第6羽 『 空のてっぺん』
最上層への階段を登る途中、空は静かに色を変えていた。
青でもなく、夕暮れでもなく、まだ名前のない“透明な空”。
足元はもう、地に着いていないような感覚。
風が吹いているのに、風音がしない。
4羽は、音もなくその階を踏みしめていった。
やがて──
空間の中央に、ぽつりと白い台座が現れる。
その上に、1つの羽飾りが置かれていた。
レコルが歩み寄る。
「……これ」
彼のマントと、まったく同じ配色。
けれど、形がほんのすこし違う。少し、細く、軽やかで──
別の誰かの羽であることがわかる。
その瞬間、塔の空が揺れる。
そして──
現れたのは、もう一羽の鳥だった。
薄い緑と水色のグラデーションを纏い、
レコルより少し小柄で、目元には覚えのある優しさ。
「……やっと、来たんだね」
レコルは目を見開く。
「──お前……!」
その鳥は、レコルの記憶の奥にいた“約束の相手”。
名前は、ミナセ。
かつて港町で、空を一緒に見た幼なじみ。
病弱だった彼女は、塔に登れないと知って──
「代わりに空を見てきてほしい」と願った。
塔が記憶を吸い上げるように、空間全体に“過去”が流れ込む。
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✨回想──
ミナセ:「きっと、ここじゃない空があるよ。きみのマントみたいに、もっと自由な」
レコル:「……じゃあ、見つけたら届けにくるよ。空の“おみやげ”な!」
ミナセ:「ほんとに? じゃあ、そのときは……」
(風の音にかき消され、言葉が聞こえない)
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現実に戻る。
ミナセは静かに言う。
「……私は、この塔の一部になった。
“願い”が強すぎたから。あなたが来てくれることだけを、ずっと待ってた」
レコルはゆっくりと歩み寄る。
マントの端を、ミナセに差し出す。
「今、届けるよ。全部の空を」
ミナセは微笑み、羽飾りをレコルのマントに重ねる。
その瞬間──塔が光に包まれた。
4羽全員のマントが、わずかに光を帯びる。
「記憶は、忘れても、消えないんだな」
ジールがつぶやいた。
アカツキが泣きながら叫ぶ。
「うおおお〜感動した〜〜!クロメン〜!オレたちもマントつけようぜ〜!」
「やかましい。……でも、悪くないな」
塔の頂上から見える空は、どこよりも広く、どこまでも高かった。
エピローグ『 風が帰る場所』
4羽は再び旅に出る。
だけど、今度は「探すため」じゃない。
空を届けるため。
誰かの記憶に、誰かの願いに──
翼で、風で、歌で、羽ばたくため。
そして今日も、空のどこかにカラフルなマントがひるがえる。




