* Morning Battle
修学旅行三日目、最終日の朝、七時半すぎ。
朝食の食器を片づけたあと、イヴニング・エメラルドのパーティールーム内。マイクを持った教師たちが今日の段取りを、ひそかにざわつく生徒たちに向かって説明しはじめたのだけれど、それを無視し、右隣に座ったダヴィデが小声で話しかけてきた。
「今日最後に行くとこ──シーズ・ファイアフライ。を、一緒にまわらないかって、イヴァンがサビナに、カルロがカーリナに誘われたって」彼の視線は、室内中央でプリント片手に話をする学年主任とA組担任、生徒指導主事に向けられている。
私は声を潜めて質問を返した。「エデ入れて六人でってこと?」
「よくわかんね。昨日の夜、別々にメールが来たらしい。一緒にとは言われてないけど、二人でとも言われてない。ただ何人かでまわるのでもいいからって。とりあえず保留にしてるとか」
他の生徒たちはみんな一応、教師たちのほうを見ている。
「行けばいいじゃん。なんならあんたも」
そう言うと、ダヴィデはこちらに向かって眉を寄せた。
「誘われてないし。っていうかもしエデが来て、そのメールどおりの組み合わせになったら、俺がエデとセットみたいになるじゃん。それはちょっと」
「そういう意味なのかな。シーズ・ファイアフライはラージ・ヒルの首都あたりじゃデートスポットだっていうし、やっぱ告白とかなのかな。」
「さあ──」また教諭たちのほうへと視線をうつす。「カルロはどうでもいいって言ってるけど、イヴァンは断ったらあとが気まずいよなって言ってる。なんか含んでるとしたら、その気はないから行かないのが正解。でも含んでないなら、行かないってのも変だろ。なに勘違いしてんだみたいな」
「ならトルベンでも連れて行かせればいいじゃん。あれならエデの相手できるよ」
彼はまた振り返った。
「え。あいつ、ヤーゴとアウニとチャーミアンと四人でまわるんじゃないの?」
どうやらトルベンはチャーミアンに告白されたこと、断ったこと、彼に言っていないらしい。自分のことになると口が堅いらしい。
「昨日チャーミアンと話した時、最終日くらい、ヤーゴとアウニをふたりっきりで観光させろって言った。んでね」身体を起こし、彼のチェアの背もたれに右腕を乗せた。「その前に行くサンダー・ゲートで、あんたたちにもおみやげ買ってあげる。なにがいい?」
「なにって言われても」また教師たちのほうを見やる。「お前、金使いすぎだって」
私は肩をすくませた。
「文化祭の打ち上げでカラオケ行った時、言ったじゃない。私の散財は復讐でもある。それを手伝ってよ。どこ行ってもやたら食べ物買って、散々荷物持ってもらったんだもん。まあそのぶんおやつあげてるけど。全員一致のがあったら、みんなでお揃いの、買えばいいじゃん。ブレスとかブレスとかブレスとか」
ダヴィは小さく笑った。「ブレスレットしかないのかよ。まあいいけど──シルバーアクセサリー、欲しいよな。イヴァンの姉貴いわく、サンダー・ゲートは露店がわりとあるらしい。そういう店も多いって」
私は露店に弱い。その時、その場所でしか買えないような気がするからだ。
「たまにセンター街で見かけるような、怪しいお兄さんが売るバカ高いのじゃないなら欲しいね。似たようなの数種類買って、適当に分けても──」
「それから」マイクを使って話す生徒指導主事が、なぜかこちらを見ながら言った。私たちの話を遮るよう、少し大きめの声で。「今日午後に行くサンダー・ゲートとシーズ・ファイアフライ。自由行動になるが、各自班行動を心がけること」生徒たちを見やりながら続ける。「この二日間、好き勝手に班を変えすぎだ。なんのための班分けだかわからん」
室内は一気にざわついた。
ダヴィの隣の席で、教師たちのほうを向いていたイヴァンとカルロが顔を見合わせる。さらにその隣、アニタとナンネ、エルミとジョンアも、さらにその隣、セテと私の隣にいるゲルトも、やっぱり顔を見合わせた。
ダヴィでは苦笑った。小声で言う。「ある意味救世主だな。俺らには関係──あ、エルミたちがいるか」
