表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

老けて見える?

顔が大きいと老けて見られることが多い。

それが顕著に表れるのは床屋や美容院に向かった時だ。


僕は昔から天然パーマで、さらに髪が伸びるのが早かったので月に一回、多い時で月に二回行くことがあった。だけど、いつも同じ床屋や美容院へ行くと、少し気まずいため、数箇所を回っていた。

そのため、僕は毎回「はじめまして」の理容師や美容師に髪を切ってもらっていた。


床屋や美容院に入り、席に座ると同時にエプロンをかけられ、鏡越しで僕を見ると同時に笑顔で理容師さんや美容師さんが尋ねてきた。

「学生さんだよね?中学生?」

「え、っと」

僕は返答に困ってしまった。

何故ならこの時、僕は小学五年生であり、中学生になるまであと一年以上あるのだ。

本当のことを言いたい。

言って驚かせてみたい。

「大人っぽいね」と言わせてやりたい。


だが、顔が大きいことを同級生に馬鹿にされ始め、自己肯定感がかなり低くなっている僕はそれを口に出すことはできなかった。

「はい。中学生です」

否定するのも面倒だし、理容師さんや美容師さんに促されるまま答えた。冗談も言えない僕自身を呪ったが、理容師さんや美容師さんの表情は決まって花が開いたかのように笑顔になる。

「やっぱりそうでしょ。何故か昔から人の年齢当てられるんだよね」

違うけどな、と僕は思うが、下唇を噛むほど念入りに口を閉じる。

ここで否定すると、僕が望んだタイミングではない、望んだ意味ではない「大人っぽいね」が飛んできてしまう。

僕はこの人に言う否定の言葉を墓まで持っていく。

それに今は中学生に勘違いされているが、考えようによっては成長が早いということ。事実、身長も小学五年生の平均身長は超えていた。

ものは考えようだな、と思いつつ、中学生になるのを待った。


そして、中学生になった時、初めて足を踏み入れた床屋に行ったとき、再び聞かれた。

「学生さん?中学生くらいだよね」

来た。

遂に容姿年齢に実年齢が追い付いた。

僕は鼻から精一杯息を吸うと、「はい!」と元気よく答えた。ようやく床屋や美容院で年齢を気にしなくてもよい。

その時の僕は本当にそう思っていた。


だが、終わりは突然にやってきた。中学二年の頃。美容師さんの方々が僕のことを忘れたくらい久しぶりに足を踏み入れた美容院の席に座った時、こう言われたのだ。

「ウチにもお客さんと同じくらいの息子がいるんですよ。高校生の」

中学生の僕にそう言い放ったのだ。

久しぶりに年齢間違いが起きたため、僕は「え」と言葉が漏れてしまっていたと思うが、何とか誤魔化した。

その時の僕の身長は中学生の平均程度しかないため、体格から判断された年齢ではない。

おそらく顔から判断された年齢だろう。

僕は美容院の鏡に映る自分をまじまじと見た。ほうれい線がくっきりと映し出されており、うっすらと鼻の下と顎周りが青くなっている。

確かにこれを見たら、高校生どころか、大人に見られてもおかしくないのかもしれない。

僕は少しでも若く見られるために、ぐいっと口角を上げた。


そして遂に僕は高校生になっていた。この頃になると、もはやなんて言われるのか気になっていた。

この話を友達にできるから、もはやネタ集めのために僕は床屋や美容院に行っているほどであった。

理容師さんや美容師さんから見て、僕は大学に進学できるような容姿をしているのだろうか。


そんな僕は心を躍らせながら、訪れた床屋の席に座った。

「高校生?部活は何やっているの?」

と、問われた。

僕は肩を落としてしまった。

年齢を間違えられなくなってしまったのか。

実年齢が容姿年齢に追いついたことは嬉しかったが、容姿年齢を間違えられることに喜びを感じ始めていた僕にとって、少し残念だった。

大学生になってからも間違われることはなくなった。おそらく平日の昼間に美容院にいるということは、大学生の可能性が高いからだろう。

だから、土日に美容院に行こうと思ったが、平日が忙しい高校生や社会人で混んでいるため、僕が平日にしか美容院に行かなくなった。

そして、社会人になってからは、美容師の方が年齢を聞くのが失礼と判断してくれているのだろう。

だから年齢を聞かれず、世間話をされることが多くなった。

ああ。大人っぽいって言われたいなぁ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