第39話:あの女に会いに行きましょう
王太子と別れた後、私が向かったのはグラディス先生の研究室だ。
「グラディス先生!ちょっと道具を貸して欲しいのですが!」
物凄い勢いで部屋に入って行ったため、目を丸くしてこちらを見ている先生。
「クラウド殿下の事で落ち込んでいるかと思ったが、意外と元気だな!それで、何の機械が欲しいんだ」
ちょうど何かの研究をしていたグラディス先生。
「先生は一体何の研究をしているのですか?」
「これか?これは指紋を認識する機械と薬を作っているんだ!もしクラウド殿下が誰かに罪を擦り付けられているなら、きっと毒の入っていた容器には触れていないはずだ。その証明が出来れば、明日の処刑を回避できるかもしれないと思ってな」
「先生も、クラウド様を助けようとしてくれているのですか?」
「当たり前だ!絶対に死なせたりはしない!君だってそうだろう?」
「もちろんですよ!」
クラウド様を守る為に、こんなにも沢山の人が動いてくれている。そう思ったら、嬉しくて涙が込み上げて来た。ダメよ!今泣いては!そうだわ、こんなところで泣いている暇はない。先生にも手伝ってもらわないとね!
早速今回の計画を、先生に詳しく説明した。
「ミレニア嬢、それは危険すぎる!それなら私も一緒に行こう!」
「いいえ、私1人で行きます!もし他の人がいたら、きっと相手も警戒しますわ!」
「分かった…それなら、これを持って行け。とにかく無理をするなよ」
「ありがとうございます。では行って来ます」
そう、私の計画というのは、ズバリ!あの女のいるアジトへ向かい、自白させる事だ!有難い事に、私はアジトの場所を覚えている。なぜだか分からないが、アジトが出て来る話は何度も何度も読んだため、覚えていたのだ。そう、第46話だ!
アジトは王都の街の中心部、少し路地に入った場所にある。一見宝石が売っているお店に見えるが、実はここがアジトなのだ。
近くまで行くと、護衛騎士を待機させることにした。きっと護衛騎士がいる事がバレれば、あの女は身を潜めるだろう。確かこの辺のはずだが…
あった!あの店のはずだ!店名も合っている!ゆっくり中に入って行くと、男性が2人いた。
「いらっしゃい、お嬢ちゃん。何かお探しかい?」
「ええ、ステフという女性を探しているの!ここに居る事は分かっているわ。さっさと出しなさい!」
「お前、一体何者だ…」
明らかに警戒する男2人。この反応は、間違いなくステフはここに居る。ちなみに、ステフというのは、女の本名だ!離宮ではアルサという名前で活動していたから、本名を知っているのは仲間内だけ。
でも私は前世の記憶があるから、知っているけれどね。
「ステフ、ここに居るのでしょう!出てきて話をしましょう!ステフ!!!」
大きな声で叫ぶ。すると、出て来た!緑の髪にオレンジの瞳の女性。やっぱりここに居たのね。よくもクラウド様を!全身から怒りが込み上げる。
「あなた誰?どうして私の名前を知っているの?」
怪訝そうに私を睨みつけている。
「私はミレニア・マーケッヒ。よくもクラウド様を陥れてくれたわね!許さないわよ」
「ミレニア・マーケッヒって公爵令嬢の?わざわざ恋人の為にここまで来たの!アハハハハハ、あなたの噂は聞いているわ。かなり優秀だという事も。でもまさかここを突き止めるなんてね。でも、1人で乗り込むなんて、どれだけバカなのよ。アハハハハ」
そう言って笑い転げている。男共もなぜか一緒に笑っている。何なのよ、こいつら!
「あ~おかしい!護衛騎士の気配も感じないし、本当に1人で来るなんてびっくりだわ。それにしても、どうやってここを突き止めたの?」
「それは秘密よ!そもそも護衛騎士なんて連れてきたら、あなたはきっと会ってくれないでしょう!そんな事より、どうしてクラウド様にあんな事をしたのよ!そのせいで、クラウド様が明日殺されるかもしれないのよ!」
とにかくこの女に白状させないと!
「ギャーギャーうるさいわね。そうね、静かなところで話をしましょう。例えば、湖の近くとか」
そう言うと、ニヤリと笑ったステフ。次の瞬間、首に衝撃が走った。そして、そのまま意識を失ったのであった。
「う~ん、ここは?」
頭がまだボーっとする。それに手足が縛られている様で、自由に動かせない。
「お目覚めですか?ミレニアお嬢様」
この声は!
「ステフ、あなた一体どこに私を連れて来たのよ!」
完全に意識を取り戻した私は、周りを見渡す。とどうやら森の奥の湖の様な場所に連れてこられたようだ。
「あなたは今から事故に見せかけて、この湖で溺死するの。大丈夫よ、明日には大好きなクラウド殿下と会えるから。私って優しいと思わない?恋人同士の2人を一緒にしてあげるなんて」
「ふざけないでよ!そんな事出来ると思っているの?」
「そうそう、あなたのポケットに入っていた通信機と、胸に付いていたブローチ型の通信機。あれ、破壊させてもらったわよ。まあ、何か持ってきているのだろうと思っていたけれど、あんなにも精密な通信機を持っているなんてね。さすが公爵令嬢だわ」
そう言うと、壊れた通信機を私に見せて来た。ギロッとステフを睨みつける。
「おお怖い、そんな顔で私を睨みつけないで」
そう言ってクスクス笑うステフ!何がそんなにおかしいのよ!怒りが体中から込み上げる。
「ねえ、どうせ私はここで命を落とすなら、せめて真実を教えて!そもそもあなた達は、反王政派の人間ではなかったの?どうしてクラウド様を陥れる様な事をしたの?全く理解できないわ」
私の言葉を聞き、ニヤリと笑ったステフ。
「本当に、どこまで情報を掴んでいるの?この令嬢は!今回あなたを抹殺出来る事は、ある意味良かったかもしれないわね。いいわ、教えてあげる」
そう言うと、真っすぐ私の方を見た。あまりの迫力に、緊張からか汗が噴き出る。いよいよ、この女から真実が語られるのね。




