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第27話 熱砂の町


シルキー含めアンとアリスと共にファフコールを出てから三ヶ月が過ぎた。

今はファフコールとセンチュラルの国境付近に一時的に滞在している。


「予定よりも早く着きそうですわね。」

「まあそれもこれも余の苦労あっての事だ、とく感謝するがよい。」

「またアンとそらとびたい」


そう言うとアリスはアンの膝にちょこんと座る。

最近はここが定位置の様だ。

ここまでの旅は長くもあり短いものだったなと感じた。


旅の途中では様々な出来事があった。

一つは娘の成長だ。

ある時は誰に似たのか素手でホーンラビットを仕留めてアンにプレゼントしているのを目撃した時は腰を抜かしそうになった。

これで三歳になりたての女児なのが信じられない。

そして武力だけでなく魔法に関しても知識をつけ始めている。

三歳になってから突如娘は起こす様になった。

故に魔力暴走を抑える為、シルキーに魔法の操作や扱いを教えてもらい始めたのをきっかけに娘はめきめきと頭角を現した。

そしてそんな娘にシルキーもとても驚いていた。


「私の娘もかなりの才能があると言われていましたが、これは近い未来ライバルになりそうですわね。」

「?」


不思議そうな顔をするアリスはとても愛らしかった。

きっとこの子は将来有望になるなと私は親馬鹿の様だが、そう信じて疑わなかった。


そしてもう一つは旅先での苦難だ。

途中陸路では土砂崩れで通れない崖、魔物が多く出没する危険な山脈、そして娘にはまだとても耐えられないだろう熱砂漠。

そんな過酷な道のりを魔法や技を駆使して進んだ。

土砂はアンの力を借りて空を飛び近道を探したり、山脈は魔物が多く出没する山脈は私が一掃しながら道筋を切り開いた。

そして熱砂漠は昼間は暑さが苦手な私とアリスが体調を崩さない様にとアンが背中に乗せシルキーが日差しを遮る為に魔法で雲をかけてくれた。

そして夜は冷える為、夜目が利く私が寝ている皆を砂漠の魔物から護った。

やはり旅で空が飛べるのはとても便利だなと感じた。

ただ一つ問題があるとするならドラゴンの状態では姿が大き過ぎる為人里近くでは使えない点だろうか。


そんな風に旅を続けていれば砂漠の向こうには町が見えてきた。

オアシスを囲む様に建物が並ぶ町。

まだまだ目的地までは遠いがこの町が見えたならセンチュラルまではもう少しだ。


「では今日はひとまずここで一休みいたしましょう。」


そして私達は町の宿屋を探した。

しかしあまり人が訪れないのか宿屋はかなり年季の入った古い旅館に案内された。


「これは……趣深い旅館だな。」

「うむ、これは荒屋かな?」

「アン様は物言いがストレート過ぎますよ。」

「おばけやしき」

「アリスまでそんな事言っちゃダメですわ!」


シルキーがアンとアリスにツッコミを入れる。

とりあえず入らない事には何も始まらない。

私は旅館の扉を開けた。

中に入れば外観は古びていたもののきちんと掃除はされており、想像していた程寂れてはいなかった。


「おやお客さんかい?珍しいものだねぇ。」


旅館の受付にはかなりご年配のお爺さんが座っていた。


「本日四人で宿泊をしたいのですが、部屋は空いていますか?」

「それならちょうど三一◯の大部屋が空いている。

そこでいいなら泊まれるよ。」

「わかりました。」


私は差し出された帳簿に名前を書いてチェックインする。

言われた料金を支払えばお爺さんは泊まる部屋の鍵をカウンターの上に置いた。


「ゆっくりしていっておくれ。」


私は鍵を持って三人の元へ向かう。


「今日泊まる部屋が決まった。」

「おお!してどの様な部屋なのだ!?デカイバスタブはあるのか!?」

「そんなものあるわけないでしょ。」


アンはまたシルキーにツッコミを入れられていた。

案外この二人は仲が良いなと思う。


