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R E D - D I S K 0 2  作者: awa
CHAPTER 13 * WARNING DAYS
80/119

* Warning

 電話を切ると、私はカーリナに向かって口元をゆるめた。

 「教えてもいいって。あんたに教えるのはアドレスだけ。あんたの電話番号をアドニスに送る。したら電話がくる」

 そう言うと、彼女は気まずそうにも控えめに口元をゆるめた。「ちょっと待って」ポケットから携帯電話を取り出す。

 こちらはアドニスのメールアドレスを携帯電話の画面に出し、彼女のほうに向けて床に置いた。

 「番号はダメだよ、あいつに送るんだから」

 「うん」カーリナも床であぐらをかき、私の携帯電話を見ながら自分の携帯電話を操作しはじめた。

 「ごめん」サビナが私に言う。「昨日、悪気はなかったんだけど、なんか、いたから」

 お前に悪気がなくても、エデとカーリナにはあるんだよ。

 「もういいよ。正直かなり面倒だけど。ただほんとに、教室に来るってのはやめたほうがいい。私が機嫌悪かったってのはわかってるだろうから、たぶん今日は来てないと思うけど。時と場合によっちゃ、あいつら立ち聞きすんのよ。ドアは閉めたし、今も閉まってるし、窓際にいるから平気だろうけど。しかもあんたらが来たってなったら、あいつらは絶対、なんの話か訊いてくるんだから」

 「ああ──」彼女は苦笑った。「だよね、ごめん」

 「できた」カーリナがこちらに訊く。「今すぐ?」

 「お好きにどうぞ」

 そう言いながら自分の携帯電話を再び手に取り、操作して新規メール作成画面を出した。宛先をアドニスに設定、本文入力状態で入力キーを数字に切り替えてまた、彼女に差し出す。

 「とりあえず番号入れて、送信して。なんなら同時に送信すればいい」

 「わかった」

 カーリナは私の携帯電話を受け取って自分の番号を入力、同時に送信すると、電話をこちらに返してきた。

 携帯電話をポケットに戻しながら、私は立ち上がった。

 「もう本気で、あんま関わらないで。特にカーリナとエデ」

 カーリナが眉を寄せてこちらを見上げる。

 しかし気にしない。「あと、学校でアドニスやルキの話をするのもやめたほうがいい。知られたくないならなおさら。どこで誰が聞いてるかわかんないから。あんたらが経験あんのかどうかは知らないけど、知らないうちに話が広まることはある。そんでね」また首を傾けた。「私はあんたらと違って、なんでもかんでも無駄に細かくチクッたりしないの。訊かれたことに答える程度。影響のない程度。害のない程度。面倒にならない程度」

 カーリナの手の中で、携帯電話のバイブレーションが震えた。

 しかし私は気にしない。「あいつらとあんたらがトモダチしようとカレカノしようと、私にはどうでもいい。遊びたきゃ遊べばいいよ。私の悪口吹き込みたきゃ、いくらでもすればいい。アドニスもルキも、そんなこと気にしないから。わりと私の性格をわかってきてくれてるから、私がそんなのに傷つかないってことも、たぶんわかってくれるし。あんたらの行動で、こっちがどうにかなったりはしないから、なんでも好きにして。じゃあね」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 教室に戻ると、ペトラは私の席に座り、アニタはその傍らに立っていた。私に気づくなり、ゲルトたちを含め、全員がなにか訊きたそうな表情をした。

 「どけコラ」私はペトラに言った。「寝るんだよ」

 「せめてひとつ」イヴァンのほうを向いて座っている彼女がにやつき顔で言う。「ひとつなんか教えて。じゃなきゃベルが鳴るまで居座ってやる」

 なんだお前。「啖呵とかまでいかないけど、はっきり言ってやった。男の前ってなったらいちいちヒトに嫌味ぶつけてくるくせに、どのツラ下げてヒト呼び出してんだ、もうあんま関わんなって」

 彼らは同時にふきだして笑った。アニタは天を仰ぐ勢いだ。そして私を褒めた。

 「最高。なにがどうなってそうなったのかは知らないけど、よく言った」

 ペトラは苦笑っている。「訊くんじゃなかった。最悪。怖すぎ」

 「だからやめたほうがいいって言ったのに」ダヴィデが言った。「寝起きのあの最悪に機嫌の悪い状態で、なんで話そうと思ったんだろ」

 「よっぽどの内容だったんだろな」と、イヴァン。「オレだったらもう、ごめんで話終わってるわ。逃げるわ。相手にしたくない」

 「寝起きがいつもあんなってわけじゃないよな」カルロがゲルトとセテに訊く。「ああいう時はどうすんの? それでもやっぱ起こすの?」

 ゲルトが答える。「ああいう時は、相手にしないのがいちばんだな。機嫌が悪いってわかったら、こっちも機嫌悪いふうにする。お前を起こすこっちの身にもなれみたいな」

 セテも補足した。「考えてみろ、身体ゆすったり名前呼んだり頭はたいたり、何回もするんだぞ。寝たフリ含めて、起きねえ時は本気で起きねえ。かなりめんどくさい。こっちもイライラしてくる。こっちは親切で起こしてるのに、ベラのはただの逆ギレだからな」

 ごめんなさい。

 彼は笑って納得した。「それは言えてる。で」こちらに訊く。「寝てねえの?」

 「ぜんぜん。微塵も。諸事情により、寝るどころじゃなくて。気づいたら朝五時とかだよ。寝たら絶対起きられない。学校サボろうかとも思ったけど、それはそれでちょっと、な状態で」祖母が気づいているかどうかというのは、微妙だ。「もう帰ろうかな、めんどくさい」

