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風と羽の商隊譚  作者: くうねん。
第1章
6/7

第5羽 『塔の中の空』

塔の中は、まるで空の中を歩いているようだった。

壁も天井も存在せず、ただ果てのない空間が広がっている。


空のような“部屋”が、幾重にも重なっていた。


一歩進むごとに、空の色が変わる。


灰色の空、嵐の空、夕焼けの空、誰かの涙が染み込んだような空──


「これ……全部、“誰かの空”ってことか」


レコルが立ち止まり、天を仰ぐ。


ジールがそっと呟く。


「記憶の空……“想い”そのものだな」


すると、アカツキが突然叫んだ。


「おおおおお!!見てクロメーン!!空にオレの顔映ってる!?映ってるよな!?!?」


「うるさい。映ってない」


その騒がしさに紛れるように、塔の中心部へと近づいていく4羽。


しばらく歩いた先、レコルが何かに引き寄せられるように足を止めた。


「……この空」


それは、以前瓶に映っていた、あの港町の空とまったく同じ色だった。


青と緑が溶け合うような、どこか懐かしい空。


レコルがそっと翼を伸ばす。


「思い出せそうで、思い出せない」


そのとき──

空に文字が浮かび上がった。


> 「再生には、“対になる記憶”が必要です」




「……対になる?」


するとジールが、ふと手を伸ばす。


「これ……コインに見えるけど、“記憶のキー”だな」


彼が取り出したのは、以前の町で手に入れた古びた金貨。


裏面には、レコルのマントに酷似した紋章。


「これ、オレのじゃ──いや、“誰かとおそろい”だった気がする」


アカツキがぽつりと呟く。


「その“誰か”って……もしかして、この塔の上にいるんじゃないの?」


クロメンが静かに羽を差し出す。


「……行くしか、ないだろ」


レコルは拳を握る。


「……ああ。思い出したい。ちゃんと、約束を、思い出して……会いに行くんだ」

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