ステータスの話
部屋を出ると上り階段が見えた。モーリスさんに続いてみんなで階段を上っていく。先頭集団はマスターのグループ、最後尾は運動部男子を中心としたグループ、間に挟まれて文化部と帰宅部、女子いった感じでモーリスさんについていった。俺はどちらかというと先頭集団よりの位置についていた。
階段を上りきると、庭に出た。ドーム状の部屋は地下にあったようだ。中庭なのだろう、建物に囲われた空間だった。見たこともない植物があたり一面に、と言いたいところだったが、あいにく植物には詳しくないので地球の植物との違いはわからなかった。生物部の八代さんは後ろ髪をひかれているようだったが。
それから廊下を渡り、ある建物にたどり着いた。屋根の上に十字架があったので教会なのだろうか。異世界にも十字架があるというのは面白いと思ったが、日本の神社は十字架なんてないのだから、西洋的な文化を持った世界あるいは国なのかもしれない。
建物の中は荘厳な雰囲気だった。ステンドグラスから射し込む光が神秘的な様相を演出している。壁にはこの世界の神を模った像が並べられていた。
「それでは、ステータスの確認を行います。その前にステータスが表すものを説明しましょう。まずはレベルです。現在、皆さまは全員レベル1です。経験を積むことでレベルを上げることができますが、教会で儀式を行わないと上げることができません。レベルが上がると自身の能力が向上します。次にスキルです。スキルは4種類あります。ストレングス、マジック、センス、テクニックです。ストレングスは威力が上がります。マジックは魔法を使えるようになります。センスは五感が強化されます。テクニックは器用さや精密動作が得意になります。スキルは先天的なのものです。ですので、新たにスキルを習得することは、それこそ神の奇跡に頼るしかありませんが、異世界を渡ってきた皆さまは少なくとも一つスキルを得ているはずです。」
モーリスさんの説明を聞いて一部のクラスメイトは露骨に落胆した様子を見せた。まあ、異世界チートはなさそうではある。
「それでは、一人ずつこのの球体に触れてください。」
そう言ってモーリスさんは、祭壇の方を指さした。そこにはバスケットボールくらいの大きさの半透明な球体が安置されていた。
「球体に触れると表面にレベルが表示されます。スキルを持つものは球体の内側に光る模様が現れます。ストレングスは赤、マジックは青、センスは緑、テクニックは黄色の模様です。スキルレベルに応じて形が変化します。1なら紐状、2なら平面、3なら立体です。スキルレベルは3が最大です。もしかしたら4以上のスキルレベルも存在するのかもしれませんが、これでは量ることはできませんね。」
それから、一人ずつステータスを確認していった。他の人のステータスを見るのはダメだそうだ。モーリスさんは一緒に見て確認していたが。
俺のステータスは表面に1と表れたのでレベル1、内側は赤い紐と黄色い紐だったから、ストレングス1とテクニック1があるようだった。他の人のステータスがわからないから何とも言えないが、めちゃくちゃ強いというわけではなさそうだった。期待が無かったわけではないので残念だった。
朗々と響く声が、昏き者を退散させる。
魔術師たちは跪き、王の帰還を待ち侘びる。
抉り取れらた左目は、秘密の部屋で嗤っていた。