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 シバの住む国において、認可されていない宗教団体は違法であり、そして犯罪者だ。

 再三の忠告をしても解散しな違法宗教団体は、シバのような政府の犬に始末されることになる。

 シバは、多目的軍用ゴーグルと全身を覆う対刃対弾兼用のボディースーツという、いつもの政府の犬の格好で、標的と定められた宗教団体に踏み入った。


「なん――」


 出くわした男性がなにかを言う前に、シバは拳銃の弾をその頭に叩き込んだ。

 脳漿をまき散らしながら仰向けに倒れる男性。

 それを見ていた誰かが悲鳴を上げ、それが周りに伝播する。


「うわあああああ! 襲撃だ!」

「なんで、なんでー!」


 逃げ惑う人たち。

 シバは容赦なく銃撃していく。

 新たに五人が絶命したところで、宗教団体の用心棒らしき人たちが銃器を携えて現れた。


「一人で襲撃してきたこと、後悔させてやる!」

「機関銃で蜂の巣だ!」


 アサルトライフル二丁持ちと、軽機関銃とそれに繋がった弾薬箱を持つ、二人組。

 彼らはシバを視界に入れるや、アサルトライフルと軽機関銃をフルオートで発射し始めた。

 放たれた弾丸は、多くはシバの周辺へとやってきたが、少なくない数が宗教施設の壁に当たって跳弾したりしている。

 そんな銃弾の雨の中、シバはゆっくりと右手の拳銃で狙いをつけていた。迫ってきた弾丸は全て、念動力によって直前で停止してる。

 そしてシバが拳銃で銃撃すると、フルオートで放っていた二人組は眉間を弾かれて後ろ向きに倒れた。

 シバはその二人組に近づき、拳銃の弾倉に残っている弾丸を全て打ち込んで、確実に殺害した。

 その後、シバが拳銃の弾倉を交換していると、教育を頼まれた大型円柱機械イザーンが宗教施設の中に入ってきた。


『これは惨状ですね』

「まだ掃討しきってないから、これ以上に酷いことになるぞ」


 シバの返答に、イザーンは疑問を告げてきた。


『人殺しは社会の禁忌だという認識なのですが、どうして政府は貴方に命じているのでしょう?』


 今更ながらの疑問に、シバは溜息を吐きながら答える。


「隣人が人殺しかもしれないという不安があると、人と人は関係を持とうとしなくなる。しかし人と人の関りなくして、社会の経済的発展は望めない。だから人殺しは社会の禁忌なんだ」

『経済的観点からの意見ですね。ではコンバット・プルーフのような、専門で人を殺す人を社会の枠から出すことで、社会は成り立つというわけですね』

「俺を爪弾き者のように言うな」


 シバは苦情を言ってから、人を殺す合理的理由を持論として語る。


「さっき経済的発展と言ったが、殺して良い人という判定も経済的な観点からだ。その人を生かすよりも殺した方が、経済的な損失が少なくなるっていう理由でな」

『経済的に有益だから殺すのではなく、損失を減じるため、なのですか?』

「当たり前だろ。人間ってのは、成長して金を生むようになるまで、大変に金のかかる生き物だ。殺すってことは、その成長にかかった金を捨てるってことだ。つまりは損失だ」

『その損失を許容すると?』

「例えばだ、人が成長しきるまで、高級車一台分の値段がかかるとしよう。そして、とある人物は生きているだけで高級車一台分の損失がでるとしよう。そのとある人物が死ねば、新たに子供一人を成長させられる社会経済的な余裕が生まれるわけだ。政府としては、損失しか生まない人物を生きながらえさせるよりも、将来に多大な利益を生む可能性を持つ子供を優遇するのは当然だ」

『人命軽視は、倫理的に間違っているのでは?』

「人命の保証も、社会に組み込まれていてこそだろ」


 そこまで持論を語ってから、シバは説明内容を放棄するようなことを口にする。


「政府の命令だからって理由で納得しておくのが、場当たり的には楽だな」

『政府の命令だから、人を殺しても仕方がないと考えろと?』

「命令者ってのは責任を負うのが仕事だ。政府の犬の仕出かしたクソの責任は、取ってしかるべきだろ」

『実行責任まで転嫁してませんか?』

「俺は自分で納得してやってる。他の連中には、転嫁しているヤツもいるんじゃないか?」


 シバの説明を受けて、イザーンは考え込むためか動作と発言を停止する。

 そのまま五秒ほど経って、イザーンは自身の武装を展開し始めた。


『とりあえずは、政府の命令だからという理由で納得しておきます。オーダーを忠実に実行することは、機械に求められる機能ですし』

「ここからは、イザーンにお任せってわけだ」

『コンバット・プルーフも給料分は働いてください。命令を忠実に実行する、政府の犬なんですから』

「はいはい。じゃあ、イザーンのバックアップとして働くとするか」


 イザーンが前、シバが後ろの隊列で、宗教施設の中を進む。

 でくわす全ての人間を、イザーンは内臓された武器で殺し、シバが生存確認と止めの一撃を与えていく。物陰に隠れている人も、イザーンのセンサーが捉え、随時始末していく。

 こうして、程なく宗教施設にいた全ての人間は、イザーンとシバの手腕によって始末された。

 一仕事を終えてシバとイザーンが施設の外に出ると、多数の車両と制服を来た何十人もの人たちが集まっていた。

 すわ待ち伏せかと思う光景だが、シバは飄々とした態度で制服の一人に声をかける。


「生き残りはいない。クリーニングは任せた」

「クズたちの血を綺麗に掃除して、建物の価値を復活させてみせますとも」


 シバとイザーンが建物から離れると、競服を着た人達が掃除用具を手に宗教施設の中へと入っていった。程なくして、死体の運びだしが始まり、車両の荷台にポンポンと死体が投げ入れられていく。

 その光景を見ながら、シバが多目的ゴーグルでネット検索を行う。検索するのは、いま掃除中の建物について。

 すると直ぐに、賃貸物件として建物の情報が記載されている。瑕疵物件扱いで、周囲の賃貸物件より何割か安くなっている。


「素早いことで」


 シバは感想を口にしつつ、イザーンと共に現場を後にしたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] こんな後始末でもやり甲斐を持って取り組んでる人いるんだなあ
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