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とある午後の日

作者: weather

 私の営む小さな珈琲屋に、立派なスーツを着て杖を持ち、ジェントルマンという言葉がピタリと当てはまるような、口髭を生やした男性が訪れました。


 傘置き場に杖を掛け、私の目の前の席に座ると男性は「ブラックを」と注文しました。


 勿論私の店は珈琲屋ですから「ブラック」一つでも沢山の種類がありました。ところが男性はその後も詳しい注文はされなかったので、私は自分のオススメのブラックコーヒーを彼にお出ししました。


 男性はコーヒーカップの中の黒く透き通った面を一瞥し、その後ゆっくりとカップを傾けられました。一口飲まれたあとの顔は非常に苦々しく、まるでコーヒーに耐えているかのようでした。


 男性は二十分かけて、ゆっくりゆっくりと、一口一口、コーヒーを含む度に苦々しい顔をして、私のオススメを味わって下さいました。


 飲み終えた彼は私に五百円を手渡し、私からのお釣りの二十円を受け取らずに入口へ向かいました。


 傘置きの杖をとり、男性は扉を押し開けました。引き扉なので押すのは大変であるのに、男性は敢えて困難に立ち向かわれたのです。






 男性は店の前の段差で杖をつき損ねてお転びになりました。


 男性と私の目が合いました。


 男性は立ち上がって、店の中にいる私の方を見て、一度頭を掻き、



「まいったなぁ」と、にこやかな顔で私に笑いかけ、杖を使わずにお帰りになりました。





「ありがとうございました」





 

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