を起こすことが大切なんてその時の俺は知らなかった。