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君が好き

作者: もも

初投稿です。よろしくお願いします。


 伯爵令嬢エミリア・グランデルには二歳の時に一度会っただけの婚約者がいる。

相手は侯爵令息リヒト・ベルンシュタイン五歳だった。エミリアの記憶は曖昧だ。かっこいいお兄ちゃまが手を繋いで散歩してくれ、疲れると抱っこしてくれたような気がするだけだ。七歳の今まですっかり忘れていた。その相手が今日会いに来ると父から朝食の時に聞かされた。


相手の侯爵家と仕事上の付き合いがあり、契約を強固なものにする為に婚約が結ばれたのだった。

エミリアには兄がいるので後継は心配がない。十歳だが優秀で領地の勉強や語学、剣術、ダンス、魔法、父に教えを請いながら執務の勉強もしている自慢の兄だ。

兄妹はとても仲がいい。エミリアが可愛くて仕方がないようでなにかにつけて甘やかしてくる。嵐の夜雷が恐くて震えていると部屋まで様子を見に来た兄に手を引かれ抱きしめられて一緒に眠ったりした。兄の使っているシャンプーの匂いとあたたかさで安心して眠ったものだ。絵本を読んで貰いながら眠ってしまうのはしょっちゅうだった。





エミリアも淑女教育でマナーや刺繍にダンス、語学に魔法、領地の勉強も年齢なりに無理のない範囲で教えられていた。

グランデル領は小麦の栽培が盛んで豊かな上に広い土地を持ち、その利益で道路の整備に力を入れていて、王都との流通も盛んに行われ、色々な物が入って来て市場には活気があった。


 小麦だけでは不作の時が心配だからと父は林檎の栽培に力を入れた。野生の林檎が生えているのを見て思いついたらしい。今では色々な色をしたものや、甘さに特化したもの、甘酸っぱいものなど種類は二十くらいになっていた。産地で消費するだけではなく加工して近隣の都市で販売もしていた。ジュースやアイス、パイなどのお菓子である。日持ちがして売れるのはジュースと焼き菓子なので工場も作られて、領民の働き場所として人気だった。

市場には新鮮な林檎はもちろん、それぞれの特性を活かした林檎のスイーツ店が競争をするように沢山軒を並べていた。


☆☆


 ベルンシュタイン侯爵家には二人の息子がいた。嫡男のアルフレッドとリヒトである。アルフレッドは少し身体が弱かった。心配をした侯爵は同じような教育を二人にすることにした。ただ五歳の年齢の差は大きい。アルフレッドはぐんぐん内容を覚えたが、リヒトは魔法の練習の時間の方に興味を惹かれていた。




リヒトは兄が大好きだ。尊敬していた。頭が良く穏やかで思いやりがあり、人の上に立つ器量がある。弟から見ても美形だ。十三歳になって学院に行くとモテて大変だろうなと思っていた。


アルフレッドには幼い頃から決められた婚約者がいた。公爵家の三女でとても大人しい人だったが、兄と想い合っているようで羨ましかった。自分も一度しか会った事のない婚約者に手紙でも送ってみようかと考えていた。



そんなある日、兄が事故で亡くなった。国立図書館からの帰りに急に飛び出した猫に馬が驚き、馬車から投げ出され頭を打って亡くなったという思いも寄らない出来事だった。


現場に急いで駆けつけた医者に即死ですと言われたのがせめてもの救いだった。屋敷は重苦しい雰囲気に包まれ母は泣き続けた。リヒトは悲しみを受け止められられず泣くことも出来なかった。父親は重い心をなんとか奮い起こし、葬儀の準備に取りかかった。



一年程過ぎた頃、父の執務室に呼ばれた。

「リヒト、私と一緒にグランデル伯爵家に行って欲しい。この前の大雨で領地が大変な被害を受けた。伯爵家に援助をお願いしてみようと思う」


「わかりました。そろそろ婚約者に会いに行かなくてはと思っていたところです」

優秀だった兄の代わりになれるのか不安はあるが、やるしかないと拳を握りしめた。


 リヒトは幼い頃に一度だけ会った女の子が思い浮かんだ。金髪で緑色の大きな瞳の幼子だった。お人形みたいだと思ったのを思い出した。僕の事を覚えてくれているのかな、覚えていなくてもこれから仲良く出来ればいい。兄のいなくなった暗い世界でぼんやりとそんな事を考えていた。




