第5羽 『塔の中の空』
塔の中は、まるで空の中を歩いているようだった。
壁も天井も存在せず、ただ果てのない空間が広がっている。
空のような“部屋”が、幾重にも重なっていた。
一歩進むごとに、空の色が変わる。
灰色の空、嵐の空、夕焼けの空、誰かの涙が染み込んだような空──
「これ……全部、“誰かの空”ってことか」
レコルが立ち止まり、天を仰ぐ。
ジールがそっと呟く。
「記憶の空……“想い”そのものだな」
すると、アカツキが突然叫んだ。
「おおおおお!!見てクロメーン!!空にオレの顔映ってる!?映ってるよな!?!?」
「うるさい。映ってない」
その騒がしさに紛れるように、塔の中心部へと近づいていく4羽。
しばらく歩いた先、レコルが何かに引き寄せられるように足を止めた。
「……この空」
それは、以前瓶に映っていた、あの港町の空とまったく同じ色だった。
青と緑が溶け合うような、どこか懐かしい空。
レコルがそっと翼を伸ばす。
「思い出せそうで、思い出せない」
そのとき──
空に文字が浮かび上がった。
> 「再生には、“対になる記憶”が必要です」
「……対になる?」
するとジールが、ふと手を伸ばす。
「これ……コインに見えるけど、“記憶のキー”だな」
彼が取り出したのは、以前の町で手に入れた古びた金貨。
裏面には、レコルのマントに酷似した紋章。
「これ、オレのじゃ──いや、“誰かとおそろい”だった気がする」
アカツキがぽつりと呟く。
「その“誰か”って……もしかして、この塔の上にいるんじゃないの?」
クロメンが静かに羽を差し出す。
「……行くしか、ないだろ」
レコルは拳を握る。
「……ああ。思い出したい。ちゃんと、約束を、思い出して……会いに行くんだ」




