表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/21

03 料理番って何ですか?

「ひえーー落ちるぅー」

「助けてぇーー」

「おがぁぢゃぁーーん」


「うるさいなぁ。ぎゃあぎゃあ騒ぐなって言ったろ!」

「だってぇー」

「ひぇーーー」


 そう、私は今、誘拐? されている途中だった。


 そして、生まれて初めて馬に乗っている。

 まぁ正確には乗せられていると言ったほうが……




────時は少しだけ遡る。

「行くぞ!」


「若様、申し上げ難いのですが、若様お一人と思い、馬は三頭しかご用意しておらず……」


「チッ、くそッ。 仕方ない」


「女、来い!」


「え?」


 私は気づいたら、その俺様男に担がれ、馬上にいた。

 そして何の説明もないまま、超スピードで馬が駆け出したのだった。



 

 そして今、私は、先程食べたおにぎりが……


 ウッ……

 食べるんじゃなかった……


 これ以上揺れたら……ヤバイ。



「開門!」


 ん? あまりの怖さとスピードと、

 気持ち悪さでずっと目を瞑っていたけれど、

 その大きな声にそっと目を開けた。


「お城?」


 日本のお城とはちょっと違う? 雰囲気のお城があった。

 大きな門がギィーっと音を立てて開いた。


 馬はそのまま駆けて入る。

 男は飛び降り歩き出す。


 私は周りをキョロキョロと見渡すと、美男子様が私を馬から降ろしてくれた。

 急ぎ前を歩く俺様男を追う。


「ちょっと待ってよ!」


「あん?」


 あまりの強引さに頭にきて、その俺様男の服を掴んだ瞬間、


 あ! ヤバイ! もう我慢の限界!



 ウッ……ゲ×××


「きーさーまあああ!」


 ゴメン。だって、馬に揺られて、

 もはや限界だったし……

 でもスッキリした。


 ハッ!  ヤバイ!


 凄まじい殺気と、先程の炎のような熱気が辺り一面に広がった。



「若様!」


 急ぎ私に、駆け寄って来た美男子様の後ろに咄嗟に隠れた。



「彩京、どけろ!」


「若様! なりません! この方は若様をお助けしてくれた御方!」



 ああ、私の短かった人生さようなら……

 目を瞑った瞬間、

 先程までの殺気がおさまった。



 カキン。

 小さな金属の音が聞こえた。




「おい、見たか? 今の?」

「若様が一度抜かれた剣を鞘におさめたぞ」

「あの、女子供にも一切容赦しない若様が」


「こりゃあ、嵐の予感だ。急いで雨戸を閉める用意をせねば!」


 蜂の子を散らしたように、周囲にいた人達が去って行った。


「くそが」


「この女を、料理場に連れて行け!」

 一切私を見ることなく、

 低く鋭い声で、美男子様に言い放った。



「ささ、参りましょうか? お嬢さん?」

 私の手を取り、案内してくれる。


「あ、まだ名前を名乗ってなかったですね。申し訳ございません」

「私は、この国の宰相をつとめております彩京と申します」


 国? じゃあ、あの人は国王様?


「先程のお方は、この国の城主様の翔陽(しょうよう)様にございます」

「まぁ……あの通り少々激しい気性ではございますが……」


 あれ、少々? って言うレベル?


「一緒に居た髭の男は、我が国の将軍、永建と申します」


「はぁ、ご丁寧にどうも……」


「して? お嬢さんは?」


 どうしよう。異世界から突然飛ばされて来たって、この人に言って信じてもらえるだろうか?

 そんなことを言ったら、即刻殺されるかも?


 うん。ありえる。あの人なら。

 しかも私さっきゲ○ったし……

 確実にダメなパターンだわ、これ。


 でも、何て言おう?


「えっと…… ずっと山で暮らしててぇ……街に出ようと思って歩いていたら、道に迷ってしまって……」

 

 無理だ……

 どう見てもこの設定無理がある……


「そうですか。それは災難でしたねぇお嬢さん」


 え? 今の説明でオッケーなの?



「ところでお名前を聞いてもよろしいですか? お嬢さん?」


「あ! すいません。はむ…… 花音(かのん)です!」


「かのん様ですね。素敵なお名前ですね」


 優しく微笑む美男子に少しうっとりして頬が熱くなり、急いで咳払いをして誤魔化した。



「こちらが料理場でございます」


 厨房のようなところに案内された。


 あら? 意外! 結構綺麗に整理されている!


「実はですねぇ……大変申し上げにくいのですが」


 え? 何ですか? 

 まだ何か問題でもあるんですか? 

 怖いんですけど……


「以前の【料理番】がですねぇ、お辞めになりまして」

()()今ここにはいらっしゃらないのです」

 満面の笑みで美男子様が言った。


 は? 今なんつった?


 助けたお礼にって? 

 もしかして、居なくなった料理人の代わりを私にしろってこと?


 ゆっくりと美男子様に視線を向けると


 ニッコリと微笑む。



 はめられた!



「ついて早々で大変申し訳ないとは思うのですが……」

「若様はあのような気性のお方でして……」

「早急に食べるものを持って来いとご所望でして……」


「かのん様 お願いできますか?」

 満面の笑みで私を見る。


 はあ? そんなの無理に決まってるだろ!


 初めてきた異世界で、しかも、ここが何処かも全くわかってない状態で、しかも()()俺様くんに料理を作る? 

 ありえないだろ。


「食材は、あの冷蔵庫に入っておりますから、お好きにお使いくださいね」


「では、よろしくお願いしますね」

 ニッコリ笑う。


 よろしくお願いしますじゃねーーし!

 ちょい待て! そこの長髪!


「あ、わからないことがあれば、そこの小姓に聞いたら大丈夫ですからね」

 と、廊下に居た男性の方を向き言う。


 いや、そういう問題じゃないし! 


「では、後ほどお会いしましょうね。()()()


 待って! と、言う前にその美男子様は消えていった。






「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

続きが少しでも気になると思っていただけましたら、下にある✩✩✩✩✩から作品への応援と、ブックマークをして頂けると、作者は泣いて喜びます。是非よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