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鬼灯の実  作者: ロースト
6/20

探索部屋。

新しく人物登場!

鬼灯にも必殺技がっ!

ちょっぴり長めになりました。

これからが本編です。たぶん次ぐらい。

「あれ?こんなところで偶然だね!」

抹茶色の渋い着物を着た、モノクルの人物。

そしてその隣に黒い着物の小柄な少年が静かに寄りそう。

「……お久しぶりです……。」

テンションはモノクルの人物―――たぶんこの人が探査対象:博士だろう―――とは真逆に低い。気配が薄く、隠密に向いているようだ。いや、従者か。

「おやおやおや。迎くん、君―――隅に置けないなぁ!こんな可愛い彼女見つけてきて!……どうだい、青春の話なら僕が聞くともさ!」

「?」

ハイテンションな博士に鬼灯は付いていけない。

それに構うこともなく、博士は観察するように顔を近づけ、視線を上下させる。

「うふふふふふふふ。ぐひひひひひひ。こんな“異界”は珍しいねぇー。多重に掛け合わさってる。たまらないねぇ……。」

これが普通の女ならば逃げているだろう、不気味な笑い方をして観察を続ける博士。

しかし、普通でない鬼灯までもその視線に含められた純粋な好奇心に不愉快を表情に現した。

「帰還命令は数週間も前に出されていたはずだ。それを押して、ここに来ていたんだ。調査の方は期待できるんだろうな?」

何故か機嫌を悪くした迎が問いかける。

「んー。目星は付いたよ?今から入るところさ。」

ほらこっち。と進む博士に迎は難しい顔をして呟く。

「ギリギリのタイミングだったって所か……。」

「ところで彼女は?」

「鬼灯だ。」

顔も上げずに即答した。そんな事は当人にでも聞けばいいのに。

「いやいや、名前もそうだけど、彼女はどこにいるのかな?」

「―――っ!?」

ば―――っ!

振り向く。いない。逃げた?

その考えを一瞬にして消す。

いや違う。気付けなかった。指摘されて始めていないことに気づくなんて。

「はか……せ」

数瞬前までいた人物たちはみな、いなくなった。


For Hozuki

『やめときなさい』

言いかけた言葉が口だけを模して、誰もいない場所へと空気が吐き出された。

異界の気配は一瞬にして濃密になった。感覚が狂う。

取り込まれた。私が?彼らが?

これだけ強烈な気配を放つ異界に出会ったのは初めてだ。

それにしても気付くのに時間が掛かった。擬態能力があるのか。

接近に近づかなかった。いや、私たちが罠に飛び込んだ?

「ふふ。若輩者の異界に、随分用意周到なものね。」

何もない空間には木霊するばかりで返答はない。誰もいない。けれど確かに“異界”はいる。

ここは“異界”の中。聞えてる。

「けれど、防御型のあなたと攻撃特化型の私。」

(どっちが倒れるのかしらねぇ……?)

クス、と笑みを漏らす。臨場感も何もない。

もとから分が悪いと分かっていて、現状がそうなっただけだ。

あっちの異界は取り込み、消化するまでに時間が掛かる。それまでに本体を見つけるか、無理矢理抜け出るかすればいい。始末できるかは、また別問題だけど。

それでもまあ、あの子達を吸収されても厄介だ。さっさと脱出するに限る。

(喰い合うのはその後、安全確認が出来てからね。)

「さぁて、心で泣いてる坊やを探しにいきましょうか。」

合流目的の二人は図太いし、実力あるし、大丈夫でしょ。

けど、迎くんは―――危ういところがある。


For Hakase & Natsume

「ふむ……ふむふむ。僕らは異界に取り込まれてるようだねぇ、ナツメ。」

真剣なことかと思いきや、言葉も声音も暢気平穏平常心だった。

それは博士には普通のことで、こういう状況をこそ望んでいたわけだ。

だがそこには興奮も恐怖も欲もない。

冷静に知的に平然。それが夏梅の尊敬する人物の本質である。

「……博士。結界を張ります。」

黒い着物、その懐から取り出した符。描かれた文字は常人には解読不可能の、しかし古の力と現代科学の粋が寄り集まった高度技術の塊。“異界”に対応するための人の技術である。

紙に書かれた指令は情報変換の能力を伴った、現象攻撃。応用により先の言通り結界も張れる。

四角い閉ざされた空間。その四隅にそれぞれ符を飛ばし、杭で止める。

唱を紡げばバチバチと雷光が奔り、全てを繋ぐ。

「ん、ありがと。」

「いえ……。存分にお調べください。」

定型の、形だけの感謝を述べる博士に夏梅は他では決して見せることのない笑顔を柔らかく向けた。夏梅は幸せだった。気のない返事でもいい。尊敬する人物の役に立てる、それが嬉しい。

「はいよっと。」

なにやらゴソゴソと物を出し始める博士。その背を夏梅は静かに見つめていた。


For Mukai

一瞬にして引き離された。

鬼灯がいなくなり、逃亡かと考え博士を振り返ればすでに二人ともいなかった。

警告を放つ暇もなく、バラバラにされた。

しかも今現在、取り込まれているらしい。

(切り開くか……。)

しかし、俺には切断力がない。

人類を超えた身体能力に通常装備と多少の異界概念を込めた銃が数丁。この狭い空間で爆薬系を放てばどうなるかは考えなくてもわかる。手の出しようがないのが現状だ。

(……?)

