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R E D - D I S K 0 2  作者: awa
CHAPTER 16 * CHRISTMAS DAYS
98/119

* Witness

 マブで二度寝していると突然、すごい勢いでドアを叩く音がし、私たちは目を覚ました。

 カーテンを閉めているから外は見えないものの、ふたつある窓も、すごい勢いで叩かれている。総攻撃らしい。サイレントモードにした携帯電話によると時刻は朝の九時すぎ、つまり眠ってから一時間程しか経っていない。そして当然、どちらの携帯電話にもありえないほど着信が入っていた。ブルはもちろん、マスティとリーズ、ニコラからも。

 「にぎやかだな」アゼルが言った。

 「超うるさいんですけど。私たち、ここまでしてないよね」

 ドアも窓も大きな音をたてて叩かれてる。すべてに鍵がかかっているものの、ドアの向こうからははマスティが、開けろだのふざけんなだのと大声で怒鳴っている。相当怒ってるらしい。

 「笑えるくらいキレてるから、とりあえず無視する」と、彼。

 「こんなんじゃ寝られませんけど?」

 「寝なきゃいい」

 部屋の周りにみんながいるのをわかっていて、しかも怒鳴られているのに、私たちはブランケットの下でひとつになった。アゼルは平気だと言ったけれど、さすがに声を抑えないわけにいかなかった。

 諦めたのか、そのうち窓からの騒音がなくなった。二箇所とも。続いて、ドアのほうも静かになった。私たちはかまわず抱き合った。

 と思ったら数分後、突然、ドアがまた大きな音をたてた。ドアノブだ。金属を叩く音が、何度も何度もした。

 服は着ているものの、ブランケットも腰に巻いているものの、私はアゼルの上に乗ったまま、ドアのほうを振り返った。

 ドアが開いた。奴らはドアノブを壊したらしい。

 戸口に立っていたマスティは唖然とした。「──嘘だろ」彼の手にはハンマーが握られている。

 「うわー」彼の隣でブルがにやつく。「お前ら、マジありえねえ」

 アゼルは笑いながら、そばにあったクッションを彼らに向かって投げた。

 「ドア壊すなアホ」

 「なに?」と、彼らの背後でニコラの声がした。

 ブルが笑いながら答える。「ヤッてる」

 「うそ」

 「まじで」ブルの隣に立ち、リーズがこちらを覗きこんだ。「うわ、マジだ」

 なぜ覗くのだろう。「ねえ、頼むから閉めて」

 「閉めろじゃねえ」マスティが私に言った。「アゼルはともかく、なんでお前まで見られて平気な顔してんだよ」

 「平気じゃないから閉めろ。っていうか覗くほうがどうかしてるから。いつまで見てんだ変態」

 リーズの頭上から、ニコラまでもが顔を出した。

 「うわ、マジだ」

 「ねえ、わかったから、閉めてってば」

 アゼルは笑っている。

 「閉めねえとマジでキレる。すぐ終わらせるからちょっと待ってろ」

 ブルは笑いながらドアを閉めた。

 「よかったな、服着てて」と、アゼル。

 「夏だったら、ぜんぶ脱いでる可能性があった。冬でよかった」

 「見えてねえはずなのにな。上乗ってるだけでヤッてると思われるらしいわ。実際ヤってるけど」

 私は再び、彼に覆いかぶさった。

 「ドア壊されたらもう、ここ使えないじゃん」

 「マスティの部屋奪えばいいから気にすんな」

 キスをして、また続きがはじまった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 リビング。

 「ヤッてるってわかっててわざわざ覗いたお前の神経がわかんねえ」アゼルが言った。「しかもニコラまで」

 リーズはなぜか口元をゆるめている。「いや、気づいたら。ごめん」

 「リーズがいつまでも覗いてるから、嘘なんかと思って」と、ニコラ。

 マスティがつぶやく。「あの状況でヤるお前らの神経のほうがわかんねえ。なにしに来たのかわかんなくなったし」

 ブルは笑った。

 「いいもん見た。夏だったらもっとよかっただろうに」

 「いや、実際はヤッてないかもしんねえよ。こいつが上に乗っかってただけかもしんねえ」

 コーナーソファ。ビールの入ったペットボトルを持つ私は、アゼルの左半身に背をあずけて座っている。腰には彼の左腕がまわされ、足元にはマスティがいる。眠い。

 「ヤッてたくせによく言う」ブルが言う。「っつーかあれなに? オレの部屋、ビールが噴き出してえらいことになったんだけど」

 ニコラはしかめっつらを見せた。「あたしなんか服がビールにやられた」

 リーズが笑う。

 「マスティも引っかぶった。しかもブルは炭酸アップルジュースだと思って飲んだから、思わず口から吹き出したっていう。しかもそれがマスティに軽くかかったっていう」

 マスティは私を睨んだ。「絶対お前だろ。っつーか」身体を起こして私の両脚のあいだに膝を、おなかの横でソファに左手をつき、私の首にある南京錠を右手にとった。「なにこれ」

