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風と羽の商隊譚  作者: くうねん。
第1章
7/7

第6羽 『 空のてっぺん』

最上層への階段を登る途中、空は静かに色を変えていた。

青でもなく、夕暮れでもなく、まだ名前のない“透明な空”。


足元はもう、地に着いていないような感覚。

風が吹いているのに、風音がしない。


4羽は、音もなくその階を踏みしめていった。


やがて──

空間の中央に、ぽつりと白い台座が現れる。

その上に、1つの羽飾りが置かれていた。


レコルが歩み寄る。


「……これ」


彼のマントと、まったく同じ配色。

けれど、形がほんのすこし違う。少し、細く、軽やかで──

別の誰かの羽であることがわかる。


その瞬間、塔の空が揺れる。


そして──


現れたのは、もう一羽の鳥だった。


薄い緑と水色のグラデーションを纏い、

レコルより少し小柄で、目元には覚えのある優しさ。


「……やっと、来たんだね」


レコルは目を見開く。


「──お前……!」


その鳥は、レコルの記憶の奥にいた“約束の相手”。


名前は、ミナセ。


かつて港町で、空を一緒に見た幼なじみ。

病弱だった彼女は、塔に登れないと知って──

「代わりに空を見てきてほしい」と願った。


塔が記憶を吸い上げるように、空間全体に“過去”が流れ込む。



---


✨回想──


ミナセ:「きっと、ここじゃない空があるよ。きみのマントみたいに、もっと自由な」


レコル:「……じゃあ、見つけたら届けにくるよ。空の“おみやげ”な!」


ミナセ:「ほんとに? じゃあ、そのときは……」


(風の音にかき消され、言葉が聞こえない)



---


現実に戻る。


ミナセは静かに言う。


「……私は、この塔の一部になった。

“願い”が強すぎたから。あなたが来てくれることだけを、ずっと待ってた」


レコルはゆっくりと歩み寄る。

マントの端を、ミナセに差し出す。


「今、届けるよ。全部の空を」


ミナセは微笑み、羽飾りをレコルのマントに重ねる。


その瞬間──塔が光に包まれた。


4羽全員のマントが、わずかに光を帯びる。


「記憶は、忘れても、消えないんだな」


ジールがつぶやいた。


アカツキが泣きながら叫ぶ。


「うおおお〜感動した〜〜!クロメン〜!オレたちもマントつけようぜ〜!」


「やかましい。……でも、悪くないな」


塔の頂上から見える空は、どこよりも広く、どこまでも高かった。


エピローグ『 風が帰る場所』


4羽は再び旅に出る。

だけど、今度は「探すため」じゃない。


空を届けるため。

誰かの記憶に、誰かの願いに──

翼で、風で、歌で、羽ばたくため。


そして今日も、空のどこかにカラフルなマントがひるがえる。

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