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R E D - D I S K 0 2  作者: awa
CHAPTER 08 * EXPERIMENT DAYS
48/119

○ Grumble From Girl Friend

 カルメーラがこちらに来た時、私は拾ったアセロラジュースのペットボトルに蓋をし、またひとりで笑っていた。カルメーラは、ついに完全にイカれたかという眼で私を見ていた。

 「え、なに。どしたの」

 こらえろ私。「ペトラのジュースこぼした」中身が半分ほどになったペットボトルを見せ、それを地面の邪魔にならない位置に置くと、さっきとは反対側のベンチに腰かけた。「ちょっと気になって。あんた、ミニ浴衣でよかったの?」

 彼女は顔をしかめた。「しょうがないじゃん。そりゃ普通の浴衣のほうがよかったけど」さっきまで私が座っていたベンチに腰をおろす。「アウニが一緒のって言うんだもん」

 「へー。あんたはあの中に好きな男いないの?」

 「うーん──よくわかんない。イヴァンがいちばん話しやすい気がするだけで、特に。アウニのことがあるから、それどころじゃないし」

 「そ。あんま協力しすぎもよくないよ。変なことになるから」

 「え」

 彼女の後方に、にやつくヤーゴと苦笑うダヴィデの姿を確認した。身を乗り出し、私は彼女に向かって声を潜める。

 「あんた、勘ぐられてる。あの中の誰かのこと好きなんじゃないかって」

 「ええ!?」

 「ベラ、お前の奢りだっつーからソフトクリーム頼んだ」ダヴィデが言った。「カルロも奢るって言って、全員ソフトクリームにしたから、ほぼ全員ついてった。むこうに残ってんの男三人だけ」

 「そ」

 「アイスの前にジュース──」ベンチの脇に立ったヤーゴがテーブルを見やる。「なにこれ。ぐちゃぐちゃ」

 彼の演技はザルだった。

 「さっき探し物してたの」と、私。さらりと嘘を並べる。「ジュース飲もうと思ったら蓋が転がってね。暗くてよくわかんなかったから、あちこち引っ掻き回した。ぐちゃぐちゃになった」

 「オレのジュース、どっちだよ」カルメーラに言う。「お前も同じの買ってたよな」

 「あんたがあとから買ったんじゃん」彼女は嫌気がさしたといわんばかりに答えた。果汁五十パーセントのオレンジジュースだ。「どっちかわかんないよ」

 ダヴィデが訊く。「どれくらいの量飲んだか覚えてないの?」

 「両方同じくらいだもん」私は言った。「どっちでもいいんじゃないの? べつに困ったりしないでしょ」

 カルメーラはぎょっとしてこちらを見ると、ほんとに小さく首を横に振った。そんな態度に彼らは無言で顔を見合わせた。

 実験終了だ。「ヤーゴ、そういえば私、言ったよね。かぶってんだから自分のほう、ラベルちょっと剥がしとけって」

 「あ」彼はさも今思い出したかのように、手前にあったジュースを手に取ってラベルを確認した。「違う」

 カルメーラも疑わしげな表情で自分の傍にあったオレンジジュースのペットボトルを取り、ラベルを確かめる。

 「──剥がれてる」

 「んじゃそれがオレの」ヤーゴは彼女からペットボトルを受け取った。「オレンジのあとにバニラソフトクリームってすげえ変な気がするけど」蓋を開けて喉に流し込む。

 うんざりそうな表情をするカルメーラをよそに、私は言った。「かければいいよ。バニラオレンジになるかも」

 「絶対まずい」

 ダヴィと声を揃えて言うと、ヤーゴは彼と一緒に戻っていった。

 カルメーラが深い溜め息をつく。

 「もう疲れた」

 私は苦笑うしかできない。「これで終わりよ。標的はたぶん、アウニに変わる。おつかれ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 コンビニ組が戻ってきた。ペトラはソフトクリームだけでなく、百五十フラムでジュースも買っていて、ゲルトにソフトクリームを渡したカルロはそのまま、アニタからチョコレートソフトクリームを受け取った私とゲルトとのあいだに割り込み、私に千フラム札を一枚返した。