 「南京錠」

 「これはこれでエロい」と、ブル。

 「アゼルもつけてる」リーズが言った。「おんなじ?」

 マスティは彼の南京錠を目で確認した。「一緒だ。大きさは違うっぽいけど」

 「気にすんな」アゼルは私の手からペットボトルを取り、ビールを飲んだ。「これなら外歩ける」

 「だよな」ブルが言った。「飲みながら来たもん」

 「わざわざ朝っぱらからなにやってんだって話なんだけどな」

 言いながら私の南京錠から手を離すと、マスティはソファに背をあずけてあくびをした。

 ブルにもあくびがうつる。「眠い。寝たの四時くらいだぞ。なのに起こしやがって」

 「俺ら外行くから気にせず寝ろ」

 「外ってなに?」ニコラが訊いた。「あ、ベラの家か」

 「ベラ、寝そう」と、リーズ。

 私はうとうとしている。「超眠い」

 「寝るなアホ。行くぞ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「旅行?」

 仕事から帰ってきた祖母に、私は訊き返した。

 「そう。かなり急な話なんだけど──来月、一月四日から六日までの二泊三日で、旅行に誘われたのよ。同僚六人での旅行でね、最初は断ってたんだけど、ひとり予定してたヒトが行けなくなっちゃって。どうかって」

 「いいじゃない」私は答えた。「仕事は七日からでしょ?」

 彼女がうなずく。「ええ、金曜から日曜ってことになるわ。あなたがいいなら行くんだけど、夜にあなたひとりっていうのは心配だから、アゼルでもアニタでもリーズでも、誰でもいいから、最低でも誰かひとり、来てもらってくれる? もちろんニコラも、みんなに来てもらうのでもかまわないから」

 「泊まりで?」

 「それがいちばん。もちろん、あなたが泊まりに行くのでもいいけど」

 泊まり。「わかった、そうする」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 報告メールによると。

 アニタとペトラは今日、ヒンツと元生徒会長の四人で一緒にセンター街に行き、ランチを食べて映画に行ったらしい。そのあとセンター街をブラついて、意外にもゲームセンターで散財、カフェで話をして──とりあえず、めちゃくちゃ楽しかったと。で、暇なら明日、ペトラと一緒に遊ぼうと。これには了承メールを返した。

 アドニスのほうは、まず前日、二十四日の合コンがそれなりに当たりで、ひとり、わりと好みの女を見つけたらしい。が、その女はおそらくルキに興味深々。即終了。けっきょく遊んでいそうな、それなりに美人の女に目をつけた。彼女もまんざらでもない様子で、そのうちインゴともうひとりの女の子を交えて遊ぶのだとか。

 続いて今日の、エデグループのほう。サビナと紹介した男はすっかり意気投合していて、アドニスとルキアノス、そして彼とサビナ、エデ、カーリナの六人で遊んだ。三時間ではあるものの、またカラオケ。エデはルキにアタックしているらしく、アドニスはカーリナからアピールされた。合コンに行ったことを言いだせなかったらしい。そのうち喰ってもいいかなという、聞き覚えのあるつぶやきがメールに書かれていた。

 こちらはといえば今日、朝からアゼルを家に連れ込み──ほとんどの時間をベッドの上で過ごした。とはいえ、ラグで昼寝もしたけれど。

 見られたことは怒らないのかと訊かれ、あからさまに見られたわけではないから気にしていないと答えた。アゼルも同じらしい。オカズにされるかもと彼が言うから、相手がアゼルならいいと答えた。彼も同じだと答えた。そして夕方、アゼルは帰った。

 夜、シャワーを浴びて部屋に戻ると、午後十一時前──アゼルに電話して、祖母が年明けに旅行に行くらしいと説明した。

 「もしかして連れ込んでんの、バレてんじゃねえの?」電話越しに彼が言った。

 「わかんない」私はラグの上、赤いビーズクッションに寝転んでいる。「でも考えたら、来てるって思うほうが普通なのかも」

 「まあ──いいか。俺は単に、中学一年に手出した奴ってのが微妙なだけだから」

 「一応、いつからつきあってるかってのを具体的には言ったこと、ないんだけどね。それでも私が泊まりに行きはじめたのが去年の七月? とかだから、ばれてると言えばばれてるかもだけど」

