その五
「ねえ、おじさんは神話って知ってる?」
「神話?あ~昔のギリシャ神話とか、日本でいえば古事記・・ヤマタノオロチなんか有名だよね」
ーまたまた風向きがおかしくなってきたぞー
「ふん、いいわ。じゃあヤマタノオロチはどれぐらい大きいの?」
「やはりそう来ましたね。ちょっと待って」
少々大人気ないが、こうなったら意地である。
私はスマホを取り出して調べはじめた。
「えーと。何々八つの丘八つの谷・・背には杉、檜、苔が生い茂り。これは巨大だね。国の十分の一はあるかも知れない。あっ今でいえば県か。どうだろうこの神奈川県の一割ぐらいで」
少女は他人を小ばかにしたようにニッと笑った。
「仕方ないわね。それで・・同じ質問。今は何処にいるの?」
「ヤマタノオロチは退治されたからね。きみも知っている通り。だから土に還ったのじゃないかな。多少の骨は残しているかも知れない。出雲の山中に。つまり島根県に。後は八つの支流を持つ河川の神格化という説もある」
「ロマンがないわね。おじさんには。あれだけの怪物がそう簡単に土や水に還元されるわけないでしょう。まだ健在よ。新たな剣を宿して悠々と飛び回っているわ」
ーそうか、そっちの方向だったのか。想像力のセンスが問われていたのかー
「なるほど、それはいい。思いつかなかった。大空を舞うヤマタノオロチ。映画顔負けだね」