花束と王都で流行りの焼き菓子を持ってリヒト親子はグランデル家を訪れた。白髪の上品な男性が出迎えてくれた。家令だろう

「ベルンシュタイン侯爵といいます。伯爵にお会いしたいのですが」

「こちらへどうぞ」

と言って案内された先は落ち着いた応接室だった。


父親の伯爵に連れられた小さな令嬢が入って来た。

「お久しぶりです。お待たせしました、娘のエミリアです。リヒト君より三歳下の七歳だ。君は息子と同じ年だったね」

父親の後ろからそっと顔をのぞかせた令嬢はリヒトを見るとニコッと笑った。


「リヒト・ベルンシュタインです。二度目だけど覚えていないだろうから、初めましてだね。よろしくね」


「エミリア・グランデルです。お散歩したのをなんとなく覚えています。よろしくお願いします」


「この前は二歳だったのに覚えてくれているの?凄いな。これまで交流して来なくてごめんね。手紙を書こうと思っていたところに不幸があって、何も考えられなくなったんだ」


リヒトは伯爵に向かって頭を下げた。

「今まで手紙も出さず会いにも来ず誠に申しわけございませんでした。お嬢様の事を考えていなかった訳ではなかったのですが」


「かまわないよ、娘も幼かったからね。五歳と二歳の婚約は早すぎたかなと反省したこともあったくらいだ。気にしないで欲しい」


「そうおっしゃっていただけると気が楽になります。これはお嬢様にプレゼントです」

花束とお菓子をプレゼントされエミリアは花がほころぶような笑顔を見せた。



おそらく興味も無かった婚約者に会いに行くように父親に連れて来られたのだろうと伯爵は思ったが、息子と同じ年で後継の教育も受けて来なかった令息がきちんと挨拶が出来た事を評価する事にした。


侯爵家の領地が大変だとの情報も入って来ている。あちらがどう出て来るか見てみようと思った。



「大人同士で話があるから君たちは庭を散歩して来れば良い。エミリア案内して差し上げなさい」

「はいお父様。では行きましょうか、リヒト様」



庭に出ると、花の甘い香りがした。風がそよいでとても気持ちがいい。

「気持ちの良い庭だね、あれから五年か。手紙のやり取りも会いにも来なかった。薄情な奴だと思われているんだろうね、面目ないよ」


「かまいません、私も半分忘れていましたから」


「そうなの?それは良かったと言うべきなのかな。これからはきちんとする。手紙も出すし会いに来る。君は昔も可愛かったけど、さらに可愛くなったよ」


「ありがとうございます。嬉しいです。領地で採れた林檎で出来たアップルパイが焼けていますのでいかがですか?そちらのガゼボに用意させていますので」


「もっと砕けた話し方をしてもらってもいいかな?急には無理かもしれないけど。勝手だと思うんだけど、なんか寂しい気がするんだ」


「努力します。いえなるべく心がけるわ」


ガゼボに用意されたお茶を飲みながら、リヒトはこの可愛らしい婚約者に何か話をしなくてはと考えた。


女の子はどんな話を喜ぶのだろう。ドレスの話かお菓子のことくらいしか思いつかなかった。とりあえず目の前のパイに話を振ってみようと思った。

「君の領地は林檎の栽培が盛んなんだね。街にも活気があったし素晴らしい所だね。スイーツ以外は何を作っているの?」


「ジュースやアイスです。あっ、アイスはスイーツですね」

そう言って笑ったエミリアから目が離せなくなったリヒトだった。


こんなに可愛い子が婚約者だったなんて、もっと早くから交流をしておけば良かったなと今更ながらに思ってしまった。

「君は食べ物は何が好き?趣味は何?僕は魔法を使うのが好きなんだ。魔力が増えて段々魔法が上手くなっていくのが面白い」


「食べ物の好き嫌いはあまり無くて何でも頂きますけど、スイーツは大好きです。趣味は本を読むのが好きで、刺繍もなんとか出来るかなって程度です。お母様がもう少し大きくなればもっと上手になるわとおっしゃるので心配はしていません。後はダンスもピアノもバイオリンもそれなりに出来ます」