私たちのところは、ダヴィデ、ゲルト、セテ、イヴァン、カルロ、アニタと私の七人でひとつのグループになっている。ナンネとジョンアとエルミは、C組の他の三人とでひとつのグループだ。ついでに言えば、A組のチャーミアンとアウニ、トルベンとヤーゴはひとつのグループ。B組ではエデとカーリナとサビナが、煙草の持ち込みで捕まった二人の男子とプラス二人で、一緒に班を組んでる。ペトラは別のクラスメイトと。人数にも男女分けにも、これといった制限はない。
だからこのルールを守れば、ああなってこうなって、ああなるわけだが。
マイクを使い、C組の女子が質問を返す。「それは、同じクラス内でもですか?」
主事は冷めた視線を彼女に返した。「当然だろ」
私はテーブルの上にあったマイクを持ち、靴を脱いでチェアの上に立ち上がった。
「それは無理です」
マイクを使ってそう言うと、主事は片眉を上げてこちらの視線を受け止めた。同時に、生徒や教諭たちからの視線も一気にこちらに私に集まった。
しかし気にせず、私はまた嘘を並べた。「私、昨日の夜中、あのアホ男と電話で別れました。他のクラスの男子に告白する気満々なんですけど」
ざわつきが一段と大きくなる。私を見るアニタたちはぎょっとした。
しかし気にしない。「せっかくそいつとふたりっきりでサンダー・ゲートをまわって、シーズ・ファイアフライでデートして、ロマンチックな告白しようと思ってたのに? それを邪魔する気ですか?」なにを言っているのだろう、私。
生徒たちがそれぞれにざわつく中、主事は他の教諭たちと一緒に、呆れ返った表情で私を見ている。
「んなもん知るか。修学旅行は好き勝手していいところじゃないんだぞ。なにもクラス全員で行動しろと言ってるんじゃない。お前らが自分たちで決めた班だろ。たとえばお前のところは、二人でも三人でもよかった班を、七人でまとめた。だがC組の三人が混じってる。その三人は本来、C組の他の三人と一緒に班を作ってるはずだ。なんのための班決めだ? その三人でひとつの班にしてれば、お前の班とその班とで、ふたつの班が一緒に行動してることになったのに。しかもたまにひとりから数人が、抜けたり入ったりしてる。同じクラスどころか他のクラスの奴と一緒に行動してる。班行動の意味がないだろ」
言いたいことはわかる。間違ってるのはおそらく、私たちだ。
だが私は口ごたえした。「じゃあもうひとつ報告」“じゃあ”ってなんだ。「あるクラスのあるグループの二人は、昨日のレクリエーションのあと、最悪の大喧嘩をして絶交宣言をしました」誰と誰がだよ。「その二人は同じ班です。みんなの前では平静を装ってますが、実ははらわたが煮えくり返るほどムカつき合ってます。実は今日も、一言も口をきいてません」なに言ってんだ私。「ただでさえ修学旅行っていう一大イベントで大喧嘩して、修学旅行が最悪な思い出になろうとしてるのに。今日別の子と行動して、どうにかその思い出を塗り替えようとしてるのに、けっきょく最悪な思い出で終わらせろと?」誰か私を止めてください。
主事の隣、マイクを持った学年主任が口をはさむ。「それは、仲なおりするべきです。絶交だなんてのは、よくないでしょう」
お前は黙ってろ。「中学二年生になって、私たちのメンタル面も変わってきました。小学校六年の時とは違うんです。たとえば私とヘイズは、昔からしょっちゅう互いの家を行き来してたから、もう姉妹みたいなもんです。ブラのサイズまで知ってるくらいです」ああもうダメ。
教師たちはぎょっとしたけれど、生徒たちのほとんどはふきだした笑いをこらえた。アニタは唖然とした。
かまわず続ける。「でもそうじゃない生徒だっています。いくら普段仲がよくても、お互いの家に泊まりに行くってのができない場合もある。幸い学年内ではそういうのがあまりないのに、まだニュー・キャッスルだのオールド・キャッスルだのっていうのに、こだわる大人がいるからです。そんな状況下で改めて、二人か三人ていう組み合わせで、ひとつの部屋に二泊もした。嫌気がさすことだってあります。仲なおりするにしたって、時間が必要なこともあります。しようと思って、すぐにできるもんじゃないんです」
なにも考えていないのに、口が勝手に動いて大嘘吐くことはありますが。
「それは──」
言いかけたものの、主任は対応に困ったらしく、無言で主事に助けを求めた。
