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R E D - D I S K 0 2  作者: awa
CHAPTER 10 * ASKING DAYS
57/119

○ Eight Flag

 けっきょくリーズは数日のあいだ、気まずそうというよりは申し訳なさそうな態度をとっていた。妙におとなしいというか。それでも私が普通に接していたものだから、四日経った頃には、それなりに元通りになっていたけれど。

 ニコラによると、もともと人見知りする性格のリーズは、私と同じで特に、同性とのつきあいが苦手なのだという。もちろんニコラは別ではあるが──同時にアゼルたちの存在もあり、同級生の男たちとは距離をとっているから、異性──男との本当の友情などないと思っていて、だけど私とゲルトを見ていて、恋愛感情の絡まない気さくな、同等の立場でなんでも言える相手の存在というのに、本気で憧れていたらしい。それを、インゴと話していて認識できたのだとか。私の言う“気を遣わなくていい友達”というのが、彼だったと。

 エルミが知ったら嫉妬するかなとリーズがつぶやくから、そこはどうでもいいと答えた。私はエルミを応援する気などないし、奴の肩を持つ気もない。私と同じで、連絡をとっている相手をいちいち把握しておく必要も報告する必要もないし、知り合ったタイミングは同じなのだから、あとでエルミに知られて文句を言われても無視すればいいし、なんなら言い返せばいいとも答えた。リーズがエルミを潰そうと、私には関係のないことだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 土曜日。

 私とアニタは、アゼルとマスティとブルに連れられ、センター街のエイト・フラッグ・エリアへと脚を踏み入れた。はじめて行くエリアだ。

 他となにが違うかというと、メイド喫茶やコスプレ喫茶という、意味不明な類の店が堂々と存在している。他にも同人誌を多く取り扱っているらしい書店だったり、誰が買うんだよと言いたくなるような変なデザインの服を売っている店だったり──ギャルゲー専門店? なにそれ? ──みたいな店も。

 カラオケボックスもあるものの、宣伝文句が、“ここならあのアニメソングも見つかる! うたえる!”、だ。意味がわからない。ファンシーショップかと思えば、アニメキャラクターグッズ専門店だった。しかもそこには、セーラー服やメイド服姿のアニメキャラクターらしきフィギュアがいくつも飾られたショーウィンドウの前に立ち、それらフィギュアをウィンドウ越しに眺めながら真剣に悩んでいるらしい三十代くらいの男二人がいた。アニタは泣きそうになっていた。

 そんな中にも、まだマシだと思える店はあるらしい。ファンキーな雑貨を多数取り扱う店や、すべてが通常の倍かそれ以上の大きさらしいお菓子を取り揃えている店、そこには外国のお菓子もあるらしかった。CDやDVDを売る店の宣伝文句はやはり、“アニメ関連在庫多数!”、だったが。

 私たちは、パーティーグッズを専門に扱うらしい店に入った。

 その店には、定番のクラッカーからコスプレ衣装まで、たくさんの品が揃っていた。値段もピンからキリまでだ。マスクの種類もたくさんあって、そのうちのひとつ、ゴリラの仮面を見た私が思わず“ハヌルそっくりだ”とつぶやくと、四人はありえないくらい爆笑していた。厳密に言えば似ていないはずだ。だけど眼鏡をかけたらハヌルになるのではというくらい、本当になにかがそっくりだったのだ。とりあえず私は、使えそうで安いマスクを数種類買った。もちろんゴリラのマスクは買っていないけれど。

 そのあと、アゼルたちの買い物につきあうため、エイト・フラッグから川を挟んであるイースト・アーケードの古着屋に行った。

 アゼルが仕事に行った日は、運がよければ、彼の黒いツナギ姿が見られる。私はその格好が好きだった。とても似合うのだ。でもアゼルはいつも、マブに帰るとさっさとシャワーを浴びて着替えてしまう。三人揃って仕事に行った日は、いつもシャワーの順番を取り合っている。

 マブにある、部屋着というか地元着にしているTシャツやジャージ、スウェットは、どれが誰のだかわからず、特にマスティとブルがそのまま家に着て帰ったりするものだから、お互いマメに管理しないと、すぐにマブから服がなくなるらしい。

 ついでに、私もロックテイストの服とアクセサリーを少々買った。あからさまにそういう系統の服は持っていなかったからだ。サングラスをかければ十八と名乗っても通じるとアニタとブルに言われ、キレかけた。

 午後四時前──買い物を終えると、ムーン・コート・ヴィレッジ前のバス・ステーションまで戻った。でも次のバスが来るまで二十分弱あるからと、アゼルたちをバス・ステーションに残し、私とアニタはその西側にある店にクレープを買いに行った。

 その店は上層がビジネスホテルになったビルの一階に店舗を構えていて、私が好むデザート系統のクレープだけでなく、サラダだのチーズハンバーグだのという、クレープ生地では絶対食べたくないような不気味なクレープも売っている。定番も含めすべて合わせれば、種類は五十種類以上ある。

 買ったクレープを持ち帰り用にしてもらうと、一度通りを渡ってヴィレッジ前のベンチや花壇のある広場を歩くことにした。そうでなければ、バス・ステーションやタクシー乗り場のあいだにある道路をいちいち、左右を確認しながら歩かなければならないからだ。広場は薄めの灰色をした大き目のタイルが敷き詰められ、等間隔で木の板で囲まれた花壇がいくつかあり、それを囲むようにして木製ベンチが設置されている。

