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間幕 ~最後の語り部~

 カーディガンのサブカルギャルとアムラーギャルのマナミの二人がトイレへ退出した今、カラオケボックス内には篠原舞夏の他にガングロ金髪ギャルと黒セーラーの清楚美人の三人のみが残っていた。

 今し方、出て行ったばかりマナミはともかく、カーディガンの彼女はいまだに戻ってきていない。改めて時間を測ったわけではないものの、彼女が出て行ってから次いでマナミが退出するまでに十五分以上は経過しているはずなのだが、トイレのついでに化粧直しでもしているのだろうか……。

 しかしそれにしても、ここはカラオケボックスだというのに相変わらず残された三人はマイクを持とうという気配すら出さないので、カラオケ機材のモニターからは店のサービスの紹介やミュージックビデオの映像が延々と流れ続けている。

 それらの賑やかしい宣伝文句や新曲紹介の音声が空々しく響くたび、三人の間に気まずく流れる沈黙が一層浮き彫りになっていくようで……実に息苦しい空間だった。

 本来、カラオケボックスにギャルやJKが複数人も集まったなら初対面だろうと盛り上がるのが普通だろう。にも関わらず、誰もまともに歌いもせず、なぜか妙な怪談話を聞かされたあげく、まるで通夜のような沈黙が続いている……。


(店に来てから説明も無しにこの部屋まで案内されたけど……そもそも結局なんなんだろう、()()()()()……)


 舞夏がこのカラオケ店に訪れたそもそもの理由は、実をいうと()()()()()のためだった。

 金欠に喘いでいた舞夏がスポットバイトアプリで偶然見つけた未経験OKの高収入バイトの求人。その求人の就業場所がちょうど舞夏の地元にあるカラオケ店であったのと、深夜から朝方までの拘束で報酬は『二万円~(※成功報酬五万)』という地方のバイトとしては破格の給料に誘われて、舞夏は今回の求人に応募していた。

 もっとも、『18歳から20代前半の女性限定』『地元高校の制服を持参でき、就業時に着用が可能な方』等というあまりにも怪しい条件には、さすがに舞夏も、


(やっぱり、これってそういう、()()()()()()仕事なんじゃ……)


 と、当初は躊躇した。

 だがともかく即金でお金が必要だった舞夏は結局その求人に応募し、今の状況へと至っていた。

 とはいえ、まさかすでに複数の先客が居る部屋に通された上に、()()()()()のそこで何をしろというわけでもなく、ただ地元のカラオケ店にまつわる噂や怪談話を聞かされることになるとは、舞夏としても思ってもみなかったことだったが……。


「──ったく、無責任なもんだよねぇ……」


 と、その時、唐突に発せられたその言葉に舞夏は物思いから引き戻された。

 その言葉を発した主は、つけ爪をいじりながらずっとだんまりだったはずのガングロギャルのJKだった。

 脱色された金髪、しっかりと焼かれた褐色の日焼け肌に鼻ピアスまで付けた、如何にもなガングロギャルの彼女は、リムレス眼鏡を掛けた文学少女系な真反対な系統の見た目な篠原舞夏に視線を向けている。

 どうやら自分に向けて言っているらしいと察した舞夏は、


「う、えっ、えっと……な、なにがでしょうか?」


 と、しどろもどろになりながら、ガングロギャルに訊ねた。

 すると彼女は上体を起こすと、気怠そうに、


「無責任だっつってんの……さっきの女が話してたみたいな噂話……」


 と、微妙に要領を得ない言葉を言いながら、首を左右にコキコキと鳴らして、ソファーに座ったまま伸びをした。

 舞夏はそんなガングロギャルの発言の意味を自分なりに推察して、


「あ、あぁ……まぁ、噂話ってそもそも、無責任なものですからね。せ、責任がないからこそ、適当な想像で話を補足したり、面白がって脚色したりするうちに事実とは異なっていくのが常と言いますか……だ、だからこそ、流言飛語、なんていうでしょうし……そ、そのあたり、伝言ゲームみたいなものですよね」


 と、取り繕うように「あはは」と愛想笑いを浮かべながら、わかるようなわからないようなことを言ったのだった。

 そのためか、やはりガングロギャルは「ん?」っという顔をしながら、


「あぁ……まぁ、そういうこったね」


 と、わかったようなわかっていないような態度で相槌を打ったのだった。

 の、だが、


「だからなんかさぁ、さっきのアムラー女が最後に言ってた話さぁ……ちょいちょい違ってんだよねぇ。……女は時給のやっすいこんな田舎のカラオケ屋のバイトなんかじゃねぇし、そのしょーもないカラオケ屋の店長とカレカノだったとか、マジでないからね」


 と、鼻で笑いながら、ガングロギャルはなぜか知ったように語る。

 そんな彼女の言葉に話の見えない舞夏は「は、はぁ……」と曖昧に返した。


「……でも、まぁ、()()()()ってのは本当だなんけどな。その……トイレで首つってたっていう店長のおっさんにさ──」


 どうやら、舞夏にとっては非常に不本意ながら思いがけず始まった怪談話大会の、()()()()()()の話がついに始まるようだった。


───

──



叙述トリックみたく情報が段階的に開示されていくの、ホラーミステリーにありがちな手法ですよね


うまくできてるといいんだけど

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