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R E D - D I S K 0 2  作者: awa
CHAPTER 13 * WARNING DAYS
79/119

* When Woke Up

 「ベラー」

 カルロがうるさい。

 「起きろって」

 ほんとにうるさい。

 「やっぱダメだわ。起きねえ」

 イヴァンもうるさい。

 「朝からほぼこの状態なんだわ」ダヴィデは誰かに説明しはじめた。「ありえないくらい眠そうな顔してHR中に登校してきて、授業中も休憩時間もほぼ寝てる。先公に怒られたら起きて、また寝る。呆れられる。休憩時間も寝てる。何回起こしても寝る。ランチも寝ぼけ半分で食って、食い終わったらまた寝た」

 うるせえよ。

 「なんか伝言あんなら言っとくけど」イヴァンが言った。「それかノートにでも書いとけばいいんじゃね」

 そうしてください。

 「いや、そろそろ起きてるわ」ゲルト。「頭しばいてみ」

 なんて。

 「誰が!?」ダヴィデ。「あとで殺されるって」

 皆しばきだよ。

 「黙ってればバレないんじゃね?」セテ。「無言で全員がしばく」

 皆返しだよ。

 「皆殺しだろ」とカルロ。「ヤーゴでも呼んできてセクハラさせるか」

 お前殺されたいのか。

 イヴァンが笑う。「全員殺される」

 「ベラ、いい加減起きろ。もういいって」

 ゲルトにそう言われ、私は舌打ちした。うつむいたまま、重すぎる身体をゆっくりと起こす。眠い。

 「あ、起きた」カルロが言った。「すごいなお前、なんでわかるんだ」

 「今までどんだけこいつが寝てるとこ、起こしてきたと思ってんの? そりゃわかるわ」

 セテが笑う。「確かに。小学校の時のこいつ、やたら寝てたし」

 両肘を机につき、指で目をこすった。今日はメイクもしていない。そんな元気がなかった。

 昨日の夜中、マブに行って、家に帰ったのは午前五時頃だった。眠れば起きられなくなると思い、眠らなかった。祖母は私が夜中に抜け出したことに気づいているのかいないのか、眠そうなことを心配はしたものの、それ以上はなにも言わなかった。

 カルロがまた言う。「アタマ回転してんのか、これ。まともに動かねえ」

 動くのが面倒だ。本当に身体が重い。目を閉じたまま、両手指で額とこめかみをおさえた。

 「なに」意識しなくても低い声だった。

 「うわ、不機嫌」ダヴィデが言った。「待ったほうがよくね」

 「ええー」サビナの声だ。「ベラ、ちょっと話せる?」

 イヤです。「ここじゃダメなの?」

 「それは──」彼女は言葉を切り、拒否した。「ちょっと」

 うざい。「ちょっと待って」

 起きろ、頭。もうやだ。アゼルは今頃ベッドですやすやと寝ているだろうに、なぜ私だけこんな状態。

 ゆっくりと目を開けた。無駄に落書きの多い机。そうだよ。ここ、学校。教室。

 眠気に負けないよう、苛立ちを抑えるよう、大きく深呼吸し、席を立った。振り返ると、サビナとカーリナがいた。私はぽかんとした。

 「──何事?」

 「ちょっと」サビナが言う。「空き教室に」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 あくびをしながら教室を出ると、中央階段のある踊り場のベンチに腰かけているペトラとアニタが、不思議そうにこちらを見ていた。私は無視した。どうでもいい。

 そして、サビナとカーリナに続いて空き教室に入った。ドアを閉めた私に、数歩前で振り返ったサビナが切りだす。

 「昨日の話、誰かに言った?」

 昨日。なにかあったっけ? などと思いながら、彼女たちを追い越して窓のほうへ歩いた。

 「昨日って、ダイナー?」私は訊き返した。もう一昨日の感覚なのだが。

 「うん」

 「どの部分?」窓に背をあずけ、腕を組んで彼女たちを見やった。「私があんたたちの知らない男友達といたからって、かけなくてもいい声をいちいちかけてきたとこ? 勘ぐるために話伸ばして居座ったとこ? それとも男紹介してもらったとこ? エデがルキにアドレスを聞いて、しかもメール送ったとこ?」

 彼女たちはばつの悪そうな表情で顔を見合わせた。

 カーリナが静かに口を開く。「──そういうの、カルロに言わないでほしいんだけど。っていうか、誰にも」

 誰にも。

 サビナも気まずそうに切りだした。「休憩時間に言おうと思ったんだけど、寝てたから」

 そうですね。

 カーリナは疑わしげな、探るような視線をこちらに向けた。「言ってない──よね」

 「言ってない。そんなことより眠かったから」というか、そんなことは頭の中から消えていた。「べつに言ってもいいと思うんだけど」

 「だって」反論するような声を出したものの、彼女はすぐに視線と勢いと声を落とした。「──修学旅行に、シーズ・ファイアフライで言ったの、やりなおしたいって。でもだめだった。それからまだ、一ヶ月も経ってない。軽いとか思われたくない」

