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07 再認識

 城に戻ると、永建さんから声を掛けられた。

「花音殿、岩塩が手に入りましたぞ」


「本当ですか?」

「こちらに」


 足早に、ついて行く。

 庭には、大小の岩塩がゴロゴロと置かれていた。


「凄い!」


「先程、石掘隊の者達が帰って参りました」


「こちらにあるのは小さめのが一部ですよ」

 彩京さんが言う。


「本当に? そんなに取れたんですか?」

 にっこり彩京さんが微笑んで頷いた。


 やったーーー!

 これで、貧乏脱出!


「今、塩工場の方で、岩塩を砕いて水に溶かす作業を行っていますよ」


「楽しみ!」


「彩京さん、お願いがあるんですけど」


「何でしょうか? 私で出来ることなら」


「畑に植える作物ですが、同時進行で 野菜や小麦の苗も一緒に作りませんか?」


「それは?」


「作物が収穫出来るまでは時間がかかります。でも苗なら早くできるし、場所も広くはいりません」


「沢山の野菜の苗をどんどん育てて、領民の皆さんにお分けしたら、どうでしょう?」


「ここのお城だけで、作物を育てるとなると、収穫数がやはり少ないでしょう」


「ここで育てるだけより、領民の皆さんにも、育ててもらったほうが、沢山収穫出来ると思いませんか?」



「花音様、本当にあなたと言う人は……」


「即刻手配します!」

「では急ぎますので、失礼を!」


 そうして数日後には、私の提案で、巨大苗畑が城の庭に出来上がった。

 ある程度育った時点で、どんどん抜き取り領民に、続きを育ててもらうことにしたのだ。







────これによって、()()()()()()スピードで()()()()作物が実をならし、この国に激震が走ることになるとは、この時の彼女達は考えても見なかった……



 そう言えば「テンサイ」って確か「砂糖」がとれたわよねぇ?

 この世界にも「テンサイ」ってあるのかしら?

 後で、聞いてみよっと。




「おい! ところで、晩飯の準備はいいのか?」


 は! もうそんな時間!

 急いで厨房へと走って行った。



「若様、最近楽しそうですねぇ」


「うるさいぞ」


「お前も、岩塩みたいに砕かれてみるか?」


「遠慮しときます」

 タキは微笑んで足早に去って行った。


「あのババァめ……」




 無事夕食を作り終え、いつものように若様の部屋で会議? を開く。


 最近ではこれが恒例になっていて、各自の報告や、今後のスケジュールの打ち合わせなどの話合いを主に行っている。


「彩京、アレを」


「承知しました」



「花音様、こちらを」


 ? 紙包みのような物を手渡された。


「これは?」


「開けてみろ」


「?」


 そっと、包みを開けると中には、金貨が2枚と銀貨と銅貨が入っていた。


「これは?」


「お前の給金だ」


「え? お給料貰えるの?」


「いらんのなら返せ!」



「いります! いります!」


 やったー! これで、これ貯めたら脱出できる!


「【料理番】の給金が、銀貨5枚と銅貨5枚だ」


「残りの金貨は、岩塩や畑などの案の特別給金だ」


 え? それってじゃあ、毎月この金額くれるわけじゃないの?

 グスン……

 まぁ、そうよねぇ…… 貧乏だし、まだこの領地


「不服か?」


「いいえ。もっといっぱいお金が儲けれるように頑張ります!」


「花音様の本業は【料理番】でございますけどね」

 いつの間にか本業にされてるし……


 てか、お礼ってこれ? 嘘でしょ……


「若様……」

 彩京さんが一瞬私の方を見た。


 ん?


「東の……」


「花音、席を外せ」


「若様、花音様にも聞いていただいたほうが、よろしいのでは?」


 一瞬若様の眉が寄り不快そうな表情を浮かべた。



「え? いいですよ? 私、出ますから」


「若様、いずれわかることでございます」



 若様が静かに目を一瞬閉じ、ゆっくり開いた。



「わかった」


「続けよ! 彩京!」


「え? 私、出たほうがいいんじゃないの?」


「かまわん!」


「花音様、若様が傷を負ったことは覚えてらっしゃいますよね?」


「はい」


「その傷を負わせた相手でございますが、再び最近不穏な動きをしているとの情報を掴みました」


「え?」


「今直ぐに攻めて来るわけではないでしょうが、近いうちにきっと……」



 最近、畑や、塩作りなどですっかり忘れていた。

 ここは、日本と違って戦乱の世だったことを。

 

 私は、この世界に来たあの日目にした戦場の惨劇を自分の中で無意識に消し去っていたことに、改めて気づかされた。



「花音、城を出る際は一人で出ることは許さん。いつ敵に捕まるかわからん」

「城の中も、極力一人で行動するのは控えるように」

 若様が低い抑揚のない声で言った。


 私の顔が強張っていることに気づいたのか?

 永建さんが

「大丈夫じゃ、城の中にさえ居てくれたら儂が絶対に守ってみせるから」

「安心せえ」

「ハハハッ」と豪快に笑った。



「まぁ城の中なら危険は少ないが用心に越したことはない、明日から護衛をつけよう」

「多少窮屈にはなるが、我慢しろ!」


「はい。すいません。ご迷惑おかけします」


「花音様が謝るようなことではないですよ?」


「非力な女性をお守りするのは当然のことですからね」

 にっこり微笑んでウィンクする彩京さんを見て、少しほっとした。


「それと、警備の関係上、お前の部屋を移動するぞ」


「え? どこに?」


「俺の隣の部屋を用意させる」


「え?」


「何だ? 不満か?」


「不満ではないですけど……」

 なんとなく複雑な気分……


「わかりました」




 その後、今後向けての話合いが遅くまで行われていた。










「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

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