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ヤサシイセカイ  作者: 神鳥葉月
第二章 理屈と想いと

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第八十二話 みんなとスキンシップ

あけましておめでとうございます。

2026年もよろしくお願いいたします。

 だがもちろん美琴はそうではない。

 今の芹緒姿の美琴が桜子や葵、姫恋に能動的に何かしたら大問題だ。入れ替わりが公式に知らされていないなら尚更。

 確かに美琴は友人である桜子たちの下着姿にドキドキはしている。何の障害もなければこの姿のハーレムに彼女たちを入れたいくらいの劣情はある。それは男だから当然だと思う。

 でも心から興奮する対象はたった一人、芹緒だけ。

 恥じらう姿やぷりぷり怒る姿、元が中年男性とは思えないほど優しく愛らしく、そして全てを達観した人。

 美琴もかつて死のうとしていたから分かる。人生を諦めたが故の達観だ。

 しかし美琴は芹緒に諭され、入れ替わったことで文字通り人生が変わった。世界の彩が変わった。

 だけども芹緒はあれだけ望んでいたはずの美少女になったというのに、相変わらず諦観している。


 美琴が入れ替わって得た体は、何のしがらみもない自由な男性の姿。

 芹緒を入れ替わって得た身体は、しがらみだらけの不自由な少女の姿。


 申し訳ないな、とは思う。だからこそ美琴は父や九家に働きかけてこの姿の自身が当主となり、美琴姿の芹緒を妻に迎えたいと思っている。

 そうすれば芹緒は九条家次期当主という枷から解き放たれ、『妻』というデメリットもあるがメリットもある立ち位置に収まることが出来る。

 芹緒が妻になりたいか、美琴との子どもを作りたいか、母となりたいか、など多くの障害があるにはあるが、そんな未来のことよりも美琴には、元の男性の姿に戻った芹緒が自分たちの前から姿を消し、そのまま命すら消してしまいそうな、心を締め付けるような漠然と、だが確かな不安がある。

 元に戻った芹緒は上流社会とは縁のない、ただの一般人だ。今のままの美琴たちでは芹緒を縛るものは何もない。


 そんなの許せない。


 だから縛りたい。


 美琴は芹緒を確かに愛しているが、その愛の土台にはこんないくつもの打算がある。

 他の誰かに知られたら軽蔑されるだろう。葵は美琴と同じ考えなので問題ないだろうが。


 そんな様々な乙女心を内に秘めて、美琴は腕の中の芹緒を慈しむ。

 肩越しに見ても自分のおっぱいは大きい。ぼいんぼいんと芹緒の身体を揺らして上から眺める光景は、つい先日まで日常風景だったというのにとても魅惑的に見える。そしてとても柔らかいのも知っている。

 女の姿だった頃はどんどん大きくなる胸がイヤだった。身体の自由を縛り、鬱陶しい男性たちの下劣な視線を子どもの自分にすら向けてくるモノ。


 でも今は男性たちの気持ちがよく分かる。こんな小柄な美少女が持っていたらそりゃあ二度見だってしたくなる、目で追いたくなる。

 芹緒は入れ替わったあともお手入れを欠かさず、なめらかそうな肌と柔らかそうな胸をしっかりとブラジャーに収めている。

 男性がブラジャーをつけるなんて屈辱だろう。身につける下着の数も増え、面倒なことこの上ない。

 それでもたった二週間でちゃんと自分でブラジャーをつけられるようになっている。愛おしい。


 長い金髪に顔を埋める。

 シャンプーの匂いと甘い匂いが美琴の本能を刺激する。この甘い匂いが思春期の少女が放つ匂いなのだろう。自分が放っていた香りにもかかわらず自覚なんてなかった。入れ替わってマンガやAVで知識を仕入れ、改めてその匂いを確認するのはなんだか滑稽だ。


 股間がさらに大きくなるのが分かる。芹緒のお尻に当たっているので芹緒も気付いているだろう。だが芹緒は何も言わず、抱かれるがままになっている。ただ耳たぶが赤くなっているので恥ずかしいのを我慢して美琴のスキンシップを受け入れてくれているのだ。その健気さに思わず抱きしめる腕に力を入れてしまいそうになる。