 軽いじゃないですか。「恋愛に発展するかはともかく、まだそんな段階じゃないじゃん。むしろ勘ぐるために声かけてきたってところがいちばん、嫌味だよね。“先輩知ってんの?”、とか」顔をそむけ、私は嘲笑うように言った。笑える。「お前ら、男の前ってなったらいちいちヒトに嫌味ぶつけてくるくせに」眉を寄せて身構える彼女たちの視線を再び、受け止めた。「どのツラ下げて言うなとか言ってきてんの? スケッチブックの時に私、言ったよね。お前らと仲良しごっこする気はないって。アイボリーのベストだの文化祭の打ち上げだの修学旅行だので、なんか勘違いしたわけ? そんなタマじゃないよね」ああ、だめだ。止まらない。

 顔をこわばらせて固まっている彼女たちに向かい、私は首を傾けて続けた。

 「私さ、そうやってヒトに使われるの、ホントにキライなんだよね。っていうか、私がわざわざあんたらの話を、自分からあいつらにすると思ってんの? 言うとしてもアニタくらいだよ。なのにいちいち教室に乗り込んできて。そっちのほうが勘ぐられる可能性、高くなるから。黙ってりゃバレないのに。昨日だって、お前らが今までなにしてきたかなんてこと、アドニスたちに話してないよ? 仲悪いって言っただけ。それだけで満足してろよ、頼むから」

 言葉を待たず、視線の的をカーリナだけに絞った。

 「で? 他になんか用? まさかアドニスのメールアドレスも教えろとか言いだすの? 楽しそうだったもんね、昨日」

 瞬間、カーリナの顔が真っ赤になった。

 図星かよ。「──マジで?」おそらく私は今、ものすごく呆れた顔をしてる。

 少々の沈黙の中、サビナは言い訳するように割り込んだ。

 「──好きとかじゃ、ないんだよ。ただ──」困惑の表情で彼女を見やり、またこちらに視線を戻す。「あたしら、紹介してもらった子ともメール、はじめたけど。なんていうか、実際会ったヒトのほうが安心できるでしょ? っていうか、友達になれないかなっていう──」

 彼女の必死な弁解にもかまわず、私はうつむき、肩を震わせて笑いだした。

 リーズとエデは好みが同じ? ニコラとカーリナは好みが同じ? ああ、おもしろい。

 「──笑うところじゃ、ないと思うんだけど──」

 笑える。マジで笑える。「ごめん、変な意味じゃない」とは言ったものの、笑いは止まらない。「ちょっと待って」

 笑いながらもポケットから携帯電話を取り出し、私はアドニスに電話した。ああ、おもしろい。

 床に腰をおろして壁にもたれる。こちらが深呼吸をして息を整えたところで呼び出し音が途切れ、彼の声に変わった。

 「なんだ、どした、何事だ」

 落ち着け私。「あのね、仲なおりした」今ぜんぜん関係ない話。

 「は?」

 「いろいろあって、先輩二人はまだだけど。オトコのほうは平気。っていう、どうでもいい報告」

 「は? いや、そりゃよかったけど。なに? それ言うためにわざわざ学校から電話してきたわけ? っつーか今学校だよな?」

 「うん、学校。違う、そんな話はどうでもいい。カーリナ、わかる? 昨日会って、あんたの隣に座ってた奴」

 「ああ、わかる。なに、どした」

 「アドレス教えてほしいって言ってるから、教えてもいい?」

 「え、マジで? オレもモテてんの?」

 「や、知らないけど。とりあえずトモダチになりたいんだって。なに、モテてるほうがよかった?」

 電話のむこうで彼が笑う。

 「いや、昨日言ったはずだけどな、しばらくオンナいらないって。まあ、アレはタイプじゃないけど。べつにいいんじゃね。お前が言ったんだし、そこから可愛い娘に繋がるかもよって」

 「それは先の話になるかもしれないけどね。っていうか、話を戻して。いいの?」

 「まあ、いいよ。リーズのイトコじゃねえだろ? それに、ぜんぜん知らないフリでとおすって言ってたじゃん。まさかニコラやリーズと一緒に遊ぶなんてことには、なんないだろうし」

 「うん、そうだと思う。んじゃ教えとく。電話番号も?」

 「どっちでも──こういう時って、どうすんのがいちばんだと思う? 相手を落とす気があるかどうかはともかくとして、女がいちばん喜ぶ方法みたいな」

 私が知るわけないのだが。「じゃあ、メールアドレスはカーリナに教える。カーリナの電話番号は、こっちからあんたにメールで送る。あとね、まだ十五分くらいは休憩時間あるから、電話して」

 アドニスはまた笑った。「了解、そうする。んじゃな」

 「うん」

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