第八十七話 つくりあげるもの
夕食後、少女たちはさっそくたくさんのパックが入った箱を開けていく。芹緒も箱を開けてパックを剥く。そして中身を見つつカードを色別に並べていく。
それを見た美琴たちも同じようにカードを分類していく。
そして彼女たちの要望を聞いてそれに沿ったカードの束、デッキを一緒に作っていく。
美琴は強いクリーチャーで攻めるデッキ、葵と桜子は相手の妨害をするデッキ、姫恋は毎ターン使える魔力を増やしつつ火力やクリーチャーを使うデッキをそれぞれ選択した。
それぞれの個性が出ていて彼女たちの要望は聞いていて楽しい。
葵と桜子のデッキは近しいが、完全に相手の封殺を目指す桜子と、要所だけ相手の妨害をする葵と、似ているようで違いはある。
「そろそろお風呂入ってくださーい」
デッキも出来てさあ遊ぼうというところで、さつきの若干呆れが混じった声が聞こえてきた。
「さ、行こう」
「うん」
葵が立ち上がり、芹緒もそれに続く。誰かと一緒にお風呂に入るということも慣れてしまった。
身体が女の子となって小さくなり、浴槽に二人一緒に入れる、そして醜いデブ中年男性の体を見せる恥ずかしさがないことが背中を後押ししている。
カードゲームは男の子の趣味であることが多いが、教えてくれる人が近くにいれば女の子も遊んでくれるということがわかって芹緒は嬉しくなっていた。
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「やっぱり、優香のおっぱい、大きい」
ワンピースを脱いで下着姿になった芹緒のブラジャーに包まれたふくらみを見て、葵が上を脱いで小さなブラジャーに包まれた可愛らしいふくらみを両手で押さえる。
「僕のじゃないから。それに大きさじゃないから」
芹緒がそうフォローしたが、葵は別方向から刺してきた。
「うん、優香は、ちっちゃい女の子、大好き。ちっぱい?好き」
「ぐはっ」
サブカルに詳しくなさそうな少女の口から『ちっぱい』という言葉が出ることの衝撃と、芹緒がロリコンだと糾弾する言葉が芹緒の心に突き刺さる。
「ロリコンってわけじゃなくて」
芹緒がしどろもどろに言い訳を始めるが、葵はブラを外し下も脱いで一糸纏わぬ姿になり
「そうだね、三次元の少女は、対象外。二次元の少女ばかり」
基本的に芹緒は現実の少女に興味はない。興味があるのは二次元の美少女ばかりだ。
芹緒は臆病で遵法精神がある。
だから法に触れることはしたくないし、嫌悪するほうだ。
だけども少女の裸、見れるものなら見てみたい。
だから興味がないというより、興味を持たないようにしている、が正しい。
日本では思想の自由がある。他人に攻撃しなければどんな思想を持つことも自由だ。
だから『二次元の女の子が好き』という趣味は後ろ指を刺されこそすれ、犯罪ではない。
だがその後ろ指を面と向かって刺されるのがこんなに痛いとは。
今まで芹緒は独身で知り合いも少なければ親友と呼べる間柄の人間もほとんどいなかった。だから芹緒は匿名性の高いネットでそういった自分の趣味について大っぴらに語っていた。
現実の少女に『こういうの好きなんですね』と言われるのは、そういう気質がなければ辛いものがある。
「……一緒にお風呂入るの、やめる?」
「どうして? 優香が、私のような身体が、好きなの、嬉しいのに」
「……」
どうやら葵の『ちっぱい好き』発言はここにつながるようだ。
葵の言葉は芹緒を非難したのではなくただの確認だったようだ。
そう言われてついさらけ出されたままの葵のなだらかなふくらみとピンクのぽっちに視線が奪われてしまい、すぐに目を逸らす。
「優香、大丈夫。今の私たち、女の子同士。ちょっとしたスキンシップ。さわり放題、揉み放題。お代はのちのち」
「のちのちが一番怖いよ」
葵の戯言が出てようやく笑顔とともに一息ついた芹緒は自分も全裸になると浴室に入っていく。
「優香の身体を使って洗ってほしい」
「ダメ」
