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ヤサシイセカイ  作者: 神鳥葉月
第二章 理屈と想いと

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第九十話 対戦1

タイトルの話数が誤っていたので修正しました。

 葵の髪を乾かし終えたらしい姫恋が、芹緒の方をそわそわした様子で見ている。

 対戦したくてたまらないのだろう。そんな姫恋の様子に尻尾をブンブン振る子犬のイメージを重ねてしまい、軽く吹き出す。


「さ優香さん、対戦しよっ!!」


 芹緒のドライヤーが終わったとたん、やはり姫恋がたたっと足早に近寄って芹緒の手を引く。

 芹緒がダイニングテーブルの椅子に座ると、検討をしていた桜子と葵が身を乗り出して芹緒と姫恋の対戦を見に来る。

 芹緒の横に葵、姫恋の隣に桜子といった具合だ。


「じゃあよろしくね」「よろしくー!!」


 二人は互いに挨拶をしあうと、先行をもらった姫恋からカードをプレイし始める。

 このゲームはマナベースがないと何も出来ない。

 姫恋は早速土地を置くとそこからクリーチャーを呼び出し自分のターンを終える。

 芹緒はカードをライブラリから引き、土地を置いてターン終了を告げる。

 続く姫恋は前のターンに出したクリーチャーで芹緒に攻撃し、土地を置いて二つの土地からさらにクリーチャーを呼び出す。

 芹緒は前のターンと同じように土地を置いただけでターンを終了する。


「やはり序盤は姫恋様が優勢なのですね」


 姫恋のクリーチャーの軍勢を捌き切れなかった桜子が少し顔を曇らせる。

 姫恋は続くターンでもクリーチャーを並べてどんどん芹緒のライフを減らしていく。


「姫恋さん強いなぁ……」


 初心者ながらすでにその域は脱している姫恋のデッキ構築とプレイングに舌を巻きながらも、芹緒は土地を置く。ようやくマナが揃った。


「行くよ、全除去!」


 芹緒がプレイした呪文は『戦場のクリーチャーを全て破壊する』というもの。

 芹緒がたった一枚使っただけで姫恋のクリーチャー三体は破壊されて墓地に置かれてしまった。


「ああー!?」


 姫恋の悲痛な叫びがリビングに響き渡るが、芹緒のライフもかなり削られている。このまま姫恋のやりたい放題されていたら負けていただろう。


「でも!」次の姫恋のターン、そう言って土地を置くと手札からクリーチャー呪文をプレイする。「これはどうだあ!!」


「あ」


 桜子が思わず漏らした呻き声。

 姫恋が出したクリーチャーは、桜子を苦しめたサイズの大きいクリーチャーだ。

 しかも


「速攻!!」


 出したターンでも攻撃出来る『速攻』というキーワードを持つ優秀なクリーチャーだ。

 芹緒のライフがさらに減る。

 芹緒は姫恋の手札の枚数を数える。

 姫恋は毎ターン土地を置き、クリーチャーを呼び出している。毎ターンデッキから一枚引けるとはいえ、手札はどんどん減っている。

 しかも姫恋は先行だった。このゲームは先行が有利なため最初のターンドローはない。

 効率的にプレイしているとはいえ、マナがなければ戦えないし手札がなくても戦えない。

 そして芹緒は毎ターン土地を置くだけで先ほどの全除去以外カードを使っておらず、手札はほとんど減っていない。

 芹緒はターンをもらうとそのまま手札に抱えていた、単除去を姫恋のクリーチャーに打ち込む。


「うぐ」


 芹緒のライフは大きく減っているが、姫恋のクリーチャーも全滅している。しかも手札の消耗も激しい。

 次のターン姫恋は二体の小粒のクリーチャーを呼び出してターン終了を宣言する。


「ターン終了時」


 そこに芹緒がインスタント呪文でターン終了宣言に割り込む。


「インスタントを唱えてカードを三枚引くね」


「なるほど……これは」


 桜子が唸る。葵もうんうん頷いている。

 そして芹緒は土地を置き、単除去用であろうマナを残した上でサイズの大きいクリーチャーを呼び出す。


「むー」


 姫恋の呼び出しているクリーチャーとはサイズが違うので、姫恋が攻撃しても一方的に打ち取られてしまう。もう一体の攻撃は通るが、小粒のクリーチャーの攻撃ではまだ芹緒にトドメを刺すには至らない。

 しかも芹緒が呼び出したクリーチャーは攻撃しても防御にも回せる『警戒』というキーワード付きだ。


「むむー」


 姫恋は冷静に観察する。

 芹緒が残しているマナ。

 そして芹緒の潤沢な手札。

 芹緒が残しているマナ的に一回しかアクションは起こせないだろうが、その一回のアクションをどこに使ってもらうか。

 何もしないのは論外だ。次のターン芹緒のマナが回復してしまう。そうなったら手札がある分、芹緒のアクションが増えるのは確実だ。

 姫恋の手札は三枚。

 ブロックされなかったクリーチャーを強化するインスタント呪文を使う? そうするとおそらくそのクリーチャーが除去されてクリーチャーとインスタント呪文、カード二枚分損してしまう。