 席を立つ気のないらしいペトラが口をはさむ。「そういやあんた、何回かサボッて帰ってんだよね。家に連絡とか入れられてないの?」

 「んーん、きてないっぽい。なんも言われたことないし」

 彼女は親の離婚のこと、私が祖母と二人で暮らしていること、アニタ経由で知っている。

 「ゲルトとセテはいつも、“帰りました”って正直に言ってるらしいけど、それでも」と、私はつけくわえた。

 「それほど理由訊かれたことって、ないよな」セテがゲルトに言った。「理由訊かれても、知りませんっつったらそれでとおるし」

 「だな。数えるほどしかサボッてないけど、もう“またか”、みたいな雰囲気になってる」

 カルロがつぶやく。「オレらがサボッても連絡ないかな」

 「いや、どうだろ」ダヴィデが言った。「そんな恐ろしいこと、する度胸ない」

 「っていうか、家帰るのに十五分くらいかかるのに、サボる価値もないような」と、イヴァン。

 アニタが口をはさむ。「あたしらなんか二十分くらいだよ? ひとりサボッて家に帰るとか、寂しすぎる」

 カルロが私に訊く。「お前、何分くらい?」

 「んー。三分か四分か五分?」

 彼らは声を揃えた。「マジで?」

 「サボる価値ありまくりな気がする」と、イヴァンは真剣につぶやいた。

 どんな価値だろう。「小学校の時は、キャッスル・マウンテンが憎かったな。直進すりゃ確実に近かったのに、回りこまなきゃいけないせいで、けっきょく二十分以上かかってたし。何回あいつに火をつけて燃やしてやろうと思ったことか」

 「いやいやいやいやいや」ダヴィデが止めに入った。「お前、仮にキャッスル・マウンテンの木に火をつけたとしても、山はなくならないよ? 木がなくなるだけだから」

 私はぽかんとした。「──あれ?」

 みんなこちらを見て押し黙った。

 そういえばそうか。土が燃えるわけではないのか。

 「──ハゲ山になるだけ?」

 私がそう言うと次の瞬間、彼らは天を仰いで爆笑した。

 「アホだ! 本物のアホだ!」カルロが叫ぶ。「さすがのオレでもそれはわかる!」

 「もう無理!」腰を抜かしたのか、アニタは床に膝をつき椅子ごとペトラにすがるように笑っている。「小学生以下だし!」

 右肘を机につくペトラは額を押さえながらも、笑いに肩が震えている。「これはないわ。バカなことは知ってたけど、バカ度が半端ない」

 考えてみればそうだ。火をつけてもハゲるだけだ。「よかった、やらなくて」

 「お前──」肩を震わせて笑うイヴァンは、机についた左腕でうつむく頭を抱えている。「確かによかったけど──」

 私は呆れた。「笑いすぎ。落ち着け」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「ベラー」

 ──なぜリーズ?

 「ベラー。起きろー」

 ニコラまでいる。

 「起きてー」リーズ。「起きたらびっくりするだろうけど、起きてー」

 びっくり。「──したくないから起きない」

 そう言ってブランケットを頭までかぶり、身体をまるめた。

 「起きろー。じゃないと、マスティがベッドに入るとか言ってる」

 一瞬、思考が止まった。

 リーズの言葉に、ブランケットからゆっくりと顔を出した。ベッドの傍らに膝をついた彼女とニコラが並んでこちらを見ている。

 「おはよ」と、ニコラ。

 「──なにしてんの?」学校から帰ってきて、私はすぐに寝たはず。

 「学校終わっても来ないから押しかけるって」リーズが言う。「マスティとブルが言うから、しかたなく連れてきた」

 はい?

 「どんだけ寝てんだ」

 足元で声がし、私はさらに身体を起こしてそちらを見た。マスティとブルが立っている。

 心が青ざめた。「──嘘でしょ」

 「アゼルもいるけどね」ニコラは苦笑って続けた。「ラグで寝てる。寝てたとこ、無理やり連れてきたから」

 「──今、何時?」

 リーズが答える。「もう六時半過ぎてる。デボラが、みんなの夕食作ってくれるって。ベラの部屋で食べればいいって」

 「は?」再び彼らへと視線をうつした。「──食う気?」

 ブルはにやついた。「当然だろ。よかったらって言われたから、ぜひ! って答えた」

 なんだお前ら。

 「──本気で」私は仰向けになり、右手で適当なクッションを掴んだ。「喧嘩売りに」彼らに向かってクッションを──「来たのか」投げた。「マジふざけんな」

 アゼルは夜中のことを、なにも話していなかったらしい。というか、家に乗り込むつもりなマスティとブルに“行かなくていい”と言っただけ。彼らがそれで納得するはずもなく、けっきょく押しかけてきた。

 そして午前中は起きていたけれど、ブルとマスティがマブに持ってきた昼食を食べてから、ずっと寝ていたらしい。それでも夕方起こされ、寝ぼけながらにシャワーを浴びてここに来たと。

 私たちが揃って眠気に振りまわされていたことを勘ぐられはしたけれど、夜中のことは話さなかった。

 夕食は本当に、私の部屋で食べた。煙草も遠慮なく吸ってくれた。特にアホ男三人組。夏休み、アゼルがケイと一緒にうちに泊まった時から、灰皿はずっと部屋に置いてある。

 ニコラにカーリナのことを報告したけれど、やはりどうでもよさそうだった。好みが同じなのかということには、リーズと一緒になって笑っていた。

 ちなみにアゼルに関して私とエデの好みが同じになるのかと言うと、それは違う。私は容姿から入ったわけではないし、そもそも私がアゼルを好きなのは、エデがアゼルに惚れた要素とはまったく違っている。エデは表面上でしか、彼のことを知らないし。

 さんざん騒いだあと、夜の十時頃になり、彼らはやっと帰ってくれた。

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