班決めの前
班決めをするように言われた俺たちであったが、近くの人と相談するばかりでなかなか進展する様子を見せなかった。誰もが誰かが動くのを待っている。普段こういう場面でまとめ役をしていたマスターは瞑目して動こうとしない。
そんな様子を眺めながら、今置かれている状況を改めて考えて、実感が全くわかない自分に驚きを覚えていた。
そもそも魔王ってなんぞ?戦う?戦える?死ぬのか?生き残れるのか?スキルはあるけど、武器なんて扱えないが?
そんな考えが浮かんでは消えていく、常識では起こりえないような、まるで物語のような状況に心の所在を失ってしまったような感覚になる。とにかく、わからないことが多すぎて脳が理解を拒否してしまっている。考えれば考えるほど混乱していくことを自覚して、考えるのをやめて今見える範囲でわかることを確認しよう。そう思い、周りを見渡してみることにしたとき、いつの間にか近くに来ていた新井くんが声をかけてきた。
「かずきー、暇だー。」
「暢気だな。今の状況わかってんのか?」
「んー、全然わかんない。教えて。」
「とりあえず、班決めをしないといけないんだけど。」
「へー。じゃあ一緒の班になろうよ。」
「まあ、いいけどさ。さすがに、適当過ぎないか?お前話聞いてなかったのか?」
「だって何言ってるかわかんなかったし。」
「んー?それは、状況的に理解できなかったということか?」
「いや。日本語じゃなかったし、逆にみんなはよく適応してるなぁと。」
「は?」
いやまて、確かにそうだ。どうして俺たちは異世界の人たちと何の不自由もなくコミュニケーションができていた?そして、なぜこいつはそれができない?
わからないことが増えて、混乱し始めたとき、黙っていたマスターが手を二回叩いて、注意を向けさせた。
「みんな、班決めをしようと思う。そこで2人組もしくは3人組を作ってから、作った組を足し合わせるような形にしたいと考えてる。これなら、4人から6人という枠を外れることはないし、余りが生まれることもない。どうだろうか。別の意見や反論はあるだろうか。」
何もないことを空白と言うことがある。
空白と表現した時点で何かあることになっているのではないか?
ボブは訝しんだ。