「頑張っているんだね、君と話していると楽しいな。僕の手のひらを見ててごらん」


そう言ったリヒトの手のひらから小さな炎がユラユラ立ち上った。


「まあ、綺麗な炎ですね。熱くはないのですか?私も灯りを点ける事は出来るみたいなのですが、使用人の仕事を奪ってはいけないと言われて練習はしていないのです」


「全然熱くはないんだ。心配してくれてありがとう。水も出せるよ。ほら空のカップに入れるよ。これから必要になる時があるかもしれない少しずつ練習しようか?君の父上に許可を貰ってからだけど」


「凄いです、兄様は土と風の魔力があるのですが水の魔力が欲しかったといつも言っています。今日は用事で母と出かけているのでご紹介できませんが」


「これからは手紙を書くよ。会いにも来る。兄が亡くなって塞いでたんだけど、君に会って気持ちが晴れたような気がする」


「それなら良かったです。頂いたクッキーもとても美味しかったです」

微笑みあった二人に温かな空気がうまれていた。



帰りの馬車で大きく息を吐き出したリヒトは温かなものを感じていた。世界に少し色が戻って来たような気がしたからだ。

馬車の中でどうだったかと聞かれたので可愛い子だったと答えておいた。



 リヒトは災害に遭った領地について父と共に調べた事をもう一度考える事にした。大きな川が雨の為に増水し両域で作られていた様々な農作物が流されてしまった。


元のような土地に戻すのには洪水を防ぐ為の防波堤のような物を川の上流に造る必要がある。大きな岩で水をせき止めたり必要な時には放出するように出来ないか、父に頼み専門家を集めて貰った。


下流には海があるので海藻や貝殻を集めて乾燥させ砕いて畑だった所に撒き上から土を被せた。


元のような土地に戻すのにはまだまだだったが、痩せた土地でも育つといわれる葡萄の木を植えた。希望が見えたようで嬉しかった。


海の近くには港があり整備をして大きな船が寄港出来るようにした。


「リヒトのおかげだ。発想が新しいから困難な状況を乗り越えられそうだ」

と父から褒められた時には口角が上がってしまった。



 国と伯爵家の援助で危機を乗り越えた。エミリアの隣に立ちたい為に頑張った。

もちろんエミリアに二週間に一度は必ず会いに行った。彼女の笑顔が何よりの癒やしだった。




「エミー今日も綺麗だね。そのピンク色のドレス君の愛らしさを引き立てているね。どんどん綺麗になって僕は心配でたまらない、君が誰かに攫われるのではないかと夜も眠れないよ。

プレゼントにこんな物を作ってきたんだ。気に入ってくれるといいんだけど」

それは金色のイヤリングだった。

「綺麗、忙しいのに作ってくれたのね。金色はリヒの髪の色と同じね。何かの魔力を感じるわ。嬉しい、ありがとう」


「離れていても話が出来るんだよ」


「凄いわ、リヒには守護魔法も掛けて守って貰っているのに」



実は兄と父からも掛けられていて完全に守られているエミリアだったがここは言わないほうが平和だろうと思っていた。リヒトと再会して三年、随分と過保護な婚約者になった。

エミリアの屋敷なのにもてなすのはリヒトだった。お茶を入れるのもかなり上手い。買ってきてくれるお菓子も厳選されている。


焼き立てのアップルパイにアイスクリームを載せて食べさせられたときには美味しさで驚いたのと、リヒトの綺麗な顔がアップで迫ってきてどうしていいか分からなくなって固まってしまった。結局口を開けるまでずっと引いてくれないので、アイスが溶けてしまうよというリヒトの声で急いで食べた。


今度町に行きカフェでパンケーキを食べようと誘ってくれた。女の子に人気なのだとか。リヒトの方が人気になったらどうしようと考えたが、そこは婚約者特権で譲らない事にした。