ボダルト生徒指導主事が、呆れた様子で溜め息をつく。
「なにが言いたい? 喧嘩した奴とまで一緒に行動しろとは言わんが、けっきょくどうしたいんだ。さっきのお前の班の例をあげれば、お前らと一緒に行動してるC組の三人や他の奴らは、喧嘩したわけじゃないだろ? お前が他のクラスの奴と二人でまわるとか言ってるのもそうだ。原則班行動でというルールを拒否する理由にはならん」
そうきたか。というか、私は拒否したいわけではない。原則班行動、大いにけっこうですが。
しかし反論する。「他のクラスにだって、仲がいい子はいますもん。状況を変えれば、見える景色も違いますよ。誰と一緒にいるかで、変わって見えるものもある。どの場所に誰といたいかってのは、その時その時で違います。わりと誰とでも平等につきあいたがる奴もいる。たとえば友達のひとりは、私とわりと仲がいいのに、私のキライなグループの奴とも仲がよかったりする。面倒なはずなのに、私みたいに友達の少ない人間のことを考えて」か、どうかは知らないけど。「偏らずに人づきあいをしようとしてくれる、やさしい奴です」なに言っているのかわからなくなってきた。「さっきのデートの件は嘘なんで、どうでもいいですけど」さらりと言っちゃった。「班行動を原則化したうえで、喧嘩した奴とは一緒に行動しなくていいなんて言われると、亀裂が入った部分が目立ちます。それは避けたい」
長々と言い終えると、やはりマイクを使い、今度はA組の男担任、技術担当のババコワ教諭が口をはさんだ。
「グループ行動は、リーダーと副リーダーをひとりずつ決めてある。それはグループ内の統率をとるためにだ。同時に緊急時の迅速な連絡連携と集合、安否確認のためでもある。そのグループがバラバラじゃ、意味がない」
お前も黙ってろ。わかりきったことだけ言ってんじゃねえよ。
「それは承知です。私を含め、今ここにいる生徒たち全員、自分たちが間違ってるってのはわかってます」というか私、なぜこんなことをしているのか。「でも実際にこうやって修学旅行に来てみて、“ここではこの子と一緒にいるのがいちばんだ”って、はじめてわかることもあります」ちなみになんとなくの流れで、そのグループになっちゃった場合もあります。エルミたちは特に。
返しを待たず、私は視線を主事へと戻した。
「グループ内の統率云々、リーダーや副リーダーというのが重要になるなら、今ここで、新しい班を作らせてください」
そしてずっと冷静に、テーブルに肘をついて両手を握り合わせ、指に顎を乗せて話を聞いている教頭先生に向かって続ける。
「もちろんクラス関係なしで。最低二人、リーダーと副リーダーを決める。そうすれば今日の自由行動、学年全員が、その班で行動します。班と班が一緒に行動するのは問題ないようなので、かなり細かくなるかもしれませんが。というか、そういう細かいグループを作れない雰囲気にしてたのは、むしろ学校側ですよ」私、とうとう喧嘩を売りはじめました。「“班”で“リーダー”、“副リーダー”というキーワードが入れば、少なくとも四人は必要なのかと思ってしまう。二人や三人でもいいなんてのは、はじめて聞きました。はっきりと禁止されてないのは確かですけど。しかも携帯電話を持っている生徒の一部は、その番号を学校側に提出もしましたよね、緊急時の連絡用にって。電話を持っている生徒がグループ内に、リーダーや副リーダーとしていなきゃいけないのかとも思ってました」
ひそひそとではあるが、生徒たちがうなずきの声をあげた。
ちなみに私たちのグループは、アニタがリーダーでセテが副リーダーだ。エルミもリーダーだ。わりとめちゃくちゃ。
私は続けた。「もう三日目、最終日です。こちらの非は認めますが、学校側に説明不足な部分があったのも確かなはずです」あはは、無理やり。「まとめるところはまとめるよう努力するので、班行動の目的を果たしつつ、最終日の自由行動を最大限に楽しむためにも、他のクラスの生徒を交えて班を組みなおすこと、許可してください」
こちらが言い終えると、教頭は微笑み、マイクを手にとった。
「わかりました、そうしましょう」