 「半分はお前の金」とカルロが言う。「半分プラス百フラムはオレの金」

 アイスは全員分。百五十フラムを十四人で──計算ができない。

 「二千百フラムだったってこと?」

 「そ。しょうがないから百フラム出してやった」

 「百フラムごときで威張るな」

 そう言いながらも千フラム札を甚平のポケットにしまう。コーンより上の部分はいらないから、五十フラムくらい値引きしてくれないかな、というのが私の本音なのだが。

 「お前、百フラムは貴重だよ? 十フラムチョコ十個買えるべ」カルロが言った。

 「今もう十フラムチョコってそこらにないよね。二十フラムになってるよね」

 彼ははっとした。「あ」

 「チョコ好きナメんな」

 私の向かい、セテとペトラのあいだに腰をおろしたアニタが口をはさむ。「ベラのチョコ好き、半端ないよ、マジで。チック・ノーティドのショッピングセンターとか、センター街に行くとね、チョコ入りのクレープとチョコ味のソフトクリーム、絶対二回は食べんの。マジありえない」

 カルロはぎょっとした。「二回!?」

 「二回で済めばいいけど」チョコレートソフトクリーム片手にペトラが補足する。「たまに三回食う。クレープ食ってソフトクリーム食ってクレープ食ったり、その逆だったり。見てるこっちが羨ましいのを通り越して気分悪くなるくらい」

 彼は呆れた。「マジで?」

 「たまにパフェも食うよ」と、私。

 ペトラはしかめっつらを見せた。「それでその細さ。ふざけてる」

 「太らないからって調子に乗りやがって」アニタ。

 「あれ食うこれ食うっていちいち立ち止まりやがって」ペトラ。

 「歌うまいくせにカラオケがキライとか言いやがって」アニタ。

 「映画館で最悪な態度ばっかとりやがって」ペトラ。

 「身長あるくせにさらに厚底履きやがって」アニタ。

 「頭悪いくせにテス勉放棄しやがって」ペトラ。

 「無駄遣いばっかしやがって」アニタ。

 「めんどくさいとか言いながら気ばっか遣いやがって」ペトラ。

 「浴衣着ろよアホ」アニタ。

 「いちばん浴衣似合いそうな奴が甚平着てんじゃねえよアホ」ペトラ。

 「けど浴衣着たら黙ってろよアホ」アニタ。

 「喋ったら台無しなんだよアホ」ペトラ。

 「けっきょく浴衣じゃないからここまで言う必要ないわアホ」アニタ。

 ペトラが冷静な表情で彼女に言う。「あんたの負け」

 次の瞬間、私を含むほぼ全員が、天を仰いで笑った。

 「すげえ。二人がこんだけベラに文句言ってんの、はじめて聞いた」セテが言う。「どんだけ出てくるのかと思った」

 「褒めてんのかけなしてんのかわかんねえ。とりあえず文句ばっかだ」ダヴィデは彼の隣でバニラソフトクリーム片手に笑っている。

 「いや、ここは前回同様、ベラの悪口か文句言うところなのかなと思って」と、ペトラ。

 アニタは笑いをこらえている。「頭フル回転させた。今のだけですごい疲れた」

 「今年の夏休み、一回は行ったんでしょ?」カルメーラが私に訊いた。「アニタとカラオケ」

 「二回行った。一回はアニタとじゃないけど」ちなみにカルメーラは小学校の時、私と一緒にうたうことを拒否したうちのひとりだ。

 「男子ってカラオケ行くの?」アウニが訊いた。「あんま聞いたことないけど」

 カルロが応じる。「行ったことはあるけど、あんま行かね」

 「行かねえな」イヴァンも答えた。「同期と行ったことはない」

 「カラオケに意味があるのかよくわかんねえ。マイク持ってわざわざうたうって、なんか──」ゲルトは言葉を濁した。

 セテがあとを引き継ぐ。「アホっぽい。カラオケなんか行かなくても、ベラがわりと勝手にうたいはじめるし」

 「そういや四年の時、学校にCD持ってきて、休憩時間にカラオケ大会みたいなことやってたよな」ダヴィデが突然言った。

 「ああ、やった! すぐ先公に見つかって、CD持ち込んだベラがひとり怒られて終了したけど」

 「延々と音楽の授業にケチつけて、そのうち授業の最初に有名曲をクラス全員でうたうってのを、先公に実行させたりもしたよな」ゲルトが苦笑いながら言う。「合唱カラオケ状態」

 カルロがこちらに言う。「あれ、お前か。なんで授業でこんなことやってんだと思ってた」

 うたうようになったのは小学校五年生の時だ。音楽担当の先生にずっと言っていた。

 「楽しいでしょ。六年になった頃にはみんな調子こいて、流行りのくだらない曲をリクエストするようになったけど」

 アニタが口をはさむ。「ベラの選ぶ曲はほぼ却下されてたよね。流行りのでも、小学生が好きな歌でもなかったし」

 ペトラは笑った。「六年の途中から諦めて、もうリクエストしなくなったっていう」

 「どうでもよくなったのでね」

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