 「考えたら彼氏以外の男友達とまともに買い物したの、はじめてかも。超楽しいんだけど」

 右隣を歩くアニタが言った。彼女はバッグの他に、自分と家族へのおみやげとして買ったクレープが入った袋を持っている。

 「うるさいだけだよ。おもしろ半分であれもこれもって、やたらと買わせようとしてくるんだもん。どうせすぐに飽きるのに」と、私。

 「けどさ、彼氏の前だと、あんま変なのとか見れないじゃん。あたしの場合、“これベラが見たらどう言うかな”ってのが、わりとあんのね。あんた変なモン好きだから。けど彼氏──っていうか女友達もそうだけど、あんま反応しないし。けどそういうの、マスティとブルだけかもしれないけど、見てたら普通に反応してくれるもん。あんたと同じで、無駄につっこみ入れてくれるし。笑いすぎてあごがはずれるかと思った」

 確かにパーティーグッズの店では、私もアニタもありえないほど笑っていた。笑いすぎて店員に声をかけられたほどだ。といっても注意ではなく、その商品のおすすめポイントだったり、買うなら値引きしてやる、という話だったが。

 にやつき顔のアニタが続ける。「ま、あのハヌルゴリラが今日いちばんの笑いどころだったと思うけど」

 思わず笑った。「思い出させんな。夢に出てくるかもって、ちょっと不安なんだから」

 彼女も笑いだす。「あんたが言ったんじゃん。買って家に置いておきたくはないけど、みんなに見せたかったよね。ハヌルの反応も見たかった」

 ゲルトたちには見てほしいな。いや、それよりもエルミとナンネとジョンアかな。リーズやニコラにも。あれは紛れもないハヌルだか──」

 「ベラ!」

 数メートル先にある花壇ベンチのひとつに、並んで座るアドニスとルキアノスを見つけた。アドニスの右隣にはもうひとり、知らない男が座っていて、その彼は右を向き、別のベンチに座った三人と話をしていたものの、私を呼ぶアドニスの声で話をやめ、彼らと一緒にこちらを見た。

 「誰だあれ」アニタが小声で言う。「もしかして例の、リーズとニコラの?」

 一緒にいた友達に声をかけ、アドニスとルキが二人でこちらに来る。

 「うん」私も声を潜めて答えた。「向かって左にいるのがニコラが狙ってるほう、右にいるのがリーズが狙ってるほう」

 「へー。頭よさそう。特に右。美形だね」言いながら、彼女は私の背後にまわりこんだ。

 彼らは私たちの前で足を止めた。

 「なにやってんだよ。センター街に来るなんて訊いてねえ」と、アドニス。

 私は答えた。「今日はオトコと一緒だから。あと先輩と」

 「マジで? お前のオトコ、見れんの?」

 「見る必要はないよね。見ても意味ないよね」

 「いや、見れるもんなら見たい」アドニスがアニタへと視線をうつす。「ベラがいちばん仲いいっつってた友達?」

 私の背後に立つ彼女は、警戒した様子で私の肩越しに彼らを見ている。

 「そうですね。って、そんな言われかたをしてうなずくのも変ですけど」

 「名前は?」

 「ヤです。彼氏がいるのでお答えしません」

 アドニスが天を仰ぐ。

 「こっちもオトコいんのかよ」

 ルキアノスは彼に呆れ顔を向けた。

 「とりあえず誰にでもナンパっぽくすんのやめろ。同類だと思われたくない」

 「は? 女の子と知り合ったら名前訊いてオトコいるか確かめる! これ常識!」

 「違うだろ」と、私はルキと同時につっこんだ。

 「とりあえずもう行く。バスがくるから」

 「あ、さっき」アドニスが私に言う。「ニコラがメールしてきて、また四人で遊ばねえかって言ってきた。エルミ誘ったけど、文化祭の準備がどうこうって断られたらしいんだ。だから四人。暇だろうから行ってくる」

 知っている。エルミからも聞いた。「そ。楽しんで」

 ちなみにリーズとニコラ、私たちが今日、アゼルたちと一緒にセンター街に買い物に行くことを知ってる。でもセンター街でアドニスやルキに会う可能性があるし、その他諸々の可能性も考え、行かないことにした。よくわからないがこれはつまり、来なくてよかったということか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 夜、携帯電話にアドニスからメールが入っていることに気づいた。

  《あのいちばん背が高い奴? 髪が同じ赤って、なに? どっちも地毛? 奇跡? っていうか美男美女カップル? なにげに衝撃だったんだけど。いや、ショックじゃなくて衝撃な。お前の地元、レベル高いの? 田舎のくせにどんだけハンサム男と可愛い女取り揃えてんだよ!》

 とりあえず無視しておいた。

 彼、今週月曜にリーズにメールを送ったらしい。返事がきたのは翌日で、それも私と同じくらいそっけない内容だったとか。もうどうでもいいやと、アドニスは彼女とメールすることをやめた。

 次にエルミにメールを送ると、そこは普通に返ってきた。時々メールしているのだが、エルミはインゴが好きだとはっきり言ったらしい。ハヌルの話も聞かされたらしく、なんとなくエルミの性格がわかったと苦笑いながら言っていた。インゴは素直な女は好きだけど、性格の悪い女は嫌いだから、実る可能性は低いな、と。

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