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だいだらぼっち  作者: 蜻蛉丸
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ホラーショートショート

神奈川県の大沼公園は図書館と隣接している。私が十二才で東京都へ引っ越すまでは度々通ったものだった。その日は会社の休日だったので久しぶりに訪れてみることにした。


平日の午前十時ごろは電車も空いていた。私は懐かしい風景に目を奪われた。

ーそうそう、こんな感じだったー

あまりきれいとは言えない二級河川に沿って自転車道路が延びている。

ーよく仲間と走ったものだー

私は感傷に浸りながら駅のホームに降り立った。そこから公園まで徒歩で五分ほどである。私はワクワクしながらまず図書館へ行ってみた。


厳密にいえば居住していないので利用できないのだが、まさか身分証明書を提示するよう求められることはないだろう。と高をくくって澄ました顔で入館した。


以前と変わらぬ薄暗い感じが私を迎えてくれた。

早速お目当ての書籍コーナーへ回ってみる。

ーあるある。某社の江戸川乱歩シリーズ。アルセーヌ・ルパン。そしてシャーロック・ホームズー

私は思わずその中の一冊を抜き出してページを広げてみた。

ー江戸川乱歩の青銅の魔人ー

キラキラ光った電車のレールのまんまん中を、ひとりの男が歩いてくるのです。青い色のソフトをかぶった大男です。この寒いのに外套も着ていません。

ーしびれますねー

それからアルセーヌ・ルパンの813の謎、シャーロック・ホームズのバスカビル家の犬等々印象に残っているものをパラパラ捲ってみた。


しかし今では冴えない中年男である。あまり長い時間そこに立ってはいられなかった。それでも私は独りで頷きながら歩を進めてみる。

ー日本文学シリーズ。世界文学シリーズー

意外と刷新されずにそのまま残っていた。むろん書店ではとっくの昔に姿を消している。

ーよく破れずにいたものだー

と感心しながらまたパラパラ捲ってみた。


ーあれもこれも、もっと購入しておけばよかったー

と後悔の念がわき起こったが、後の祭りである。

今更古本で揃えても虚しいものがある。



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