道が出来上がっていく。

不審に思いつつ、進むしかない。

この道の果てに、促された先に何かがある。


For Hozuki

「迎君、どこへ向かって移動しているのかしら。」

この異界の中で、自由に動くなんて、異界の意思でしかないのはわかるけれど、

「でも何故彼なの。」

疑問を持つ。思考に関係なく行動は行く手を遮る障害を断ち切る。

吸い込まれるように漆黒の刃が上から下へと線を付けて走る。

まるで紙のように切れる壁、後から後から増え続ける壁。

(……まず、精神を集中させるんだったかしら。)

イメージする。

一点に収束し、留める。そして、解放。

「斬戟一線!」

振り下ろす勢いで力をぶつける。見えない刀が壁に切りかかる。

幾重もの風を巻き起こし、乱舞のような斬戟が放たれた。

「試してみるのも、悪くないかもね。」

人間の知識。

仮想世界での出来事、リアルにないものが異界の力によって具現化される。

(人間の発想ってすごいのね。)

若干、本人もその威力に驚きながら薙ぎ払われたその先を一直線に進む。

その途中、彼らがいた。

「あら、ごぎげんよう。お二人とも」

「―――っ!!なんて危ないことをするんだ!」

従者の少年が吠えるのに鬼灯は心配しなくて良かった、と思った。


「―――ナツメ、構えなさい。」

「え?」

警告に対してナツメは間抜けな声を出した。

突然、博士が身を起こして素早く物を退け去る。

「来ます。」

あくまで冷酷な声に促され、展開する術式に追加の符を敷く。同時、

「博士……っ!」

中央に立つ夏梅を博士が横から抱き寄せ、その攻撃の線上からずらす。

「……!?」

「間一髪、手荒い救助だ。」

横を奔った剣戟。前面だけでなく、背後の壁までも通過し、どこまでも続く道を作った。

「僕の結界が……」

「うん、破られたようだね。」

博士も若干、この威力に驚いていた。

高々、百年の異界が一振りでナツメの結界を破るとは。

見ごたえがある。その行く末を、果てを。……面白いじゃないか。

けれど察知することができていなかったなら、夏梅は粉々だった。そう思って、無意識にその腕に力を入れた。

「もっと、精進します……。」

消え入りそうな声で答えた夏梅。少しばかりの身動きをして、漸く自分の腕の中にその存在があることに気付き、博士は力を緩めた。さっと離れ、恥ずかしそうに顔を伏せる夏梅。

うーん、それ以上に頭が固くなっても困るんだけどね。

「ナツメは十分な働きをしているよ。これまで通りでいい。」

「でもっ―――」

防御でさえ、あの異界に勝つ事は出来なかった。

それが悔しいのだろう。大きな瞳には涙が溜まっている。

しかし比較の対象が間違っていることにも気付いていない。

(本当に馬鹿な子だよね。)