 先ほどの『速攻』持ちのクリーチャーはいるが土地から生み出せるマナがギリギリだ。

 最後の一枚は、対象のクリーチャーはこのターン防御が出来ないという効果を与えるカード。

 このカードは一マナで使うことが出来る。

 速攻持ちのクリーチャーとこのカードで戦う。姫恋はそう方針を決めた。

 芹緒のアクションを釣り出すのはこの防御出来なくなるカードだ。

 姫恋の場には小粒なクリーチャー二体しかいないが、このままあと二回攻撃が通れば芹緒のライフはゼロになる。せっかく大型クリーチャーがいるのに防衛に回せないのは苦しいはず。

 そして速攻持ちのクリーチャーと芹緒のクリーチャーは相打ちになるサイズだ。

 相打ちは勿体無いが芹緒のライフが危険水域に押し込めるのと、大型クリーチャーを除去出来るのは大きいはず。

 芹緒が防御出来なくなる呪文をスルーしたらサイズの上がるカードを使えばいい。芹緒の単除去を使わせるのは大きいはずだ。


 姫恋は方針を決めると防御出来なくなる呪文を唱える。

 対して芹緒は対応しなかった。これで芹緒の大型クリーチャーは無力化された。

 そして二体のクリーチャーで芹緒を攻撃。芹緒には防御出来るクリーチャーがいないのでスルーだ。防御クリーチャーを決めるタイミングで姫恋はインスタント呪文で片方のクリーチャーを強化する。

 そして想定通り、芹緒の単除去が飛んできて二枚損してしまうが芹緒の残りライフをさらに削る。

 姫恋の出来ることはした。あとは芹緒次第だ。


 そして迎えた芹緒のターン。

 芹緒は前のターンと同じことをした。結果『警戒』持ちのクリーチャーが二体並ぶ。


「……これはアタシの負け!」


 姫恋の残り手札は今引いたカードを入れても二枚。芹緒のあのクリーチャーの壁は越えられない。

 姫恋は潔く負けを認めたのだった。


「ありがとうございました!」




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「序盤を凌ぐには全除去が良いのですね」


 芹緒の作ったデッキをバラして桜子が納得した様子で頷く。


「二枚目の『警戒』持ちクリーチャーで心折れちゃったよ!!」


 姫恋が悔しそうに言う。


「でも姫恋さんの戦い方は全然アリだよ。相手の準備が整わないうちに攻め立てる攻撃は強いよ」


「けっこういい感じに回ったんだけどなぁ」


「芹緒のデッキは、丸い」葵が中身を分析してそう言う。「特化してない。器用貧乏」


「そうだね」葵の言葉を素直に認める。「自分の知らない戦法があるのは知ってるから、極力対処したいんだよね」


「私たちみたいに妨害一辺倒ではありませんわね。マナがあるだけで相手にプレッシャーを与えることができますのね」


「そうだね、あれもキツかった」姫恋がうんうんと頷く。「色足してカード引けるようにしようかな?」


「それもアリだよ。赤と青は相性いいからね」


 芹緒はそう言って自分の箱から姫恋の希望に合いそうなカードをピックアップして手渡す。


「二色だけどこのカード強いねえ」


「二色使うから土地が揃ってないと使えないけどね。だからほら、こういう土地があるよ」芹緒はそう言って赤と青のマナが生み出せる土地を見せる。「これはコモンカードだから出したターンは使えないけど」


「私それのレア持ってる!」


 風呂から上がった美琴がそう言って姫恋にカードを見せる。

 その土地は出したターンから使えるが、色マナを出すたびにダメージを受ける土地だ。


「デメリット軽い! 美琴、交換して!」


「はい姫恋様、桜子様、お風呂へどうぞ」


「あーん」


 美琴の元に駆け寄ろうとする姫恋だったが、つつじの声に身をくねらせる。


「姫恋の箱から私が欲しいカード見繕っておくから、ゆっくりお風呂入っておいで」


「わかったー!!」


 姫恋はそう言うとすぐさまトイレへと向かっていく。生理用品の交換だろう。

 芹緒は姫恋が生理中だと知っているからお風呂前にトイレに行く姫恋の行動の理由に気付けたが、それを知らなければ思いつきもしないだろう。

 こんなことを女性たちは毎月毎年何十年と繰り返すのだ。素直に敬服する。


「それじゃ美琴、勝負」


 ダイニングテーブルに座った美琴の対面に座ると、葵はそう言うのだった。

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