* Intuition
「──また、やったのか」
夜二十時すぎ──マブの、照明をつけていないアゼルの部屋。ベッドの上でこちらを向いて座っているアゼルは、あからさまに呆れた表情を見せてくれている。
「ごめんなさい」
「いや、あやまることねえけど。最初の何回かの会議済ませば、あとはアニタたちが引っ張るんだろ?」
「うん、その予定──基本的なことは今日打ち合わせたし、明日実行役を決めて、放課後あたりから細かい打ち合わせと段取り──あさってももしかしたら、だけど。そしたら一応、会議の場からは抜けることになってる。二十日の放課後には、ゲルトたちを連れてテーブルを体育館に運ぶってのがあるけど──私は影だし、何日もかかったりしない。わりと乗り気な教師陣がついてるし」
吐息をつくと、額を合わせ、アゼルは目を閉じた。
「墓穴掘りすぎ」
私も苦笑いながら目を閉じる。
「さすがのゲルトも呆れてた。さすがにないわとか言ってた。止めてほしくて主事のとこ行ったのに、校長たちにも話したのに、なぜか乗り気だし」
「すっかり気に入られてんな。──球技大会ん時、手放したらもったいないとか言われた」
「それで、なんて答えたの?」
「いい面しか見てないからだ、ムカつくことのが多い」
「言いすぎだと思うけど」
「いや、実際多いし。相手にするかしないかの違い。ま、今年もどうせなんかやるんだろうとは思ってたけど」
「私はやる気なかったわよ? だって文化祭の打ち上げやったじゃん。夏休みも、文化祭でも散々振りまわされたじゃん。もういいよ、ああいうの。一致団結とか、マジでうざい」
「けどけっきょくやってる」
今はもう、後悔しかない。「なんだろうな、あれ。主事に拒否されたって言ったら、諦めてくれると思ったんだよね。校長たちならなおさら。気づいたら学校規模。もうやだ」
「それやってる時に体育倉庫でヤるってどうよ」
「あんたマジで頭おかしいんじゃないの」
彼は笑った。「っつーかお前、なんでまだベストなわけ? セーラーに戻さねえの?」
「気に入ってるんだもん。本気で寒いと思うまでこれ着とく。とか言いつつ、今日の朝は本気で寒かった。もう無理かも」
「アホ」
左手で私の頬に触れ、アゼルはキスをした。やさしくてゆっくりで、深くなる一歩手前のキス。
「──そういや」唇を離して彼が言う。「今年は逃亡しねえと、クリスマス、邪魔される可能性がある」
「さすがにそんな空気の読めないことはしないでしょ。クリスマス大好き人間に用はない」
「いや、マスティがいるからな。あいつはとりあえず邪魔すんのが好きだし。クリスマスは一緒にいたいとかセフレに言われて、めんどくさいっつって切る奴だし」
「最低」
「けど、こっちも仕事が入る可能性はある」また額を合わせた。「平日らしいし」
「三人とも仕事だったら、リーズとニコラと三人で、女だけの地味なクリスマスパーティーでもしてようか」
「センター街行きゃいい。したらナンパされる」
「やだ。めんどくさい。しかもケイネル組がうろつく可能性があるし」
「ケイネル組っつったら、エルミはどうなってんだ」
「あれね──リーズがフラれたあたりから、むこうからのメールがちょっとずつ減ってるらしい。エルミにもインゴにも、ニコラとアドニスが大喧嘩して、リーズとルキも気まずくなったから、もう連絡とらなくなったって言ったんだけど。ぐだぐだ悩んでたみたいだけど、今日パーティーのことが決まってから、また学校で誰か捜すとか言ってた」
「誰でもいいのかよ。けどリーズはそいつとメールしてんだろ?」
「してる。今はまえほど深く考えてないみたいだし、普通に友達として。リーズがエルミのこと訊いたら、自分にその気がないのにエルミのアピールがきついから、とか言ってたらしい」
「めんどくさいな。ヤりゃいいのに」
「どっかの誰かさんたちみたいに、誰でもいいわけじゃないんじゃない」
「ブルとマスティに言ってやろ」
「あら、あんたも入ってる」
「俺は顔は選ぶ」
「マスティだって選んでるんでしょ? ブルはともかく」
「んじゃブルに言っとく」
「勝手にすれば」
「あっちは? サビナたち」
「エデはね、ルキにしょっちゅうメールしてるらしい。カーリナも、たまにアドニスにメールしてる。アドニスも、そこから可愛い娘を掘り出そうとして、普通にメール送ってる。でもどっちも、紹介された奴ともメールしてるらしい。サビナは紹介された奴だけ。頻度はよくわかんないけど」
「クリスマスが楽しみだな」
「誘ったり誘われたがあるかもね、どうでもいいけど。あ、サビナたちに映画館の割引券あげようかな」
「そんなもんがあんのか」
「去年の冬休み、ゼスト・エヴァンスのサイラスにもらった。六枚。使うタイミングがなくて、そのまま放置」
「放置しすぎ。アニタにやりゃいいだろ」
「だってあいつ、今オトコいないし」
「俺らが行ったら確実に怪しいことになるし?」
思わず笑った。「そう。だから絶対ダメ」
「ヤるとは言わねえけど、イかせるくらいならいいんじゃね」
「やだ。絶対やだ」
「まあそのあと、どっかのレストルームでとか言いだすことは間違いないよな」
「やだよ、絶対無理」
「あ、平日だったらデボラも仕事か」
「たぶんそう。確か休みは二十八日くらいからだったと思う」
「んじゃお前の部屋でいいか」
「泊まる?」
「さすがに我慢できねえからそれはやめとく」
「その前の土曜はセンター街に行ってくる」
「ナンパされに?」
「違うわアホ。サイラスのとこと、あんたへのプレゼントの下準備。リーズとニコラにも見られたくないから、やっぱりひとりで行ってくる」
「なにする気だよ」
口元がゆるむ。「ちょっとね」
「すげえイヤな予感がする」
「あながち間違いでもないと思う。っていうか、キレると思う」
「それでもよこすわけ?」
「当然でしょ」
額を離し、今度は私から彼にキスをした。三度目で深いキスに変わった。
上唇が触れたまま、アゼルがつぶやく。「──もう限界」
「よく耐えたほうだと思う」
「黙れアホ」