美少女のような容貌を持つこの少年を傍に置く理由は決して恋心でも愛情でもない。

従順さ。それだけを博士は求めている。養い親へと向けられる、その純真さを利用している。

「あら、ごぎげんよう。お二人とも」

割れた先からのんびりと悠長に歩いてきた鬼灯に普段大人しい夏梅が突っかかる。命の危険が迫ったからなのだろうか、それとも結界を破られたことによるプライドか矜持か。

「迎くんはやっぱり一緒じゃないのね。」

鬼灯にはどこか焦りの匂いがした。

会って数時間も経たないというのに、異界に感情はないというのに、それが推察できてしまう。

それは鬼灯がイレギュラーであるからだ。

人に宿る異界。人を構成要素とし、人を受け入れた異界。

それは人と異界との半端であり、どちらをも含む最強なのかもしれない。

「知らん。知っていてもお前には話さん。」

ツレナイ態度を取る夏梅に苦笑する。状況を考えれば今ここにいない迎が一番危険なのだ。鬼灯としては当たり前のこととして言っただけだ。心配などという感情ではなかった。

「今、出口を造るわ。」

下へと剣先を向けられていた鬼斬。それを振りかざす。

斬撃が肉を断つ様に壁へとのめりこみ、切り刻み、消失させていく。

それは吸収ではなく、鬼灯の能力“暴食”。が強制的に造られる出口。

霧のように、霞のように、幻影のようになくなっていく。基の世界。異界からの脱出だ。

「二人は校舎から出なさい。この異界は移動ができるから、下手したらもう一度飲み込まれる。」

「鬼灯、君は?」

鬼灯にはその権限はない。しかし的確な判断を下し、誘導する。

博士の質問へは一度、微笑み、真剣な表情で答えた。

「迎くんを追うわ。彼、自分から本体に近づいてる。」

さあ、壁が再生する前に。

そう促す鬼灯。

先ほどの剣戟による惨状は既に修復されている。ここも徐々に治っていくのだろう。

走り、壁の向こう、校舎の壁までも突破した夜闇の世界へ向かう。

追走する壁はしかし、出れば追いかけてこなかった。


「さて、もう一回、いくわよ。鬼斬」

鈍色の身体を撫でて意思を示す。

イメージは最初の時より鮮明に、鋭く、素早く、軽く、薄い。

「魂撃!」

一転集中の衝撃波攻撃。

荒れ狂う風が巻き起こるのにこの狭い部屋の中で自分自身も煽られる。

しかし、攻撃力は【斬戟一線】より上だ。こちらの攻撃情報を得て、壁を幾重も重ね分厚くしていく異界に対し、それを使わない手はなかった。でなきゃ、閉じ込められる。

既に四度目のことに、要領は覚えつつも人間の身体は限界を来たしていた。

けれど漸く、その姿を線上に見つける。

呆気に取られた様子の彼に息をつき、けれど歩み寄るほどの体力はなかった。

「迎くん、心配、させないでよね。」

自ら近づいた彼に途切れ途切れの言葉を投げかける。

「異界が心配などするわけがない。」

冷徹な声音には若干の動揺が見えた。

いくら異界の力が通用しないといったとは言え、味方から攻撃されるとは思ってもみなかったのだろう。鬼灯もそんな意図があっての行動ではなかったが、事前に“異界殺し”と聞いていたからこそ攻撃を放っていたという部分もあるので、それに関しては何も言わないことにした。

「博士と従者の子。それと、私の中にある珠洲の意識からも。」

随分もてているようよ?と冗談めかして言う。

けれど返答もなく、息を整え漸く上げた視界には難しい顔で壁を睨む迎。

「……この異界、どうやら私たちをミンチにしちゃいたいようね。」

近づくそれに、鬼斬を構える。

「……っ!?私の異界が、―――封じられた。」

「っ」

迎の目が向けられ、けれどどうすることも出来ずに頭を振る。汗が垂れた。

『開かずの間』の閉じ込めが鬼灯の中にまで影響している。

いや、そこ中心に攻撃を受けているのか。でも、ならば鬼斬の能力は封じられていないはず。

「迎くん、嫌がるだろうけど―――」

「緊急事態だ。わかってる。私情は挟まない。」

冷静なようでいて、冷静でない迎に不安を覚えた。

異界が嫌いだという信条は鬼斬にも伝わるはずだ。迎自身に宿る異界染みた能力、“異界殺し”も影響が、分からない。

「……貸せ。」

「―――大事にしてよね、それ。」

答えはない。けど、……大丈夫。

「異界を切る異界の剣。【鬼斬】」

名を呼ぶ。それは本質を暴く行為だ。

キイイィィィィイイイ!!!!

鬼斬が啼き、咆える。

禍々しい闇色の光を纏い、肥大化する剣の先が壁に突きたてられ、スッ―――と吸い込まれるようにして、零れ落ちる砂。壁を構成していたもの。それは異界の力自体を殺ぐ。

空間を生み出すだけの力はなく、“本体”が壁の先、現われる。

箱……?

「鍵は、―――見当たらないわね。」

「中だ。あの中に、鍵はある。」

言うが早いか、切り掛かる。

寸前で箱の周囲に異種空間ができ、歪む。が、それをも切る。

(ズレル。)

箱が斜めに奔った剣に従って、ずれる。

世界が、その場所からズレル。


「あ、帰ってきた。」

博士と従者、二人が目の前にいた。

「無事だったんだね、二人とも。」

声をかけてくる博士だが、鬼灯はただ鬼斬を返してもらうべく、迎へ手を伸ばし、迎もそれに応ずることで二人して無視をする格好となった。

「いやーよかったよかった。」

「よくない。アレは人為的な異界だ。」

「へ?ああ、そうだね。うん、そうだったよ。」

何で知ってるの?

と別行動時に得た情報から人為的なものだと知った博士は尋ねるが迎は答えなかった。

鬼灯はそれを切った感触だと思った。

鬼斬を使うことによって、吸収時の記録が垣間見えたのだろう。

しかし、それにしても鬼斬はどうしてしまったのだろう。

手に戻った今、うんともすんとも言わない。それは鬼斬が普段から無口なので当たり前だ。

しかし、あの様子は―――先ほど、迎の手によって本質を顕現した、その時の変異。

あれは鬼斬の領分を越えていた。興奮しているような声を上げていた。

(迎くんの異界殺しと鬼斬の異界切りが共鳴した?)

迎の得体の知れなさは深まるばかりだ。疑問は尽きない。

けれど、自分はそれを知ることはないだろう。

迎自らそれを話すこともないだろうし、鬼灯が聞くこともない。

―――その時は、そう、思っていたのだ。


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