その答えに、生徒たちは歓声をあげた。同時にA組のババコワ教諭が呆れ返った様子で小さく天を仰ぎ、主事は溜め息をついて学年主任といくつかの言葉を交わしながら、近くの席にいる教頭たちとまた少し話した。
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私がチェアに座りなおしたところで、主事が騒ぐ生徒たちに向かって言った。
「静かにしろ」
学年主任があとをひきとる。「ではこれから各自仕度をし、八時四十分までにロビーに集合してもらいます。忘れ物をしないように気をつけてください。時間が少し減ってしまいましたが、出発時間は九時のままです。遅れないように」
主事がさらに言う。「新しい班を決めたら、それを紙に書いてロビーに持ってこい。携帯電話の番号はなくてもかまわん。だが最低二人だ。あと三十分ちょっとしか時間がない。ここで話し合って決めるのもかまわんが、集合時間には遅れるなよ。それからグラール」私を呼んだ。
ええー。私は座ったまま、マイクを使って返事をした。「なんすか」
「お前は荷物を持って八時三十分までにロビーに来い。新しい班の報告を全員分回収できてるかどうか、クラス名簿でチェックする。それを手伝え。なんなら、あと二人か三人連れてこい。ハイヤーでも作業続けるからな。車酔いしない奴にしろよ」
教頭と主事、カメラマンのおじさんと保健の先生は、バスではなくワンボックスカーで移動している。
めんどくさい。「はいわかりました」めんどくさい。
生徒指導主事がミーティング終了をコールすると、生徒たちは早々に席を立ち、誰と新しい班を作るかをそれぞれに相談しはじめた。
イヴァンが笑う。「なに必死になってんだよ」
「放っといて」私は無愛想に答えた。「あんま寝てなくてテンションが変なのよ」アニタが起こしてくれたおかげで、寝起きのシャワーは浴びられたし、メイクもできたが。まだ眠い。
「とりあえずうちらは、この三人で組む」エルミが言った。「そっちは?」
ダヴィデがイヴァンとカルロに言う。「お前らは二人で組んどけよ。っていうかトルベン呼んでこい。三人組」
カルロが反応する。「え、お前は?」
「俺はゲルトとセテと」彼がこちらに訊く。「お前も?」
「うん。そっちでいい」私はアニタへと視線をうつした。「あんたは?」
「ええと──」彼女は悩んだ。「そりゃベラとでいいんだけど、ペトラも入れたいような──」
「ベラー」エルミたちのうしろをまわりこんでこちらに来るペトラが背後から私の首に腕をまわし、めずらしくも愛おしげに髪に頬を寄せた。「あんたにやさしいなんて言われると思わなかった」
さきほど私が言った、“私のキライなグループとも仲がいいのに偏らずにトモダチづきあいをしてくれる友達”というのに反応したらしい。確かに彼女の話ではあるが。
私は鼻で笑った。「誰もあんたのことだなんて言ってないわよ」
「は?」すぐさま腕を離し身体を起こす。「なんだお前。感動返せ」
「とりあえず」顔を上げ、背後に立つ彼女を見上げた。「自由奔放なアニタのお守り頼んでいい? っていうかあんたも自由奔放だけど。私はゲルトとセテとダヴィ、四人で組んでおく。アニタと組んだらエデたちとはいづらくなるかもだけど、たぶんあいつら、今日は別に予定があるはずだから」
「ああ、アレね」にやついて言い、彼女はアニタへと視線をうつした。「とりあえず二人でいいか。そしたらベラたちとも、カルメーラたちとも一緒にまわれるし」
アニタは笑顔だ。「だね、そうしよ」
「トルベン呼んだ」携帯電話を閉じながらイヴァンがカルロに言う。「こっち来るって」
だがそれよりも先に、右方向からチャーミアンが来て私に声をかけた。
「チェック、手伝おうか」
ハイヤーに乗りたいわけではないと思うが、私は彼女に質問を返した。
「それはどうでもいいけど、アウニとヤーゴは? ふたりで組むって?」
彼女が苦笑気味に答える。「うん、ヤーゴが説得した。最終日くらいデートしたいって言って」
ペトラが笑う。「超冷やかされるんだろうね、あれ」彼女の後方に気づく。「あ、トルベンも来たよ」
チャーミアンは小さくぎくりとした。だが振り返らず、再びこちらに訊く。
「チェックは? いい?」
「うん、いいよ」私はアニタに訊いた。「あんたやる?」
「やる! 酔い止め飲むし」