どこからそんな知識を、と思うが、おそらく自分のスマホから美琴経由で少女たちに伝わっているのだろう。そう芹緒は考える。いつか少女たちの親御さんたちに怒られそうな事案ではある。
実際のところは葵も美琴も桜子も、閨事の一環ということで知識を得ている。
芹緒はいつものようにボディソープを泡立て、手のひらで葵の身体を洗い始める。
真っ白ですべすべな背中は触り心地が良い。まだまだお子様体型ではあるが、腰は少しくびれ、お尻周りは座っているからかもしれないがなだらかにふくれ、女性への成長過程であることを意識させる。
「……」
芹緒は無言で首を振ってとにかく葵の身体を洗っていく。
お尻も胸も股間も洗っていく。
嫌がったところで根負けするのだ。無駄に意識するよりそれこそ女同士と割り切って洗えば問題ない、はずだ。
「ありがと。今度は私」
シャワーで泡を洗い流された葵がそう言って立ち上がり、代わりに芹緒が椅子に座る。
「洗うよ」
「こら」
葵が宣言した途端、すぐに芹緒がツッコミを入れる。
それも当然だ。
背中に当てられたのは葵の手のひらではなく葵の全身だったのだから。
両手で芹緒に抱きつき胸を押し当ててきた葵。
先ほどの会話で葵が何をするのか分かってしまった芹緒は、すぐに背中を丸めて椅子ごと葵の身体から逃れると、背後を振り向いて葵を諭す。
「普通に洗って欲しいな」
「ちっぱい堪能コースなのに」
「頼んでません」
「まあまあ」
「もう少し自分の身体とかその他諸々大事にしよ?」
一分ほどの押し合いを経て葵は折れてくれた。折れてくれないとこれからは一緒に入らないよ、と宣言したのが効いたようだ。
「減るものじゃない」
「理性とか減るし」「ならよし」「よしじゃない、せっかくのお風呂なのに精神的に疲れるよ」「これくらいまだまだ、序の口」「もう勘弁してほしい」「優香の気持ちは、そんなこと、言ってない」「言ってます」「身体は正直」「女の子の身体だとパッと見わかんないでしょ」「ぐへへ」「葵さん落ち着いて」
葵は芹緒と掛け合いをしながら普通に身体を洗い上げていく。
「ありがとう」
泡をシャワーで洗い流してもらった芹緒は、葵にお礼を言う。
「むぅ。最近、優香をからかっても慌てること、少ない」
「鍛えられてる……と言うか散々からかい倒されているからね」
葵が後ろ、芹緒が前に座って葵が芹緒を抱きしめる形で湯船に入る。
葵と芹緒(美琴の身体)の身長はほぼ同じで、この家にいる八人の中では一番低い。葵は毎回誰かに抱えられて入っているので芹緒を抱きしめる形で入りたいとお願いしたのだ。
芹緒も誰かと入ると大抵抱きしめられる側なので、葵の気持ちも分かる。
元男の芹緒からすれば女の子の身体になっている期間限定のプレイのようなものだが、葵からすれば同級生の子にちっちゃな子のように扱われるのは色々思うところがあるようだ。
葵だって飄々としているようで色々鬱憤は溜まっているのだ。
「今夜も、ぐちょぐちょの、ねちょねちょが、いい?」
「っ?! やだ「しー」」
葵が芹緒の耳元でささやいた内容に芹緒はすぐさま反応して口から悲鳴が上がりかけるが、それを葵が口を塞いで止める。風呂場から芹緒の悲鳴が聞こえたら今日と明日の葵のターンは飛んでしまいかねない。
「どうして? 気持ちよかったでしょ、女の子」
手を離して葵は小声で、だがストレートに聞いてくる。聡い葵なら芹緒が思ってることは聞かなくても分かるはずなので、これは芹緒の口からわざわざ言わせたいという、一種のプレイだ。
それでも芹緒は湯船に浸かりながら言う。
「確かに気持ち良かったよ。良かったけどね、もっと普通に親しくなりたいかな」
赤い顔色は温かいお風呂で血行が良くなっただけではないだろう。
まだ入ったばかりだ。
「分かった」葵は無表情に頷く。「今夜は、優香ともっと、仲良くなる」
葵はそう言って優しく芹緒に抱きつく。
「だからそういうのは」
「私のこと、話すよ」
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