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【短編小説】無意味なファイティングポーズ=前屈み勃起Life

掲載日:2025/12/29

 俺たちは街を徘徊する幽霊だ。

 誰からも見えないんだからな。

 でもセックスがしたい。

 それは体液のやり取りだけじゃない。視線だとか言語、または時間の共有。

 もう射精だとかはどうでも良くて、つまり俺は俺と言う存在を肯定されたいだけなんだ。

 俺をここから出してくれ。

 見えない世界から掬い上げてくれ。


「こんにちは」

 俺の目の前に立った男に女が挨拶をする。

 俺は壁を向いてバンテージを巻く。

 俺は女から俺が見えない事実を受け止められない。

 だからその現実から目を背ける。

 人生はクソだ。

 俺と言う存在もクソだ。

「こんにちは」

 だが女が次に挨拶したのは俺だ。

 女が俺みたいな本来は見えない男たちに挨拶をした。

 俺たちはまるで心霊スポットの悪霊みたいになる。

「お前は俺が見えるのか」

 その瞬間に射精しちまうのさ。

 それは比喩だ。

 天から垂らされた細い蜘蛛の糸を全力で引いちまう。

 だから糸は簡単に切れる。

 そうやって墜落を繰り返して死ぬ。


 ジムの窓から墜落するようにして帰り、俺は勢いのないぬるいシャワーで汗を流す。

 セックスがしたい。

 存在を肯定されたい。

 だが俺は一人だ。

 握りしめた右手の中で陽茎が脈打つ。

 窓の外では救急車が引っ切りなしに走り回っているのが聞こえる。

 少し遠くでは暴走族の改造バイクが奏でるアクセルミュージックが響く。

 自死と死と生が高速回転している。

 だがそれは一人の音じゃない。


 俺の左手にある画面の中で微笑む女は確かにビデオの向こうから画面のこちらに向かって微笑んでいるがそれは俺だけの為に向けられた微笑みでは無い。

 誰も俺に微笑まない。

 人生はクソだ。少なくとも俺の人生はクソだ。

 画面の向こうで女が白濁を浴びる。

 その白濁は俺の白濁じゃない。

 その絶頂は俺の絶頂じゃない。

 人生はクソだ。

 


 その時、スマートフォンが震えた。

 白濁まみれの女の顔にメッセージが覆いかぶさる。

「おい五十野、野球やろうぜ」

「やだよ、お前ピッチャーやりたがるんだもん、っていうかお前おれ以外に友だちいねーのかよ」

 俺もお前以外にロクな友達はいねぇけどな。

 でももうお前の球を受けるのもいい加減に飽きたし、大して上手くいかないバッティング理論を聞くのも飽きてきた。

 何か他の事をしようぜ。

 俺たちはもうガキじゃない。

 お前が自慢げに投げる変化球は草野球でだって通用しない。

 人生はクソだ。恐らくお前の人生も。


「いい加減にしなさい」

 天から見ていたお釈迦さまがキレた。

「ゲットーを知らないラッパーが自身の街をゲットーと呼ぶのが厭ですが、地獄や煉獄を知らない文筆家が現世をそう呼ぶのも腹が立ちます」

 俺は正座させられている。

 俯いてお釈迦さまのつま先を見ている。お釈迦さまの爪先はデコレーティブだ。

「あなたの人生はクソかも知れませんが、それはあなたが本当のクソを知らないからです」

「おれそう言うの良くないと思います」

 顔を上げた先にあるのは金髪ギャルJKだった。

 お釈迦さまは秘密隠れ巨乳の金髪ギャルJKだった。


 でもお釈迦さまは牛久大仏くらい大きかったので制服の中にある巨大な陰茎も見えた。

 スカートを持ち上げる巨大な陰茎から糸が垂れていた。

「俺はこの糸に捕まって登ってきたのですか?」

 お釈迦さまは笑った。

 俺も笑った。


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