 ……ここに他人がいなければこのまま芹緒を押し倒して行くところまで行ったかもしれない。それぐらい今の芹緒は可憐で従順で、壊したい。


 男の性欲は女とは違う。

 美琴は女の頃、性欲をあまり感じたことはないが、ただ切なかった記憶がある。

 入れ替わってよく分かった。男の性欲はよく分かる。誰でもいい。ただ欲望を放ちたい。それだけだ。本当に動物と変わりはない。

 自慰対象が親友の桜子たちでもいい、とすら思ってしまうのが本当に終わっていると感じる。

 つつじたちに教わった閨事のあれこれで、男性と女性の性欲が違うことは知識として知ってはいたがここまでとは思わなかった。


 今腕の中にある芹緒を壊したいくらい激しく愛したい気持ちがあるのも本当だ。

 だけど男性の性欲を向けられ当てられ、それがどういうものか芹緒は知っているはずなのに、周囲の環境と、美琴を信頼して腕の中に居続けてくれる。

 この信頼を壊したくない。

 芹緒の胸や大事なところをさわらないよう注意しながら、美琴は芹緒の感触を楽しむ。




「へえ……」


 葵がそんな二人を見つめて感嘆の声を出すが、これはその場にいる全員の気持ちだっただろう。

 芹緒と美琴は周囲の人間を忘れて没頭している。

 ……芹緒と美琴のそれぞれが周囲を忘れている理由が違うのは少し美琴に同情するが。

 桜子や葵、姫恋だって芹緒が好きだ。だから抱き合いたい。

 だけども先ほど芹緒が言った『美琴がスキンシップが出来ないのは辛いよね?』という言葉が三人を縛る。


 思えば美琴はいつも蚊帳の外だった。

 芹緒とのお風呂には一緒に入れないし、当然ながらプールの着替えだって別々だ。

 それもこれも『男性だから』というどうしようもない理由だ。

 言い換えれば、元の姿の芹緒も『男性だから』という、本人にはどうしようもない理由でスキンシップが満足に行えなかったのだろう。

 思えば芹緒は桜子たちのスキンシップに必死に抵抗している。

 あれはスキンシップへの渇望を通り越して、女の子とのスキンシップを『自分がしてはいけない』とすら思っている節が感じられる。

 だとしたらもっと構ってあげたくなる。そんなことないよ、と抱きしめたくなる。

 ……芹緒からすれば外見で騙しているようで申し訳ないという気持ちが、スキンシップに対する抵抗という形に現れているのだが、桜子たちからすればそんなところはとうに通り過ぎている。

 芹緒の正体は初日に知っているしそれでも芹緒が愛おしいのだから、彼女たちが求めるスキンシップは芹緒の考えでは止められない。


「んー……」


 そう言って動いたのは姫恋だった。

 姫恋はバックハグされて身を縮こまらせている芹緒の前まで行くと、そっとその身体を芹緒姿の美琴ごと抱きしめる。


「姫恋さん……?」「姫恋?」


 戸惑う二人。

 特に美琴は姫恋が身体を芹緒に密着させたため、姫恋顔が目の前に来ているので驚きも大きい。


「美琴ごめんねえ。今の美琴を直接抱きしめると問題になりそうだから、優香さんサンドイッチ!」


 姫恋の手が自分に回っていないことはわかる芹緒。おそらく美琴の、芹緒の中年男性の体に手を回しているのだろうと推察する。

 姫恋も無邪気とはいえ、今ここで中身が芹緒ではない芹緒と抱き合うことがどういう問題を引き起こしかねないか理解している。

 それでも芹緒の身体を間に挟むことで手だけを美琴の体に伸ばす。


「おっきいねえ、太いねえ。手触りも女の子とは違う。これが男性、『優香』さんなんだね」


 そして手を動かして美琴の肩や二の腕を撫で回す。

 美琴は芹緒の後ろから抱きしめているので、その両手は芹緒のお腹に回されている。その両手が芹緒と姫恋のお腹に挟まれた。


「……」


 芹緒はそっと縮こまらせていた両手から力を抜き、姫恋の身体に手を回し、そっと抱きしめる。

 芹緒から誰かを抱きしめることはあまりない。だが姫恋の打算のない優しさに心動かされてしまった。

 背後に感じる圧倒的な肉圧とは違い、細い体躯を感じる。

 姫恋を抱きしめることで、かえって美琴の胸が押しつぶされ存在感を主張してくる。

 芹緒の肩に頭を乗せた姫恋が声を出すたびに耳がくすぐられるよう。芹緒は耳が弱い。


「姫恋様に先を越されましたわ……」


「打算がないから、早い」


 桜子と葵は顔を見合わせて肩をすくめる。そんな二人を見てさくらは思わず笑みが溢れる。

 想像していたような危険はなく、とても優しい時間が過ぎていく。

 桜子と葵は姫恋と交代して芹緒に抱きつき、芹緒もそれを受け止め、美琴は芹緒の身体を触る以外は触られるだけという、見方によっては辛い時間を過ごす。

 案の定、美琴はスキンシップ時間が終わるや否やトイレへダッシュし、芹緒は諦観のため息を、姫恋以外の女性陣はくすくす、と笑うのだった。


「トイレ行くの笑っちゃダメだよ?」


 男性がこの状況でトイレに行く理由が分かっていない姫恋が可愛くて、芹緒は姫恋の頭を撫でた。

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ハーレムでもいいとか体の本能に突き動かされすぎなんよww
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