「四人で泊まれる部屋はないかと聞いてみたらあると言われたのでその部屋にしました。」


言われた部屋へ入れば思っていたよりも普通の部屋だった。


「では明日に備えて各自準備と休養を取りましょう。」


シルキーにそう言われ私達は別行動する流れとなった。

アンは砂漠へモンスターを駆りに出かけて行った。

そしてシルキーは日の高いうちに済ませておきたい用があると私とアリスとは別行動となった。


私はアリスと共に日が落ちてから町に行きまだ営業している店で買い物と情報を仕入れる事にした。

もしかしたらセンチュラルの噂が聞けるかもしれないと思ったのだが、生憎この辺りにまでは情報は届いていない様だった。

そうしていればあっという間に日が暮れた。


「日は傾いていたとはいえ暑かった……。」

「おようふくのなかきもちわるい」


どうやら私とアリスは同じ事を考えていた様だ。

私はこの辺りで水浴びのできそうな所へアリスと共に向かった。



「綺麗だな……。」

「キラキラしてるね」


夜のオアシスは月の光を反射し水面に月の姿を映し出していてとても神秘的だった。

私は周囲に誰もいないのを確認すると日除に羽織っていたローブに服と脱いでいく。

そして空の吸筒に水を入れて汗で張り付く身体にかけていく。

汗が流れていく感覚と熱砂に焼かれていた肌が冷やされ潤っていく感覚がとても心地良い。

それを見ていた娘も私と同じ様に服を脱いで水をかけろとねだってきた。

私はそれに応じてアリスにも水をかけてやる。


「ひんやりきもちいい」

「もう少し浴びたら宿に帰ろう。

二人が待っていているから。」


一通り水浴びを終えた私とアリスは宿へと戻った。

そして私は幼い子をこんな遅い時間まで連れ回すなと宿に帰ってからシルキーに叱られるのであった。


***


その日の晩、私は就寝しようとベッドに転がった。

だが目が冴えてしまい寝ようにも寝られない。

こんなに暑苦しくとても快適とは言えない砂漠の旅で体力も砂漠の魔物との戦闘で魔力も消耗している筈なのに、まだ私の身体は動き足りないとまるで一週間もの間娯楽も無しに部屋に隔離されている様な退屈さを感じていた。


「少しだけなら……」


私は夕方アリスと共に水浴びをしたオアシスへ向かった。



「やはりここは落ち着く。」


優しい月明かりに照らされ私の心は何処か満ち足りた感覚を覚える。

まるで母の胸の中にいる様な安心感。

そうしていたら私はいつの間にかその場で眠ってしまっていた。




『涼香      はやく


        起きなさい—— 』



目が覚めるとそこは見覚えのない赤黒い世界が広がっていた。


「何処だここは……。」

『ここはアナタの中でありワタシの世界よ。』


そして目の前には私……否本能(彼女)が立っていた。


「言っている意味がわからない。」

『まあそんな細かい事はどうでもいいのよ。

それよりもアナタ、まだ思い出せていない様ね——』


本能(彼女)は私に不可解な問いかけをしてきた。


「思い出すって何をだ?」

『あら、アナタあの少女(・・・・)からも言われていたじゃない!

言われてもピンときてなさそうだし。』


そう言うと本能(彼女)は私に近付いてきた。


『だから私が強制的に思い出させてあげるのよ。

もう悠長に思い出すのを待ってあげられないカラ。』


すると本能(彼女)は私の頭を強い力で鷲掴みにする。


「手を……退けろ……」

『無  理   ♡』


すると本能(彼女)の手から私の脳へ直接何かが送り込まれてくる感覚がした。


『意識は飛ばしちゃ駄目よ。

ワタシの努力が水の泡になっちゃうから。』


私の頭の中に流れてくる情報。

そこには私が想像もしたくない様な凄惨な光景が広がっていた。


to be continued……




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