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R E D - D I S K 0 2  作者: awa
CHAPTER 03 * FIGHTING DAYS
20/119

* Next Plans

 マブで愚痴りたい気もしたけれど、サボりの身なのでやめた。サボったあげくに男と遊ぶってどんなだ、と。けれど煙草が欲しかった。はじめてそんなことを思った。

 本当に、怒っているわけではない。だが呆れが大きすぎる。カンニネン学年主任と違って、他の奴らと違って、私は頼られても嬉しくないのだ。ぜんぜん、まったく、微塵も。

 そのうえ、アニタが妙なことをしてくれた。確かに普通に頼まれても、絶対イヤだと言い張ったに違いない。でもだからといって、これはどうなのだ。私の性格をわかっているからこその結果なのだろうけど、A組に対する罪悪感も大きいのだろうけど、それにしたってどうなのだ。

 断れない奴ではないはずなのに、なぜ断らないのだ。本物のアホなのか。やさしいにも程がある。それを言えば、私は冷たいにも程がある、となるけれど。

 悪いね、気遣わせて。どいつもこいつも面倒すぎる。


 シャワーを浴びて着替えたあと、屋根裏部屋。

 チェアに座ってデスク上のレポート用紙とペンを、かなり喧嘩ごしに見つめた。

 さて、どうしよう。

 D組用に考えた設定はある。“学校の七不思議”だ。中学はどうだか知らないけれど、小学校にはそんな話があった。それを中学バージョンで勝手に作ろうとしていた。設定というか紹介を紙に書いて配るとか、暗幕での壁部分に貼るとか、そんなことをするつもりだった。しかもぜんぶ、幽霊として出るわけで。かなり無理やりなわけで。だってもう、ダストクロスとかホウキとかなんとか、使えないし。ラクでよかったのに。マジでひどい。

 そのストーリーをもっと綿密にやってもらうという意味では、まあ──どうなのだろう。A組の奴らを役者であり、製作スタッフにするわけだから。レベルはもう、予告どころかショート映画仕立てだ。これはこれでおもしろそう。だけどしっかりと割り切って考えなければ、D組から苦情が出るうえに怖さが半減する。

 というかB組とC組、どうするのだろう。B組とC組が揃って教室部門を選んだら、順番的に、A組でホラー映像を観たあと、B組とC組でふざけたゲームなんかを体験しつつ、D組で──というカタチになるのか。それとも両方ステージに行くのか。どうなるのかわからないし、どちらがいいのかもよくわからない。でもA組の映像からD組のホラーハウスに来るという流れは、絶対にしてほしい。できれば。いや、マジで。そうすればおもしろい繋がりができる。


 とりあえずペンを持ち、中学校舎内の見取り図を簡易的に、レポート用紙に書き出した。程よく場所を分散して作りたい。でも音楽室は使わない。音楽にそんな呪いはいらないから。

 書き終えると、椅子に背をあずけて目を閉じた。幽霊がいるとすれば、出るとすれば、恨みが遺ってるからだ。怨念。あと、心残り。夢半ばで死んだとか。それがカタチになる──カタチって、なんだか言いかたが変だけれど。

 恨みつらみの設定。たとえば──いじめられて自殺したとか。やっていいのかな、こんなの。イジメや自殺防止普及啓発ポスターみたいなの、作らないかな。ラスボスが出口まで客を追いかけて、それを背中に貼るとか。どんなだよ。

 教師に弄ばれて捨てられたあげく、殺されたとか閉じ込められたとか。この教師役をヤーゴがやればいい。むっつりじゃなくてオープンスケベのアホ男。いや、実はむっつり? 誰にでもそんなことを言ってるわけじゃないだろうけれど。大人役を演じるには身長が低いものの、それはどうでもいい。昔の校舎は木製だっただろうから、実はそのひとつが収納スペースになっていて、そこに少女を閉じ込めたとか。さっそく無理やり。

 美術室──絵の具がぜんぶ血、なんてのは、七不思議にありがちだ。なぜ、となったら──絵を描くことに憑りつかれた少女が、赤の絵の具が必要な時、日々自分の血を使って描いていたから。筆は自分の髪で作ったオリジナルの筆。“赤い絵の具が足りないの。あなたの血をちょうだい”、とか。いやいや。どんなだよ。ある意味吸血鬼。

 体育館──夜中になると、バスケットボールをつく音が聞こえる。体育館に入ると、首のない男の子がバスケットボールで遊んでいる。パスを渡してくる。“一緒に遊ぼう”。ボールを見ると──実は生首。

 思わず口元がゆるんだ。怖いわ。どんなだ。できるかな。マブにあるマスクみたいな感じでやりたいな。というか、あの女のマスク借りたいな。あれをラスボスにしたい。設定は──。

 楽しみにしていた中学の入学式当日。事故にあって行けなくて──あの空き教室だよね。で、席がひとつ多い。学校をサボった生徒にだけ見えるとか。あれ、私? そこはどうでもいいけれど──最後の七つめ?