「しょうがないからあたしも手伝ってあげる」と、ペトラ。
ダヴィデが笑う。「お前ら、目立つのとハイヤーが目的だろ」
二人は声を揃えた。「当然!」
「じゃあ行くね」と言うと、チャーミアンはペトラの背後を通り、C組のほうへと歩いていった。
少なからず安心したようにこちらに来たトルベンは、イヴァンとダヴィの隣に立った。
彼がダヴィデに訊ねる。「なに? お前は組まねえの?」
「セテとゲルトとベラで組むから。アニタはペトラと組んで、自由奔放に動きまわるらしい」
「へえ」
そこで私は気づいた。トルベンがイヴァンとカルロと三人で組むと、私はもうイヴァンとカルとは今日、一緒にまわれないことになる。まあいいか。
「とりあえず三十分にロビーに行かなきゃいけないし、さっさと戻って用意しようか」
私がアニタに言うと、彼女は同意した。
「んじゃ、十階のエレベーターホールで待ち合わせね」
ペトラはそう言って、クラスメイトのところに戻っていった。一応C組の子に報告してくると言い、エルミたちも席を立った。
私もアニタと同時に席を立つ。
「今日の午後は別班行動だね」イヴァンとカルロに言った。「むさくるしい男三人旅にならないよう、がんばって」
セテが笑う。「ひでえ。言い方がひでえ」
「こっちもたいして変わんねえよ」ゲルトが言う。「男四人とは言わないけど、男三.五みたいなもんだし」
なんて。
トルベンを除き、彼らはけらけらと笑った。
「そっちのほうがひどいし!」とは言いながら、アニタも笑っている。
「とりあえず、紙はお前が持ってけよ」ダヴィデが私に言った。「たいして変わんないだろうし、誰がリーダーと副リーダーでもいいから」
ゲルトをリーダーにしてやる。「ん、そうする。あとでね」
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あとになってペトラはチャーミアンから、トルベンにフラれたことを聞いた。アニタにも話した。彼女たちは二人とも、自分のためじゃなかったのかよとつぶやいた。ペトラを介し、チャーミアンに礼を言われたけれど、とりあえず無視した。
チャーミアンとトルベンのことなど知るはずもないナンネたちは、自分たちのためだったと思いこんでいた。そういうことにしておいた。
そして午後、サンダー・ゲートでの自由行動は、なぜかトルベンが一緒にいた。イヴァンとカルロと三人でグループを組んだからだ。
ダヴィデやゲルトたちと一緒に、夢中になってシルバーアクセサリーを選び、彼らにおみやげとしてそれらを買った。冗談のつもりでトルベンにも買ってあげようかって言ったら、普通に買わされた。冗談が通じなかった。
そしてもちろん自分のぶんも、アゼルたちへのおみやげも。ついでにアゼルへのクリスマスプレゼントにぴったりなパーツも見つけ、それも買った。サイズは違うが揃いの意味で自分用にも。残りのパーツは、ベネフィット・アイランドで探すことにする。
別の店で、アニタとペトラ、ニコラとリーズにもアクセサリーを買った。エルミがものすごく羨ましそうな顔をしたから、仕方なくナンネとジョンアを含め、三人にも。
サンダー・ゲートにある品物はどれも高品質、低価格で、得意の値引き交渉も引くことなく活用したとはいえ、想像以上の散財っぷりを発揮し、私はATMでお金を下ろすはめになった。
その後のシーズ・ファイアフライでは、他の子に誘われたナンネたち三人が去り、イヴァンとカルロ、トルベンがエデたち三人と一緒に、アニタとペトラもいろんな班をまわって行動していて、私はゲルトとセテとダヴィデの四人で、無駄に歩きまわることもせず、かなり地味な時間を過ごした。ただセテとダヴィデは、それぞれ自分の妹に海の生き物のぬいぐるみを、私は自分用にまたも、大量のお菓子を買ったけれど。
あと三十分足らずで集合だというところで、イヴァンとカルロ、トルベンの三人が戻ってきた。カルロはカーリナに告白され、断ったらしい。今はそんな気はないと。
イヴァンとサビナのほうは、よくわからなかった。ただトルベンとエデとサビナの四人でいて、好きな女はいないのか、誰かとつきあう気はないのかと彼女たちに訊かれ、やはりそんな気はないと答えたという。