朝リヒトが迎えに来てくれる事になった。

貴族と分からない町娘の格好をして行くらしい。侍女たちが洋服選びを張り切っていたので、全部任せることにした。自分ではよくわからない。


エミリアは緑のチェックのワンピースにブーツと帽子。リヒトは白いシャツと黒いパンツだけど王子様感が半端なく出ていた。上品さって隠せないのねと思って見つめていたら、今日も可愛いよと髪をすくって口づけされてしまった。


若いメイドが顔を赤くしながら後ろを向いたのだが、エミリアも俯いてしまったので気づくことはなかった。


二人で出かけた街は人が多く行きかい、カップルも沢山いた。皆手を繋ぎあれこれ見ている。


二人も恋人繋ぎをした。はぐれるといけないからと言われそんなものかと納得した。

まずは雑貨の店に入った。綺麗な物や可愛いものが所狭しと置かれていてエミリアは目移りがした。


リヒトにペンをプレゼントしようと思い自分の瞳の色の深い緑を選んだ。

その間に金色の髪留めを見つけたようで買ってくれていた。


カフェに行くと個室を予約していたらしく直ぐに通された。ここならリヒトが騒がれるのを見なくて済むとエミリアは安心した。エミリアは苺のパンケーキと紅茶、リヒトは葡萄のパンケーキと紅茶を注文した。


「これエミリアに似合うかと思って、どう気に入った?気に入ったら着けさせて欲しいな」

「とても素敵な細工がしてあるのね、繊細だわ。ありがとう。それにこの部屋人に見られなくて落ち着く。私からのプレゼントはこれよ」

とペンを渡した。


「君の色だね、大切にする。僕はもうすぐ王立学院に入るけど屋敷から通うから今まで通り君に会いに来る。」

エミリアの髪に飾りを留めたリヒトは満足そうに笑った。



学園に入学後リヒトは魔法について多くの事を精力的に学び力を大きく伸ばしていた。エミリアの兄ギルバートともよく話すようになった。話題はエミリアの事と魔法の事だった。二人とも高位貴族で成績優秀、その上美丈夫なため学院の令嬢から熱い視線を浴びる事が多かった。


「ギルバートは好きな子とかいないの?僕にはエミリアがいるから寄って来る虫もまだ少ないけど」

「いない、妹以上に可愛い子なんている?泣かせたら渡さないから覚悟してね。それに魔法の方が面白いよ」

相変わらずのシスコンぶりの返事だった。




それから三年が経ちエミリアが入学してきた。リヒトは婚約者なのだから迎えに行くと言い、ギルバートは兄の権利だと式の前日まで言い合いをしていた。三人で行きましょうと言ったエミリアに二人共苦い顔をして頷いていた。笑っていたのはエミリアである。



 それから二年が過ぎリヒト達の卒業の年になった。エミリアも卒業するつもりだ。学院生活は楽しかったが勉強は既に終えていた。二人のいない学院生活に魅力は無かった。


☆☆☆


 そんな最終学年に隣国から公爵令嬢が留学して来るという噂がたった。

この時期に何故?もう卒業だよね。何か隣国に居られなくなった事情があるのではないのか、貴族令嬢や令息は不思議に思っていた。リヒトとギルバートはこっそり調べる事にした。エミリアに被害が及んでは困るからだ。


部下たちの報告によると絶世の美女らしいがとんでもなく贅沢好きで我儘、美丈夫好き。顔の良い護衛ばかりを侍らせていると報告が上がって来た。


婚約者はいないらしい。条件を満たすのは王族くらいではないかと思ったが、逃げるのが一番と三人で急いで学院を去る事にした。


それぞれの親に相談したところリヒト達は急いで入籍をする事になった。式は後できちんと挙げる予定だ。ギルバートは遠縁の子爵家から結婚相手を見つけ、とりあえず形だけの契約婚を取りつけた。



