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第31話 独占欲


翌日から私はモーエヴィンと共にユウの身の回りの世話を手伝った。

治療の為滞在させてもらうとはいえそれ以外やる事がないとこちらとしても申し訳なる。

アリスは乳母に預けシルキーの子供達と一緒に過ごしてもらっている。


「そろそろ食事を持っていきましょうか。」

「はい。」


そして私は久しぶりにユウに食事を持って行った。


「ユウ様、失礼致します。」


シルキーの時同様に返事はない為扉を開ける。

私が持っているスープの匂いに反応したのかユウはこちらを向いた。


「幻覚か……。」


ユウには何が見えているのかわからないがとりあえず匙でスープを口元へ持って行くとユウはそれを食べてくれた。


「懐かしい味がする……」


今日のスープは私が作った。

あの頃と同様に私の血を入れてある。


モーエヴィンが言っていた。

ユウはよく私のスープを気に入っており、それだけは残さずに完食してくれると。

しかし最近は材料である私の血が底をつき血を混ぜない状態でいつも出していたらしい。


「涼香……」


ユウは私の名前を呼ぶ。


「なんでしょう。」


だがユウの瞳に私は映されていない。


「何処へ行ってしまったんだ……。」

「……。」


私は一瞬押し黙る。

ユウはかなり精神的に参ってしまっているらしい。

治す方法ならシルキーから聞いている。


「はい、ここにいます。」

「……。」

「長らく不在にして申し訳ありません。

ですがこれからは私もユウ様の為こちらに滞在することになりました。

またご迷惑をかけてしまうかもしれません。

こんな私ですがまたユウ様の元で仕えさせてください。」


私とユウの視線がかち合う。


「涼香……。」

「スープならまだ沢山あります。

食べますか?」

「ああ」

そう聞くとユウは先程の魂の抜けた様な声ではなくあの頃の様な優しい声色でそう答えた。


***


私がヴァーミリアン家に戻ってから一週間が経った。

ユウの状態は徐々に回復しており、この調子であれば完治まで持って行くことができるとお医者様から診断された。

そしてその後そのお医者に私は呼ばれた。


「貴方がユウさんの奥様ですね。」

「いえ、違います。」

「……?でもユウさんの治療に一番貢献したのは貴方だと伺っております。」

「私はあくまで治療の為に呼び戻された元使用人です。」


そう言うと医者は何かを察したのか顔を曇らせた。


「無粋な質問ですがユウさんとは何か特別な関係ではありませんでしたか?」

「特別……ですか。」


確かにただの使用人ではなく食料としての面を担っていたので間違いではない。


「はい、働いていた頃は血を求められる事も多くよくユウ様に血をあげていました。」


すると医者は顔を曇らせた。


「貴方、自分がやっている事がかなり酷い事だと自覚していない様ですね。」

「……どう言うことですか。」


医者は迫力ある目つきで私を見る。


「吸血鬼とは本来血を啜りながら生きている種族です。

そんな彼らを狂わせるのものがなんだかご存知ですか?」

「血ですか。」

「恋心です。」


その瞬間私の心臓が跳ねた。


「無自覚なので言っておきますが愛飢病は吸血鬼が最も恐る病です。

恋をした者の血以外飲めなくなってしまう。

そして治せる方法は現段階では恋をした者と結ばれる事意外に無いのです。」


私は何を言われたのか一瞬理解ができなかった。


「そこをきちんとご理解した上でユウさんと今後も向き合ってもらいたい。

無責任な言動は最悪彼を殺してしまう。」


私の頭は真っ白だった。

恋した者の血以外飲めなくなる病……?

私は信じられなかった。

ユウが私を好きだなんて。

でもユウは私が出て行って以降他の者の血や獣の血すら口にしなくなったとモーヴィから聞いていた。

私の詰めた血液の瓶に直接口をつける事もあったらしい。


だけど、ユウにはシルキーが居た筈だ。

既に二人の間には二人子供だって居る。


私はユウの気持ちがわからなくなってしまった。



***



お医者様から言われた通り私は言動に細心の注意を払った。

そのお陰かユウはすっかり元の様に動ける様になった。

だが私は何もしなくてもいいからユウの側をつきっきりでいる様にとモーエヴィンから言われた。


きっと感情の起伏で寛解(かんかい)していた症状が再発してしまうのを防ぐ為だろう。

ユウはいつも通りこのところ溜まっていた仕事を片付けている。

そして私はユウの前に置かれてある応接用のソファーで静かに読書をしていた。


「少しいいか。」

「何でしょうか。」


私はユウに呼ばれ彼の座る机の方を向いた。


「涼香は結婚しているのか。」

「はい?」


ユウの唐突な質問に私は面食らってしまう。


「いえ、独身ですけど……。」

「……そうか。」


そう言うとまたユウは仕事を再開する。


『どうしたんだいきなり。』


そう思いながら私も再び読書に戻る。

ふと視界の隅に入ったアンから付けろと言われていた指輪が貰った時よりもかなり燻んでいる事に気が付いた。


『そろそろ指輪(コレ)も綺麗にしてやらないといけないな。』


今度アンに頼もうと指輪を付けている左手の薬指を撫でた。

それをユウに見られている事にも気付かず。





to be continued……

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