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その二
ため息交じりに今度は当時目もくれなかった書棚群へ足を踏み込んでみた。
政治、経済そして歴史・・著名な作家の全集も並んでいた。夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介・・
おっ珍しい泉鏡花がある。図書館で見かけたのは初めてだった。
また一冊抜き出して側に置いてある背もたれのない椅子へ座った。
モスグリーン色の表紙扉を開くと相変わらず漢字が多い。しかし丁寧にルビが振ってあるので読みやすかった。
そんな硬い字面にさりげなく妖怪や魑魅魍魎の描写が織り込まれている。
私は再度独りで頷きながら時を過ごした。
ーさて、そろそろ公園の方へ行ってみようかー
少し名残惜しいが間もなく昼時だ。
私は泉鏡花全集第七巻を棚に戻して表へ出た。