 いや、“隠れた八個目を知ると死ぬ”、という設定なら? A組でやるのが七個で──こっちには七不思議プラス、ラスボスが──やっとの出口を開けたら、目の前に鏡がある。鏡越し、自分の背後に女が映っている。“七不思議には隠れた八個めがあるの、知ってる?”みたいな。“私が見えるのね、嬉しい。じゃあ一週間後、あなたを迎えに行ってあげる”、みたいな。逃げられたら追いかけて、背中に紙をポン、みたいな。でも実際はその八個目のストーリーは特にない、みたいな。存在を知ったら終わりだと思うかどうかっていうところ。


 話がずれてることに気づいてはっとして、見取り図とは別のレポート用紙に、七不思議とシークレット不思議、その設定を書いていった。

 技術室でノコギリを使っていて、事故で指を失くして──その指を夜な夜な探しにくる少年。“僕の指、どこ?”

 念願叶って教師になったのに、数ヵ月後に通り魔に襲われて死んだ女教師、夜中に空っぽの教室で授業をする。“授業の邪魔しないで!”──って、これはあれか。演出には向かないか。A組でやるなら平気か。夜は無理か。暗幕垂らせばできるか。

 三角関係のもつれで、捨てられた女が男と相手の女を調理実習室で殺して自殺。呪われた包丁。“その女、誰?”

 ああ、へこんだ。なにげに今、へこんだ。しかし気にしない。

 クラスに馴染めない少年は、いつも図書室で本を読んでた。そこに担任教師が現れる。教師からいじめまがいのこと──日記を焼却炉で燃やされた。なのにそれが、今も図書室にある。かなり古い日記。それを読むと──図書室から帰れなくなる。一生。

 最初に考えた階段の話──数えてみるとそこだけ一段多い。足首を掴まれる。これは机と椅子でできるはず。しっかり作らなければ危ないが。

 だから、こういうの──A組では、どんなふうに化けて出るのかというのは、やってもらっては困る。どちらかといえば、幽霊じゃなくて死体の役かな。

 それでも、“こういう幽霊がいる”というのはできるか。七不思議の噂をすればいい。最初に噂から入って、“こんな感じで出るらしい”というのをやってもらう。たとえば体育館の少年だと、A組は“首なし少年がボール遊びをしている”というのを。D組が、“ついているのは自分の生首だった”、という状態だ。


 設定を書き終えると、その場所を決めていった。どこにしようとかまわないだろうけれど。

 そのあとは、A組に渡すネタの案を、細かく順序立ててまとめ書いた。いちいち訊かれないようにだ。そして私はこれを、チャーミアンに渡して説明する。それも仕返し。嫌がらせ。

 思いついたことは書き込み、どんな演出があればいいかも、できるだけ加えた。衣装は好きにやってくれていい。ただシーンの合間に入れるセリフは、A組の奴らに考えさせる。ドラマを観ないから、どんな言葉がドラマチックでロマンチックなのか、私にはよくわからない。

 マブにあるあの不気味なマスクは、最初の噂話のところで使ってほしい。借りられなければ買う。とにかくあの不気味さが欲しい。そして、観たらD組のホラーハウスに向かうよう促してもらう。A組の担任に私のネタだと言うつもりはないけれど、奴がなんと言おうと関係ない。

 次に、D組用の設定を細かく作り上げていった。これはアニタに引っ張らせる。まだ六月だというのに、早すぎる気もするけれど──今さらなので、もう気にしないことにした。うまくいけば私は確認だけで、それほど準備に関わらなくて済むだろうから。

 いつのまにか帰ってきていた祖母に夕食に呼ばれ、アニタの話をした。祖母は苦笑った。午後の授業をサボッたことも報告したけれど、怒られなかった。それどころか、衣装なら古着を集めてきてくれれば協力するとまで言ってくれた。だけど暗がりでそれほどマメなのはいらないとすれば、手縫いでざっくり縫ってしまえばいいとも。

 ヘッドマネキンが欲しいと言うと、知り合いの会社にそういうのが多くあって、古いものならもらえるかもというから、甘えることにした。ウィッグを買って、少年ぽい顔を描けばいいのだ。

 そんな感じでこの日、私は夜中までレポートに埋もれていた。

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