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帽子が怖い

僕は帽子が怖い。

何故なら、その帽子が入らないかもしれないという恐怖が襲ってくるからだ。

小学生の時に、僕の小学校では二つの帽子を買い、着用する必要があった。

一つ目は学校へと通学する時に被る黄色の通学用帽子。

二つ目が校庭で体育をする時に被るリバース式の青白帽子。

僕はそれらを一番大きなサイズで所持していたが、小学五年生の頃、小さな違和感があった。

それは黄色の通学帽子を外そうとした時、髪の毛を引っこ抜かれたような小さな痛みが頭皮を襲った。

「いて」

僕は呟きながら通学帽子を見てみると、黄色の内側に黒の縮れ毛が数本付いていた。

だから、正確には引っこ抜かれたようなではなく、実際に髪が数本引っこ抜かれてしまっている。

僕はそれを母親に相談したが、前述したとおり黄色の通学帽子や白青の体育用の帽子は一番大きなサイズを購入しているため、店には置いていない。

もし自分に合ったサイズを買おうすれば、一回り大きなサイズを特注するしかない。

だが、僕の小さな、小さなプライドがそれを許さない。

ただでさえ、僕は頭や顔が大きいことのコンプレックスをひた隠しにしたいと思っていた時期だった。だから、僕はそのままのサイズを使い続けることにした。

そのような経験と中学、高校では帽子を被る必要がないこともあり、六年間以上は帽子を被っていなかった。

だが、大学生になった頃、僕は坊主頭というのに少し憧れた。物心ついてから今まで坊主頭にしたことがないことや風呂後に髪の毛を乾かす必要もない。


また少しでも頭が小さく見えるようになるのではないかと考えていた。

その上、大学一年生の頃に、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時期であったため、外出する機会が少なくなったため、僕は坊主頭にすることを決意した。

床屋で「三分刈りにしてください」と頼むと、理容師さんに少し驚かれたが、僕の決意に変わりはなかったので、そのままバリカンで髪を刈り取ってもらった。

床屋の壁にかけられた鏡を見ると、頭の上にあったはずの髪の毛がほとんどない。

首を少し振ると、頭が軽い。

今まで一度も坊主にしたことがないため、どこか新鮮だ。

しかし、眉毛の辺りまで伸びていた前髪がないため、どこか心もとない。だから、僕はいつも帽子を被ることにした。

あるスポーツ用品専門店に行き、僕は帽子が並んでいるコーナーへ徘徊した。触り心地の良い自分の頭を撫でながら、帽子を眺める。

わざわざ帽子を被るまでもない。

この帽子が入るか入らないかを見分けることができる。僕はぼんやりと眺めていると、何個か僕の頭でも入りそうなものを見つけた。

それを手に取り、帽子の後ろにあるサイズ調節ができる部分を確かめる。

「この帽子は僕に合うのだろうか」

声に出すことはしなかったが、僕は心の中でそう呟いた。

坊主にしたこともあり、小学生の時みたいに帽子に髪の毛が巻き込まれることはないだろう。だけど、蝋燭に灯された火の様な小さな不安は消えない。

僕の心の暗闇の中で小さく存在感をアピールしてくる。

だけど、息を吹きかければ消えるような小さな不安だ。僕は覚悟を決めて、帽子を被った。

帽子が僕の頭を包み込む。何の心配も不安もいらないはずだったのに、どこか安心した。

僕はその帽子を購入し、前髪がないことに不安を感じた時は被るようにした。


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