驚きの測定結果
連載開始です。
『受付番号23番の方、測定結果が出ましたので、第一診察室までお越しください』
受付番号23番。僕だ。
小三、小六と受け続け、今回で三回目になるこの魔力測定。
魔力の測定義務は三回目の中学卒業時の今回の検査まで。
両親は二年前に交通事故で亡くなったので、家は今俺と妹の静香の二人暮らしだ。
いくら両親の残した遺産があるとはいえ、その金額も無駄遣い出来るほどではなく、義務ではない魔力測定に払うお金は無い。
つまり、今年が最後の測定だ。
だから、もし今回の測定で引っかからなければ冒険者になるという僕の夢は潰える。
第一診察室の前に付いた。
やっべ、めっちゃ緊張する。
これは小五の時漏らした事を隠しつつ一日を過ごした時以来の緊張感だ。
深呼吸しよ。
「スー、ハー。……よし!」
パァン!と両頬を叩き、気合を入れたら診察室の扉を開ける。
「失礼します!」
「おお~元気がいいねぇ。じゃあそこ座って」
僕は勧められた椅子に座る。
「キミ、名前は?」
「天羽空人です」
「天羽君ね、えー、あもうあもう……っとあった。これだね」
担当医の男は机に積み重なった書類の山の中から僕の測定結果が書かれているらしい書類を取り出す。
「キミは確か冒険者になりたいんだっけ?まぁ、こんなことで結果は変わらないけど、こういうのは気持ちの問題だからね。どうする?僕が読む?それとも自分で読む?書類は規則だから持って帰れないけど開けて結果を読む位なら問題ないから」
担当医の男が気を使ったような様子で僕に訪ねてくる。
どうやら僕に気を使ってくれたようだ。
担当医の男が気を遣うのも無理はない。
何せ、魔力保持者の九十パーセントが六歳から九歳の内に魔力が覚醒する。
九歳を過ぎてからは段々と覚醒率が下がり、僕と同じ十五歳で覚醒する奴なんて全体の1%にも満たない。
「……自分で読みます」
僕は少しだけ考えてからそう答えた。
特に理由は無い。しいて言うなら気分だ。
「そうかい」
彼はそう言って僕に書類を手渡す。
「どうも」
心臓がバクバクと大きく動いている。
なんか緊張のせいか変な汗まで出てくる。
よし!開けるぞ!
封筒を豪快に破き、中の書類を取り出して中身を読む。
『再測定※後日ご自宅に詳細を配送いたします☆』
ん?
もう一度読み直す。
しかし何度読み直しても書かれている文言は変わらない。
何☆って!スパムメールかよ!?
何度も書類を読み直す僕を見て、僕が落ち込んでいると勘違いしたのか担当医の音かが話しかけてくる。
「まぁ仕方がないさ。おじさんも昔は冒険者に憧れてたけど、そもそも魔力が覚醒する確率は半々なんだから」
「えーいや、別に落ち込んでるわけじゃ無くて、これどういうことだと思います?」
そう言って、僕は測定結果の紙を見せる。
「えー、何々?『再測定※後日ご自宅に詳細を配送いたします☆』、なにこれ、スパムメールか何か?」
「やっぱそう思います?」
どうやら担当医さんも同じ意見のようだ。
「うん、ちょっとこれは……。まぁでもちゃんと魔法省の印鑑付いてるし、問題ないんじゃないかな?それにほら、再測定って事はなんかしら違和感があったって事じゃないの?」
!
……確かに。
可能性ゼロだったら再測定何て発想にならない筈だ。
やっばい、可能性が有るかと思ったら顔にやけてきた。
「分かりました、そう思う事にします」
「それがいい、魔力あるといいね。あとキミ、顔すごい事になってるからここ出る前に直していきなよ?」
「あっはい、すいません。では、失礼しました」
僕はにやけた顔を両手で素早くこねて直した後、診察室を出た。
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空人が診察室から出た後、担当医の男は改めて空人の魔力測定結果を見直していた。
「いやー、面白い少年だったなー、天羽空人君。それにしても再検査って初めて見たよー、ん?これは……」
担当医の男は空人の測定結果の一部を見てある違和感を持つ。
「なんだ、これは……魔力反発率0%!?」
これは機密事項であるが、実は魔力と呼ばれる力は、全てのモノ、人、植物、空気が存在する為に、必要な力であり、全てのモノに宿っている。
そして魔力測定とは受診者に受診者の魔力以外の魔力を流し、その反発を見て余分な魔力を持っているかどうかを判定するという手法だ。
だからありえない筈なのだ。
全く反発が無いなどということは。
「あの再測定の原因はこれかなー、いやー、気になる。気になるけどもー」
『受付番号26番の方ー第一診察室までお越しください』
「仕事の時間だねー」
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