申しわけないので、多額の支度金と破談になった時相手の令嬢が一生生活に困らないくらいの金額を渡す事でせめてもの罪滅ぼしとした。


領地が食いつぶされるよりはと思った結果だったが、一人の令嬢の人生を左右する事になったとギルバートは歯ぎしりをした。もっと早く覚悟を決めておけば良かったと思ったのだ。



初めての顔合わせの時アンナは十九歳だった。二歳年が上なのが申しわけなさそうだった。ギルバートはアンナを紫色の髪と黒い瞳が綺麗な人だと思った。会話も落ち着いている。


「こんな契約婚を突然申し込み申し訳ないと思っています。貴女には酷いことを強いている自覚はあるのです。今は事情を話せませんがいずれ時が来たらお話が出来るかと思います。お許し願えますでしょうか」


「その条件を呑んでこちらにやって参りました。離縁後の事も考えて頂きありがとうございます。こちらにいる間に服飾の仕事を考えております。気になさらないで下さいませ」



ギルバートが調べるとやはり学院では高位貴族令息の被害が多発していた。絶世の美女の外見に騙された男が多かった。リヒト達はその結果にほっとした。



その後彼女は王族にまで手を出そうとし、今までの事を調べられ強制退去させられた。


ギルバートはアンナに惹かれ無事一年程経って本当の結婚をした。


アンナは裁縫の夢を捨てきれず身内のドレスを仕立てていたが、エミリアや義母のドレスが、茶会や夜会で徐々に評判になりドレスメーカーとして名を馳せるようになった。伯爵家と侯爵家が後ろ盾になったアンナは今や一流のメゾンになっていた。

ギルバートは惜しみない支援を妻のために行い、社交界のおしどり夫婦と呼ばれる様になった。



☆☆☆



 リヒト達はエミリアが十六歳になるのを待つ事になった。


若すぎるエミリアの為だったが、ドレスの準備や二人で暮らす屋敷の用意等であっという間に時は過ぎた。






その日白いレースをふんだんに使った豪華なドレスを身に纏ったエミリアを見た花婿は固まってしまった。


「美しい僕の花嫁、あまりに綺麗で言葉が出てこない。君だけにこの愛を捧げる。一生君を愛すると誓うよ」


「リヒもかっこいい。旦那様が素敵過ぎて幸せだわ」



侍女が呼びに来て二人の結婚式が侯爵領の教会で無事行われた。その後にパーティーが行われ二人の結婚が公のものとなった。次期侯爵に挨拶しようとする列は延々と続いた。その間にもリヒトは始終エミリアの頬にキスをしたり腰を抱いたりして幸せに浸っていた。


二人の周りには甘い空気が漂って、気遣った家族から早く新居に行くように促されたのだった。



新居は侯爵家の敷地に新しく建てられた。いずれリヒトが爵位を譲られたら親世代と交代する事になっている。


メイド達にお風呂に入れられ身体を磨かれたエミリアはこれからのことを思うと緊張してきた。すでに薄いナイトウェアを着せられていた。女性用の閨教育は受けたが初めては痛みがあるらしい。

あのリヒトが私に痛いことをするとは思えないとエミリアは斜め上の自信を持っていた。


夫婦の部屋にはレモン水と軽食、軽めのワインが用意されていた。

灯りは少し暗くしてあった。

扉を叩く音がしてリヒトが入って来た。髪が乾ききっていない。急いできてくれたのかしらとふかふかのタオルで髪を拭いてあげたら、熱のこもった目で見つめられ唇に柔らかなものが触れた。


「愛してるよ、エミリア。君が好きだよ、僕の奥さん」

「私も愛してる、これからよろしくね」


言い終わらない内に唇が塞がれた。エミリアの初めてはリヒトの痛みを無くす魔法で蕩けるような夜になった。


甘い朝を迎えたエミリアはリヒトの逞しい腕の中で穏やかな眠りのままだ。

新妻の可愛い寝顔を堪能したリヒトは、この幸せを大事にすることを胸に誓った。









読んでいただきありがとうございました。誤字脱字報告もありがとうございます。

初めてで投稿の方法を間違えていました。良くわかっていませんでした。 申し訳ありません。お恥ずかしいです。これからもよろしくお願いします。

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