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なぜだろうか、刀を手にすると強くなれた気になる…
全てを捨てロード国を目指す僕の胸は期待で満ちていた。
腰には、ジィちゃんからもらった刀と、バァちゃんからこっそりもらった金貨の入った袋をぶら下げ浮かれていた…
道を阻むかのように、ガタイのイイ男が、僕を睨んでいた…見るからにガラも悪く、お金もなさそうな男だ、きっと通行料とか、言って金をせびるのだろう…
「待な坊や‼︎ガキがずいぶんと可愛らしい刀ぶら下げてやがるな‼とりあえず俺様に︎通行料払いやがれ‼︎」
やはり、父さんと兄さんは、間違っている…こんなクズをのうのうと国に置くのは間違っているよ
「金の入った袋はそこに落ちているだろ‼︎ゴロツキ‼︎」
「そして、この刀は桃太郎‼︎貴様のようなゴミが侮辱していい刀では決して無い‼︎」
シルバーが、ゴロツキの横を過ぎると同時に、男の金袋が地面に落ち、地面を赤く染めた。
ゴロツキの女々しい悲鳴が、僕には心地よく思えてしまった…
どんな産まれで、どんな状況で、ゴロツキになったかは、理解してやれないが…12歳の僕を、無条件に見下し、愛する刀を侮辱した事は、死んで詫びてもらう…
次から次へと血に飢え、刺激を欲しがり、平和ボケした奴らが、僕を訪れて来る、ゴロツキの仲間がうじゃうじゃと溢れて来る…
僕は、そんなゴロツキよりも、城を出てからずっと背後を離れない視線が気になっていた…
「出て来いよ‼︎ずっと監視してるつもりなのか?」
木の影から、刀を腰にぶら下げた男が顔を出す
「我が名は、レッド・ウルフ…貴方様の家来にして下さい…」
「私は…1000回貴方のお爺様、ブラック様に、決闘を挑み、1000回負けました…国民は誤解してます…ブラック様は鬼じゃ無いです…この刀はブラック様に頂いた命より大切な刀です…」
僕は、嬉しかった…ジィちゃんの事を英雄と知る者に会えて…
「家来は、いらない‼︎レッド‼︎お前は、今日から仲間だ‼︎よろしくな‼︎」
「俺の知らないジィちゃんの話聞かせてくれよ‼︎」
レッドとは、野宿しながら一晩中語り合った。
レッドは、親に船で捨てられ、スカル島に流れ着き、動物の様に成長し、本能は研ぎ澄まされ、強気者を求め、気がつけばジィちゃんに挑んでいたと、決闘を重ねるごとに言葉、礼儀、愛を学び
1000回の決闘のあと故郷に、戻れとジィちゃんに言われ、戻ってみたものの、人に慣れず、森に潜んでいたと、そして僕から漂うジィちゃんの匂いを辿り、今にいたると…
そして僕は、ジィちゃんと1000回も決闘をしてきたレッドを羨ましく思った。
だが今は、その思いよりも…レッドと決闘したいと血が騒いでいる。
刀の代わりに、木の棒を手に僕と、レッドは、向かい合って立っていた。
レッドは獣の様に低く身構え、耳を澄ませ、鼻を研ぎ澄まし、僕から眼を離さない、僕は心臓を鷲掴みされ、その心臓に爪をたてられている気分だった…
あぁ…何故だろ…僕はこの感覚が愛しく思えてしまう…