 「男を取っ替え引っ換えしてるとは? 言ってねえの?」

 「言うかボケ」私は不機嫌に返した。「逆を言おうか? あんたが女を取っ替え引っ換えしてるって」

 「言えばいいんじゃねえの。デボラの反応しだいでは、二度と会えねえんだろうけど」

 祖母はおそらく、私がなにをしてもなにも言わない。「っていうかそれ言っちゃったら、私が情けないことになるからやめとく」

 「それは言えてる。で? 四日と五日? に、行けばいいのか」

 「アニタでもいいよ」と、言ってみた。「リーズとニコラでもいい。女だけの合宿開いてもいい」

 「んー。まあ四日なんかは特に、昼間なら普通に遊んでいいんだろうけどな。泊まるっつったら邪魔が入る可能性は高いし」

 「じゃあいつもの手でいく? 夜コンビニ行ってくるって言って、そのままうちに来るみたいな」体育館倉庫に忍び込む時の手だ。

 「そんなに俺を連れ込みたいか」

 彼の言葉に、思わず口元がゆるんだ。

 「イヤならいい。アニタでもリーズでもニコラでも呼ぶから」

 「へー。んじゃ二日とも、俺が行かなくていいわけだ」

 ムカつく。なのに、思わず笑った。

 「わかった。じゃあ二日とも来て。マスティたちはどうにかかわす。マブならともかく、こっちならそこまで荒っぽく乗り込んできたりはしないはずだし」

 「だろうな。あ、ドアな、明日業者入れて直す。マブには行かねえほうがいいぞ。あいつらはいるだろうけど、マスティの親が来るから」

 彼の母親には去年、年末に会った。マブの大掃除をしてる時に。

 「明日はアニタたちと遊ぶから行かないけど。直るもんなのね。小遣い引かれちゃえばいいのに」

 「いや、金はうちのジジイに出させる。ジジイは仕事があるから来たりはしねえけど、請求はむこうにまわす」

 なるほどと思った。「とんだとばっちりのような気がするんですけど」

 「それがジジイの役目なんだよ。あれはあれで、マスティんとことブルんとこに感謝してるらしいからな。マブの光熱費払ってんのもあれだし。だから自由」

 初耳だ。「でもさすがに、キレてドアノブ壊すってどうなの」

 アゼルは笑った。

 「マスティが相当キレてたらしいわ。し返すっつったのもあいつ。ドアノブ壊したのも。けどドア開けたら俺らがヤッてた。しかも避妊具の件であんだけキレてたはずのお前が、ちっとも恥ずかしがってない。ぜんぶアホらしくなったって」

 笑える。「避妊具とはちょっと違う──っていうか、もうなんか、変に抵抗がなくなってる気がする。脱がされてるとことか、あからさまな状態を見られるのはイヤだけど、今までどれだけリスク犯してきたんだって話だし。でもあの程度なら、昨日だってタクシーで似たようなことしたし」

 「まあな。お前がイッてる時じゃなくてよかった」

 それが唯一の救いかもしれない。「ちょっとまずかったのよ──ただ、ドアノブが叩かれはじめて、来るかもなってのは予想できたから、一気に冷めた」

 「動かなかった俺に感謝しろよ。気分しだいじゃ動いてた」

 「それはダメ。っていうかもうほんと、壊すのはやめてほしい。今思えば、なんでリーズとニコラにまで見られてんだって話だし」

 「な。あれで乱交騒ぎになってないから尊敬するわ。けどまあ、あれは元はといえばお前の悪戯が原因だし」

 そのとおりだ。「もうやめる。タイミングしだいじゃ最悪だったもん──あ、二十七日は? 何時に行けばいいの?」

 「お前が一緒に行くなら朝から。楽しみをあとにとっておきたいんなら、夕方くらいか。どっちでも」

 「どこに行くのか教えてよ」

 「行きゃわかる」

 なんだそれ。「どっちがいいの? 行くのと行かないの」

 「俺が暇を持て余すことを考えりゃ、当然来るほうがいい」

 「じゃあ行く」

 「んじゃ朝の八時前に来い」

 「早いなおい」

 「イヤならやめろ。俺は明日仕事。だからもう寝る」

 冷たい。「行く。おやすみ」

 「ん」

 電話を切った。なにがなんでも「おやすみ」とは言わないらしい。

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